規制について

 ■規制について

法律で認められた遺伝子組換え植物だけが利用されています

 遺伝子組換え植物を栽培したり、輸入して食品として利用するには認可が必要です規制の仕組みは国によって違っています。ここでは複雑な日本の規制のしくみについて、簡単に紹介しましょう。

■規制の概要

 大学や研究所の実験室で遺伝子組換え植物を作ったり、栽培したりする際も法律(通称カルタヘナ法)に従って、行う必要があります。遺伝子組換え微生物や動物についても同様です。実験室や閉鎖型の温室内で植物を栽培する場合には、大学や研究所が認可できますが、商業化を目的に屋外で栽培する際には環境大臣と農林水産大臣の認可が必要です。専門家の意見をきいて遺伝子組換え植物が環境によくない影響を与えないかどうかが判断されます。例えば、バラやカーネーションのように食品として利用しない場合には、環境への影響についての規制(つまりカルタヘナ法による規制)のみを受けます。

 遺伝子組換え植物を食品として利用するには、食品衛生法に基づいた厚生労働大臣の認可が必要です。食品として利用した場合、健康によくない影響を与えないかどうかが国際基準に基づいて判断されます。例えば、遺伝子組換え大豆そのものの安全性を考えると大豆アレルギーを考慮しないといけませんが、これは遺伝子組換えとは無関係です。したがって、遺伝子組換え大豆であれば、遺伝子組換えでない大豆と比べて安全性に問題が無いかどうかが判断されます。こうした判断は、食品としての利用を求める団体(通常は遺伝子組換え植物を開発した企業等)提出したデータに基づいて、内閣府の食品安全委員会が行います。

 つまり、遺伝子組換え植物を日本国内で栽培し、食品として利用するためには、異なる法律に基づいて異なる省庁の規制を受けます。現在のところ、日本が輸入している遺伝子組換え植物は日本の農地で商業栽培することは想定されていません。しかし、運搬中に種子がこぼれて遺伝子組換え植物が自生した場合のことなども考えて、多くの植物が国内で栽培した場合に環境へ影響を与えないことがカルタヘナ法の下で確認されています。

日本で使用が認められている遺伝子組換え植物(2015年3月現在)

■規制のあり方

 遺伝子組換え植物が、それ以外の方法で品種改良された植物と比べて安全でないという科学的根拠はありません。しかし、アシロマ会議での議論をきっかけに、多くの国で遺伝子組換え生物は規制されてきました。規制は社会に根付いて、多くの人が規制を必要と考えています。一方で、規制されているという理由で、遺伝子組換え植物が安全でないと感じる人もいるようです。

 規制が非常に厳しいので(つまり、膨大なデータの提出を求められるため)、認可を受けるのには莫大な費用がかかります。結果的に、資金力の豊かな企業や研究所でなければ遺伝子組換え植物の実用化ができないという問題点も指摘されています。厳しい規制を求める声は少なくありませんが、規制にかかるコストは最終的には消費者が負担することになります。

 食品の安全性評価では、成分に変化が無いことが当初は求められましたが、栄養価を変化させることを目的とした遺伝子組換え植物が登場し、新しい評価方法が求められるようになりました。最近では、遺伝子組換え技術を使ったことがわからない(痕跡が残らない)技術も開発されています。技術の進歩や新しい知見に応じて、規制のあり方も考えていく必要があります。