東郷青児

■東郷青児

 独特の女性像で知られる東郷作品は、優れた技術に支えられ、極めて洗練された感覚と美意識をもって描かれています。東郷は、誰にでも理解でき、親しめる芸術を標榜しました。独自性と大衆的人気においては、我国でも稀な画家といえましょう。優美でロマンチックな画風は、女性礼讃芸術と評されました。当館では、1914年17歳の時の「自画像」から、当時最も前衛的であった1915年初個展の出品作「コントラバスを弾く」、キュビスムの影響を受けた滞欧作「村の祭」(1923年)、シュールレアリスムの影響からの「超現実派の散歩」(1929年)を初め、東郷様式の円熟を示す「望郷」(1959年)や、晩年のサハラ砂漠への憧憬を秘めた「タッシリ」(1974年)、最後の二科展出品作品「リオ・デ・ジャネイロ」(1977年)に至るまでの油彩70点を含む、素描・版画・彫刻・タピスリーなど約 200点の東郷作品を収蔵しています。展覧会ごとの常設展示コーナーでは、東郷作品数点を展示しています。

▶︎経 歴

4月28日鹿児島生れ。青山学院中学部卒業。山田耕筰の東京フィルハーモニー赤坂研究所の一室で制作。日比谷美術館で初個展、有島生馬を知り、以後師事。1916 –第3回二科展初出品、二科賞。1921 –フランス留学。トリノに未来派のマリネッティを訪ね、未来派運動に参加するが、絵画不在の理論に失望。1922 –リヨン美術学校に学ぶ。1928 –帰国。第15回二科展に滞欧作23点特陳。第1回昭和洋画奨励賞。1931 –二科会会員。1938 –二科会に「九室会」が結成され、藤田嗣治と顧問になる。1945 –終戦、二科会再建に挺身。1957 –日本芸術院賞、’60年同会員。1961 –二科会会長。1969 –フランス政府からオフィシェ・ドルドル・デ・ザール・エ・レットル(文芸勲章)。1974 アルジェリアのタッシリを探訪、トッグ族のテント生活を体験。1976 –勲二等旭日重光章。東郷青児美術館開設。1978 –4月25日熊本で客死、享年80歳。没後文化功労者、正四位追贈。