デ・クーニング

■デ・クーニング

 デ・クーニングはオランダのロッテルダムに生まれた。10代前半から商業美術とディスプレイの見習いとして働き,またオランダやベルギーの美術学校で学んだ。1926年に密航者としてアメリカに渡り,家具塗装職人,商業美術,ディスプレイ等の仕事をしていた。1927年にニューヨークに移る。1930年頃にアーシル・ゴーキーと出会う。デ・クーニングはゴーキーを非常に高く評価しており,自分の作品に影響を与えた一人としてゴーキーを挙げている。

 1934年に具象的な肖像画と並行して抽象静物画のシリーズを開始する。1935年から36年までWPA(公共事業促進局)のプロジェクトで壁画を制作する。1936年にニューヨーク近代美術館の「アメリカ美術の新しい地平」展で初めて美術館での展覧会に出品した。また,この頃室内の男性像のシリーズを始める。

 1937年にフィリップ・ガストン,バーネットニューマンに出会う。1938年に第1期の女性像のシリーズを始める。1942年にマクミラン画廊での「アメリカとフランスの絵画」展に参加し,同じく出品していたジャクソン・ポロックとの交際が始まる。1946年頃に家庭用エナメルを使った白と黒の抽象のシリーズを始める。

 1948年にニューヨーク近代美術館がデ・クーニングの作品を,美術館としては初めて購入した1954年の第27回ヴェネツィアビエンナーレではアメリカを代表する二人の画家のうちの一人として選ばれる。

 1955年に抽象風景画のシリーズを始める。1962年アメリカ国籍を取得する

 1965年にマサチューセッツ州のスミス・カレッジ美術館でアメリカの美術館としては初めてデ・クーニングの回顧展が行われる。1968年ニューヨーク近代美術館により組織されたヨーロッパを巡回する大規模な個展が,アムステルダム市立美術館で開催され,42年ぶりにオランダへ帰る。

 1977年にもヨーロッパ巡回の個展が行われる。1983年にアムステルダム市立美術館で回顧展が開かれ,またホイットニー美術館でも大規模な回顧展が開催された。

 デ・クーニングの作品は,抽象表現主義の中でアクション・ペインテルグを代表するものである。抽象表現主義の他の作家の多くが,非対象の作品を制作したのに対してデ・クーニングは繰り返し〈女〉のシリーズに取り組むなど,具体的な対象物を指摘できるような抽象作品を1960年代においても制作しており,1969年以降はブロンズによる彫刻も手掛けている

 今回の出品作の中にも含まれているが,デ・クーテンダが好んだ画面のサイズとして,縦と横の比率が8対7になっているものがある。また,1940年代後半の白と黒の抽象シリーズの作品の中には,画面の中に文字が読み取れるものがあり,今回出品されている《ZOT(ゾット)≫においても,画面の左下ZOTの文字が見られる。

(Y・O)