伊東 豊雄

■伊東 豊雄

 伊東 豊雄(いとう とよお、1941年6月1日 – )は日本の建築家。一級建築士。伊東豊雄建築設計事務所代表。東京大学・東北大学・多摩美術大学・神戸芸術工科大学客員教授を歴任。高松宮殿下記念世界文化賞、RIBAゴールドメダル、UIAゴールドメダル、日本建築学会賞作品賞2度、グッドデザイン大賞、2013年度プリツカー賞など受賞歴多数。

■もののもつ力

 「建築の生成」とは、建築が生まれる瞬間と言い換えるとお分かりいただける。通常、私たちが雑誌や展覧会で紹介するのは竣工後、つまり完成した状態のものですから、設計の初期段階で考えていたことを誌面や展覧会場で見ていただくことはありません。ところが本当に面白いのは、建築が生まれるまでのアイデアがどのようにして出てきたのかというところだと思う。今日は、最新のプロジェクトの中からふたつに絞って、建築が生まれる瞬間について述べたい。

 ひとつは東京都八王子市に計画中の「多摩美術大学附属図書館」です。2007年3月末に竣工する予定の図書館です。もうひとつは「台中メトロポリタン・オペラハウス」です。台中という台湾の真ん中にある都市に計画中のオペラハウスです。。

■多摩美術大学附属図書館

 京王線橋本駅から車で10分ほどのところに位置する多摩美術大学八王子キャンパス内の図書館。キャンパスの周辺は、まだ再開発途中の自然も感じられる環境。既存の図書館には11万冊の蔵書があります。それらの書籍はすべて新しい図書館に移されて、既存の図書館はアーティストや建築家の作品や資料が保存されるアーカイブになる。一方、新しい図書館には30万冊の書籍が収蔵され、そのうち10万冊が開架の書架に、10万冊が閉架の書架に、残りの6万冊が地下の機械式書架に収蔵される計画。新しい図書館はキャンパスのシンボルとして、既存図書館のアーカイブと最近完成したコンピュータ教育のためのメディアセンターと共にメディアテークを形成する構想する。

 平面計画ですが、一階の半分くらいはアーケードギャラリーと呼ばれるフリースペース。コンクリートの土間になっていて、レクチヤーができたり、ギャラリーにも使えるスペースとした。このアーケードギャラリーと図書館はガラスパーティションで隔てられていますが、図書館のほうもオフィススペース以外は、勾配のついた床になっている。

 二階が図書館のメインフロアで、ここは水平の床である。一階から階段を上ると開架の閲覧室が大きく広がっている。ガラスパーティションによって開架閲覧室と閉架書架が分けられていて閲覧エリアから閉架書架の中を見ることができる。ワークショップ・セミナーをやるようなスペースもこの中に確保。二階の家具のレイアウトはアーチのグリッドによって空間が分節され、そのブロックをガイドに書架を配置して、空いたところに閲覧のスペースがあるような配置した。家具によってブロック間の連続性を強めた。ふたつのアーチの間に、鉄板書架を入れゆるやかに分節し、かつ透けた感じである。アーチの間を煉瓦で埋めている 

台中メトロポリタン・オペラハウス

 台湾台中市のオペラハウスのコンペに、もう一度同じシステムを使ってチャレンジ。敷地は新しい市庁舎と州庁舎を建設中の土地に隣接した大きな公園の中。この周辺は高層マンションが次々に建てられ、ここに2000席の大ホールと800席の中ホール、200席の小ホールに加えてリハーサル室やレストランといった機能を備えたオペラハウスを計画する。

 一次審査で提案したのは、二階にメインホールがあって、一階がピロティになっている。ピロティとホール階と屋上という三層構成になってしまう。これはどうも建築的にクラシックなのではないかと感じ、二次審査段階で、もう一層増やした計画に変更する。それに合わせて内部の構成を大きく組み替えた。そうすることでネットワーク状の空間のコンセプトを回復することがでた。一階はフラットな床ですが、上の層になると床なのか壁なのか天井なのか分からないような空間である。

 市庁舎と州庁舎の奥の公園の中央部にオペラハウスが建つという敷地の状況から建物に正面性を持たせたい一方で、古いシンボル性は排除した。キュービックな形態にしてボリュームを切り落とし、エレベーションは四面共それらの切断面そのものである。インタビューの時に「この建物は壷の中に居るというイメージです。」

 私たちの曲面はシステムをつくつているということである。そのシステムに乗せて曲面を連ねていくことで洞窟のようなプリミティブな空間が生じてくる。

■設計プラン段階

■基礎工事段階

     

■内装工事段階

 

■竣工・完成

■アートイベント・音楽会開催