医療ビッグデータ

■クローズアップ現代+「新型コロナ ビッグデータで感染拡大を防げ」

新型コロナ対策の切り札となるか“ビッグデータ”。感染の傾向をつかみ次の手を打つ
▽SNSで個人に向けきめ細かな医療情報を発信
▽AIドクターが遠隔で治療をサポート

 新型コロナウィルスが猛威をふるう中、最先端の技術を駆使し、遠隔操作で適切な行動を促し、データを分析することで感染を防ごうというプロジェクトが日本で始まっている。LINEが都道府県と連携し、8000万人いるユーザーに体調アンケートをプッシュ通知。その回答データを解析し、「自宅待機してください」など、ユーザー1人1人に適切な行動をアドバイス。ビッグデータで感染拡大を防ごうという最前線からの報告。

ニュースサマリー:前半からの続き。人工知能を利用したAIドクターを提供する「Babylon Health」がシリーズCで5億5000万ドルの資金調達を完了した。本件に関連してAIドクターの潮流について考察をお届けする。

 アジア・アメリカ市場での成功は世界へ裾野を広げることを容易にするのです。次に、イギリスで培ったAIドクターによる初期診察の技術を強みにどのような戦略でアジア・アメリカへ事業拡大するのかを考えていきます。

▶︎パートナーシップ

 同社が挑戦する両市場に共通するのは、医療費の自己負担額がゼロになることが少ないことです。更に予約、訪問、診察、会計を考慮すると、患者は受診を負担と感じています。実際、医療費の自己負担額が無料のイギリスで、同社のアプリを利用した40%の患者が自己治療を選択しています。

 一方、医療サービス業者側は「出来高払い」であるため診察報酬が高い内容を優先して行いたいと考えるのが本音ではないでしょうか。しかし緊急性以外の理由で優先順位を決めるのは難しいだろうと思います。

 AIドクターによる初期診察は条件が整えば、患者の負担軽減と医療サービス業者の希望を両立できます。それはリアルクリニックとの連動です。ここでは対面での受診、処方箋の発行を行うクリニックをリアルクリニックと呼んでいます。

 同社のサービスがバーチャルクリニックとすると、初期診察だけがバーチャルになるだけではリアルクリニックの利便性に勝てません。初期診察が二重になり、かえって負担になるケースもあるでしょう。

 前述の通り同社はイギリスでNHSを巻き込むことで成長してきました。同様に違和感のない医療スキームを構築するためにリアルクリニックとの連携がトラクションを生むと考え、連携システムに大きな投資を実行することが予想されます。

 連携システムの充実は医療サービス業者にとって患者単価を上げることに加えて、来院しない患者からの収入を生み出す可能性があるためインセンティブが小さくありません。リアルクリニックには連携する理由があり、同社者には準備をする資金と実績があるのです。

 バビロンの創業者であるAli Parsaによると、同社が目指すのは「地球上の全ての人が手軽に医療サービスを受けられるようにする」ことだという。Parsaは、バビロンのようなAIドクターを使うことで医療費を抑え、NHS(英国の国民保険サービス)や保険会社のコストを削減することが可能だと考えている。また、バビロンのチャットボットを使えば不必要な通院を減らすこともできる。

 Parsaによると医療コストの3分の2は人件費であり、人間の医師とAIを組み合わせたバビロンの医療アドバイスを導入すれば、診断コストを下げられる。バビロンは、消費者や医療サービス提供者に対して、在宅勤務の医師250人とビデオ通話できるサービスを販売している。このほかにも、ユーザーに医療アドバイスを提供するソフトウェアも提供している。


▶︎事例1

 医療機器に利用できる無線周波数帯については、何度となくこのコラムで取り上げてきた。2017年1月4日、総務省から「M2Mサービス等専用の電気通信番号」として「020」の電話番号帯が割り振られることが発表された。ものとものをつなぐM2M(エム・ツー・エム)、つまり機器同士が電話番号をもつ時代に移行し、電波利用から電話回線利用ができるようになる。

▶︎従来と何が違うのか

 元来、医療用テレメータは無線周波数帯として「400MHz帯」の利用のみであった。しかも、決められた通信方式や微弱無線というような制約があり、さらに本体(医療機器)から単一方向に電波を発するのみで、相互の通信ができないなどの問題を引きずっていた。

 しかし、近年になって、その使用周波数帯が緩和される通達が配信され始めている(コラム1参照)。かつて、医療機器専用の周波数帯が割り当てられたのは、混信防止や電波の適正利用の目的で、約30年前に作られたものだ。ところがISM(Industry Science Medical)帯と呼ばれる、産業科学医療バンドが世界のグローバル化の中で発展し、Wi-FiやBluetoothに代表される2.4GHz帯なども国内外の医療機器で利用され始めた。

 医療機器でもIoT機器として相互の通信や、データ伝搬が用いられているのが現状だ(コラム2参照)。混信の対策としてスマートホッピングなど、空いている周波数帯を自身で探す機能についても以前のコラムで紹介した(コラム3参照)

 M2Mに用いられるのは、電話回線利用が想定される電波(700M~900MHz)。従来の医療機器に用いられている電波(400MHz帯)との違いは、その周波数帯と電波強度である。周波数が高いほどエネルギーが大きく、多くの情報を伝達することができる反面、遮蔽物の影響を受けやすくなる。PHSと携帯電話でも電波強度や通信範囲は異なり、使用方法により電波の届く範囲も異なってくる。「プラチナバンド」として話題となったのは800MHz帯であり、少ない基地局で広いエリアをカバーできるのが特徴であった。端末が基地局のアンテナにつながることで医療機器単体であっても、遠く離れたM2M機器などと自由な通信が可能となる。