マドリード

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 本展覧会のマドリードの街並みを描いた作品群には、アントニオ・ロペスの人生の20代半ばから70歳までのそれぞれの時期を代表する作品が含まれており、マドリードがロペスの画業のなかでいかに重要なテーマであるのかを実感させてくれる。遠くに見渡す都市の風景も、静物や室内を描いた作品と同じように、極めて緻密な写実が可能であることがはっきりと示されているからである。

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 マドリードは様々な視点からとらえられている。まず《死んだ犬≫(上図)では、実験的ともいえる分厚いマテイエールで画面中央に犬が浮き上がるのに対し、画面上方の右奥に遠く街並みがのぞいている。続いて、初期の《ティオ・ピオの丘からのマドリード≫(上図)近年の大作《バリエーカスの消防署の塔から見たマドリード≫(下図左)は、マドリードの南東に位置する郊外の丘から都心の全体を眺めるという視点で描かれた作品である。

71EG4p5drML DETALLE DERECHO - MADRID SUR - 1965/85 - OLEO/TABLA - 153x244 - Conj nº 127924. Author: LOPEZ ANTONIO 1936/. Location: PRIVATE COLLECTION, SPAIN.

それとは逆に、都心から郊外を遠くに臨む作品では、空を大きく描いた《マドリードの南部≫(上右図)《カンポ・デル・モーロ≫(下図)の対照的な2点が挙げられる。≪マドリードの南部≫はアトーチャ駅の向かいにある学校の一室から、《カンポ・デル・モーロ≫は王宮に付属する建物の一室から、それぞれ見た風景である。

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 ロペスの最も知られた作品のひとつである《グラン・ビア≫(下図)は、マドリード随一の大通りの始まりをとらえた作品であり、ごくわずかな時間しか続かない戸外の光へのこだわりが明確に示されている。

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 また、都心の高層ビルの高みからの眺望を描いた≪トーレス・ブランカスからのマドリード≫(下図左)と《カピタン・アヤからのマドリード≫(下図右)は、毎年同じ季節に1日の限定された時間にだけ制作するという画家独特のメソッドから生まれた典型的な作品である。

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 これに加えて、都市そのものの景観ではないが、友人の抽象の画家ルシオ・ムニョスの家の無人のテラスを長期にわたって描き続けた≪ルシオのテラス≫(下図左)や、友人の建築家フエルナンド・イゲーラスが設計した個性的な建物《美術修復センター≫(下図右)など、ロペスの交友関係が投影された作品がこのセクションには含まれている。

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 このセクションの《バリエーカスの消防署の塔から見たマドリード≫は、ロペスが人生の大半を過ごしたマドリードの全貌を描き込んだ、幅4メートルを超える大作で、まちがいなく画家晩年の代表作といえよう。