レオナルド・ダビンチ

スクリーンショット(2016-02-19 15.37.35)

 日本とイタリアの国交樹立150周年を記念し、イタリアが生んだ天才レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の展覧会を開催。

 今回の展覧会では、自然観察を通じて真理に近づこうとしたレオナルドの挑戦を、日本初公開の絵画《糸巻きの聖母》(バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト)と直筆ノート『鳥の飛翔に関する手稿』(トリノ王立図書館)を中心に紹介。

 《糸巻きの聖母》は、イギリスの貴族バクルー公爵家が所蔵し、レオナルドの故郷イタリア、作品のあるイギリス以外の場所では初めて出品。2009年にようやく、スコットランド・ナショナル・ギャラリーで一般公開されることになった至宝。

 また、レオナルドの手稿の中でも人気の高い『鳥の飛翔に関する手稿』も、日本初公開となります。本展の図録で、日本側の監修者である斎藤泰弘氏(京都大学名誉教授)による待望の新訳も発表。

 2点とも、本展のテーマである「見えない世界を探る(beyond the visible)」ために、レオナルドが行った人間観察・自然研究が集約された円熟期の傑作。このほか、花や子どもを観察した日本初公開の真筆素描7点(うち1点は弟子との共作)、レオナルド派による日本初公開の珠玉の絵画、神話化・伝説化されたレオナルドの生涯を表した版画など約70点と、素描から忠実に再現した関連模型を通じ、天才の挑戦を体系的に展観。

1470年代から活動をはじめたレオナルド・ダ・ヴィンチは、新しい芸術様式の創始者として活動当時から認識されており、巨匠と呼ぶにふさわしい功績を数多く獲得した[170]。ヴェロッキオを師としてフィレンツェで修行を積んだ後、軍事技師、画家、彫刻家、建築家としてミラノ公の宮廷に仕えたレオナルドは、その多才ぶりを遺憾なく発揮し、多数の作品を後世に伝え、現代に至るまでの芸術家に大きなインパクトを残している。

絵画では『最後の晩餐』や『モナ・リザ』などを制作しており、特に『モナ・リザ』に使用された新しい技法であるスフマート(ぼかし)は、画面に新たな統一感をもたらし、人物に精気と神秘的雰囲気を与える技法として西洋絵画の様相を一変させるほどの影響を与えた。また、自然科学の分野では、鋭い観察力と的確な描画力で解剖学や水力学などの研究に先駆的な業績を残したことも特筆すべき事項である

― 展覧会構成 ―序章

■レオナルドの肖像 ―天才像と神話化

カルロ・ラズィーニオ《レオナルドの肖像》 ジャン・クロード・マニゴー《動物を愛護するレオナルド・ダ・ヴィンチ、鳥を 買い取り空に放つ》

左図・カルロ・ラズィーニオ《レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像》1789年、彩色版画、27.4×18.4cm、ヴィンチ、レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館

右図・ジャン・クロード・マニゴー 《動物を愛護するレオナルド・ダ・ヴィンチ、鳥を買い取り空に放つ》19世紀、リトグラフ、紙、41.5×59.5cm、ヴィンチ、レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館

レオナルド・ダ・ヴィンチ《子どもの脚の研究》 カルロ・ラズィノ《子どもの研究》

<左図>レオナルド・ダ・ヴィンチ《子どもの脚の研究》1502‒1503年、赤い地塗りをした紙、赤チョーク、13.5×10cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室
<右図>レオナルド・ダ・ヴィンチ《子どもの研究》1502‒1503年、赤い地塗りをした紙、赤チョーク、鉛白によるハイライト、28.5×19.8cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

カルロ・ラズィノ《花の研究》

レオナルド・ダ・ヴィンチ《花の研究》1504年頃、紙、銀の尖筆、ペンと褐色インク、18.3×20.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

■第2章『鳥の飛翔に関する手稿』―人間の限界を超えた飛翔、自然と神への挑戦

 レオナルドはミラノを離れフィレンツェに滞在していた1505年に、鳥の飛翔・解剖学・建築・水力学の研究のほか、藁や鳥の購入費用メモや、自画像と推測される肖像デッサンなどをこの手稿に記す。レオナルド円熟期の思想が集結した手稿。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『鳥の飛翔に関する手稿』

レオナルド・ダ・ヴィンチ『鳥の飛翔に関する手稿』第10紙葉裏と第11紙葉表 1505年、紙、ペンと褐色インク、赤チョーク、21.3×15.4cm、トリノ王立図書館

 観察し素描することによって自然や人間、宇宙の真理に近づこうとしたレオナルド円熟期の思想が集結した手稿。21.3×15.4cmの大きさ、20紙葉(表紙と裏表紙を除くと38頁)からなる直筆ノートで、レオナルドがミラノを離れフィレンツェに滞在していた1505年手記。この手稿には、鳥の飛翔・解剖学・建築・水力学の研究のほか、藁や鶏の購入費用メモや、自画像と推測される肖像デッサンなども残されている。

■第3章《糸巻きの聖母》―見えない世界を探る

 レオナルドは、目に見えない人物の心の動きを表すものとして「手の動き」を入念に研究。この章では、そのような研究の一端であるレオナルドの素描群展示。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《糸巻きの聖母》

レオナルド・ダ・ヴィンチ《糸巻きの聖母》 1501年頃、油彩・板、48.3×36.8cm、バクルー・リビング・ヘリテージ・トラスト http://www.bowhillhouse.co.uk/bowhill-house/

レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知の天使のための左手と腕の研究》 レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子《手の研究》

左図・レオナルド・ダ・ヴィンチ《受胎告知の天使のための左手と腕の研究》1505年頃、紙、金属尖筆、赤チョーク、白チョーク、22.3×16.2cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

右図・レオナルド・ダ・ヴィンチと弟子《手の研究》1495年頃、赤い地塗りをした紙、赤チョーク、白チョーク、20.8×16.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

レオナルド・ダ・ヴィンチ《ユダの手の研究》 レオナルド・ダ・ヴィンチ 《羊飼いの礼拝のための研究》

左図・レオナルド・ダ・ヴィンチ《ユダの手の研究》1495年頃、赤い地塗りをした紙、赤チョーク、鉛白によるハイライト、20.8×16.1cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

右図・レオナルド・ダ・ヴィンチ《羊飼いの礼拝のための研究》 1478-1480年、紙、金属尖筆、ペンと褐色インク、7.4×9.8cm、ヴェネツィア、アカデミア美術館素描版画室

ジャン・ジャコモ・カプロッティ、通称サライ《12歳のキリスト(若き救世主)》 レオナルド派《洗礼者聖ヨハネ》

左図・ジャン・ジャコモ・カプロッティ、通称サライ《12歳のキリスト(若き救世主)》1505年頃(?)、油彩・古いポプラの板の上に貼られた薄いカンヴァス、54.5×42.5cm、個人蔵(ヴィンチ、レオナルド・ダ・ヴィンチ理想博物館寄託)

右図・レオナルド派《洗礼者聖ヨハネ》16世紀、油彩・板、28.4×22cm、ヴォルテッラ貯蓄銀行財団、ローズィ・コレクション

■第4章レオナルドの教え―ルネサンス期の工房とレオナルド・アカデミー

 レオナルドがミラノ滞在期に、共同制作に携わったり、レオナルドの工房に入門したり、作品を実見して大きな影響を受け、その後ミラノの画壇を牽引したレオナルド派(レオナルデスキ)たち。ルイーニ、ジャンピエトリーノなどの絵画約10点を日本で初めて紹介します。

ショヴァン二・ピエトロ・リッツォーリ 通称 ジャンピエトリーノ《悔悛するマグダラのマリア》 作者不詳(ヨース・ファン・クレーフェ周辺の画家)《幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ》

左図・ジョヴァン二・ピエトロ・リッツォーリ通称ジャンピエトリーノ《悔悛するマグダラのマリア》1520-1525年頃、油彩・板、69.2×54cm、ベルガモ、アッカデミア・カッラーラ

右図・作者不詳(ヨース・ファン・クレーフェ周辺の画家)《幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ》1530-1535年、油彩・板、56×56cm、ナポリ、カポディモンテ美術館

ベルナルディーノ・スカーピまたはデ・スカーピス(通称ベルナルディーノ・ルイーニ)《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》

ベルナルディーノ・スカーピまたはデ・スカーピス(通称ベルナルディーノ・ルイーニ)《聖母子と洗礼者聖ヨハネ》1520-1525年頃、油彩・板、22.7×18.4cm、ベルガモ、アッカデミア・カッラーラ