家族・Family

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 アントニオ・ロペスが最も愛情を傾けて描いた作品が、家族をモティーフとしたものである。この主題の最も早いものには、祖父母を描いた作品2点(下図左右)があり、またロペスよりも16歳年少の妹の姿を描いた作品《遊ぶ少女≫(1959−60年、個人蔵)などがある。

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 妻であるマリア・モレーノ(愛称マリ)は、ロペスが14歳から通った王立サン・フエルナンド美術アカデミーの下級生であるが、若くして入学したロペスより3歳年上であった。ふたりは1961年に結婚し、ふたりの娘マリアとカルメンを授かる。自らの家庭を築いて以降、妻そして娘たちは、日常を描くロペスにとって大切なモティーフとなった。夫婦そろってアウィストのため、しばしばお互いをモデルにしながら制作に励んでいる。

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 《マリの胸像≫(上図)はロペスが三次元の独立した彫刻に初めて取り組んだ作品である。穏やかで控えめにうつむく妻マリアへのロペスの視線は、夫としての愛情に満ち溢れている。この主題を描いた作品の多くが現在も家族の所蔵になっていることからも分かるように、これらは極めてプライべ−トなものである。素描による代表的な肖像画《マリアの肖像≫(下図)では、自宅庭に立つ9歳の長女マリアが描かれた。やわらかな光を浴びた少女が静穏な雰囲気を湛えて佇む様子から、娘の存在そのものに対する画家の静かな感動が伝わってくる。

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 最近は孫をモティづに頭像の連作を手がけている。アトチャ駅に設置されたモニュメンタルな彫刻《昼≫と《夜≫はその代表例である。また現在自宅のアトリエには数多くの孫を象った頭像、及び全身像が雑然と置かれている。娘マリアとカルメンは結婚後もマドリード市内に住まいを持っているため、子どもたちを連れて頻繁に行き来している。近年のロペスにとって、孫たちは創造の源でもあるのだ。これらの作品は家族をモティーフとしながらも、ロペスにとっては造形的な興味を掻き立てるものとして制作されることが多いため、本展覧会においてそれらは「人体」のカテゴリーに分類した。D-a_y_Noche_Antonio_L-pez_Madrid_01