遺伝子組換え食品

■遺伝子組換え食品

小泉 望

▶はじめに

 作物の品種改良に携わる研究者と農業従事者(つまり農家)が今の時代を本当の意味で支えています。この人たちが急激な人口増加に見合う食糧生産を可能にしてきたのです。この過程で作物は遺伝的に改変されてきました。また、今では私たちの食品は人類の歴史上かつてないほど安全になっています。

しかし、多くの人は、自分たちが食べている植物がどのように栽培されているか、それらがどのように加工されているかについてほとんど知りません。みんなが関心を払うのは、食品が健康に良いか、栄養があるか、美味しいかということだけです。作物バイオテクノロジーに批判的な人たちは、遺伝子組換え作物が実用化されたことによって、環境や食の安全性が脅かされていると声高に叫びます。反対派の人達は「フランケン食品」、「遺伝子汚染」というおどろおどろしい言葉を議論に持ち込みました。ヨーロッパで盛んなこの種の議論が、アメリカでもなされることがあります。本当のところは、この種の議論は、科学的ではなく、経済的、政治的勢力争いの要素が強いのです。

 中立的な学界において、植物の研究に携わる科学者として、私たちは、食の安全性と食糧供給を非常に重要な問題と考えます。「遺伝子組換え食品」に関する議論を、莫大な資金を持つ巨大バイオテクノロジー企業と、有機食品業界や過激な「消費者」団体の後押しを受けた反対派に任せておけません。私たちは自分たちの責任を真剣に考えて、私たちができることの1つとして、このパンフレット作りました。

 科学者である私たちは常に証拠を必要とし、よりどころとします。遺伝子組換え作物の危険性として、「とんでもない雑草」、「とんでもない細菌」、食品への予知せざる毒素やアレルゲンの出現、作物収量の著しい低下、大規模な環境破壊、などが取りざたされてきました。しかし、もっともらしいこの種のお話の証拠は見つかっていません。私たちは、農業が今までよりも環境への付加が少なく持続可能なものになりうる、と信じています。そのために遺伝子組換え作物が役に立つと考えています。また、遺伝子組換え作物が食品の価格を下げ、栄養価を高めるのに役立つと信じています。

■このパンフレットを読んで

 遺伝子組換え食品に関する議論の問題点をよく考えて頂ければ幸いです。科学者や専門的な学会は遺伝子組換え食品を人類が受け入れることを肯定しています。しかし最終的に決めるのは消費者である皆さんです。良いものであれば遺伝子組換えであろうとなかろうと買うでしょう。そうでなければ買う必要はありません。

サンディエゴ分子農業センター長 マーティン・クリスピールズ

このパンフレットは、カリフオルニア州サンディエゴの中立的な研究所に所属する科学者の連合であるサンディエゴ分子農業センター(SDCMA)におV)て制作されました。SDCMAは、公的機関、個人、業界からシンポジウムなどの活動のためにd、額の(1,000〜5,000ドル)寄付を受けま範SDCMAで基礎研究に携わる科学者は遺伝子組換え作物の作出に直接関わりませんが、彼らの発見が品種改良のために企業に利用ざれることもありま−た