表示について

■表示について

▶「遺伝子組換えでない」という表示を良く見かけますが、表示の実情は?

 日本の遺伝子組換えGM(genetically modified)食品の表示法は非常に複雑です。遺伝子組換え植物を原料に使っていても、表示しなくてよい食品がたくさんあります。「不使用」の表示はしなくても良いのですが、多くの食品に表示されています。

■表示の仕組み

 日本では、遺伝子組換え植物そのものあるいはそれを原料とした食品には、そのことを示す表示が法律で義務付けられています。1990年代に遺伝子組換え植物の輸入が始まった当初は、表示の義務はありませんでしたが、1990年代後半から表示を求める声が高まり、表示が法律で定められました表示は2001年から始まり、現在では、2009年に発足した消費者庁が管轄しています。アレルギー表示は、例えば卵アレルギーの人が卵の入った食品を口にすると健康被害が出る恐れがあるのでその防止が目的ですが、遺伝子組換え食品の場合、安全性が確認されたものだけが輸入流通を認められているので、健康被害の防止が目的ではありません消費者の選ぶ権利の担保が目的とされていますが、表示をしなければならない品目は限られています。例えば、植物油や異性化糖などは表示の対象ではありません。加工段階でDNAやタンパク質が除去されるので、遺伝子組換え原料を使っているかどうかが判別できないという理由で、表示の対象となりませんでした。また、主原料の(重量比で)上位3品目に入っていなければ表示する必要はありませんし、大豆、トウモロコシは5%未満混入していても、意図的でなければ「使用していない」と書いても法律上は問題となりません。

■表示の実際  私たちの身近な食品で表示義務のあるものとして、大豆を原料とするものには、豆腐、油揚げ、納豆、味噌などが挙げられます。しかし、これらの製品には「遺伝子組換えでない」という表示はあっても、「遺伝子組換えである」という表示は見られません消費者が好まないという理由で、遺伝子組換えでない(非組換え)大豆が原料に使われるからです。「遺伝子姐換えでない」という表示は義務ではありませんが、ほとんどの商品にはこの表示があります。法律上は、表示の無い豆腐は、遺伝子組換え大豆を使ってないはず(使っていれば表示しなければなりません)ですが、表示しないと組換え大豆を使っていると誤解されることを恐れて、「遺伝子組換えでない」と表示されるようです。豆腐を植物油で揚げた油揚げは、遺伝子組換えナタネ由来の油を使っていても、豆腐原料に遺伝子組換え大豆を使っていなければ「遺伝子組換えでない」と表示することができます。

 結局、日本は大量の遺伝子組換え植物を輸入、消費していますが、表示対象となる食品が限られているので、多くの消費者はそのことに気づきません。店頭での「遺伝子組換え原料は使っていません」という表示により、多くの人が遺伝子組換え食品に悪い印象をもつという調査結果もあります。小学生も「遺伝子組換えでない」という表示から、遺伝子組換えに悪いイメージをもつと言います。

▶ハワイのウイルス抵抗性パパイヤ 

 ハワイのパパイヤはパイナップルに次ぐ重要な農産物です。ハワイでは、遺伝子組換え技術を使って開発されたウイルス抵抗性パパイヤが実用化されたことで、ウイルスによる壊滅的な被害を免れることができました。1998年からハワイで商業栽培されてきた遺伝子組換えパパイヤ(品種:レインボー)の日本での流通、消費が2011年12月より認められました日本では、このパパイヤに「遺伝子組換え」というシールを1つ1つ貼ることが求められます。

▶不使用表示と分別生産流通管理

 日本の遺伝子組換え食品の表示には、「使用」、「不使用」、「不分別」の3種類があります。米国などの生産国でも遺伝子組換え植物は規制を受けますが、一旦使用が認められると、多くの場合、遺伝子組換え品種とそうでない品種は区別されません。そこで、日本では、このような組換えと非組換えが混ざった原料は、不分別と表示することになっています。不分別の場合、組換え品種が入っている可能性が高いため、使用している場合と同様に表示義務があります。不使用(あるいは使用)の表示をするためには、農作物の生産現場(農場)から食品加工の現場(加工工場)まで、組換え作物あるいは非組換え作物を、それぞれが混ざらないように分けて管理することが求められます。この管理方法は、分別生産流通管理あるいはIPハンドリングと呼ばれます。非組換えの原料にはIPハンドリングのコストも上乗せされます。植物油やマーガリンに表示義務はありませんが、一部の生協などではあえて、不分別、不使用の表示をしています。値段が安い不分別の植物油は不使用のものよりも、よく売れるそうです。