折り紙の可能性

■折り紙の可能性・科学の力 

 医療現場では、再生医療の応用として活用される。マイクロサイズのプレートと細胞を使った「細胞折り紙」。プレートに細胞を貼り付けると立体になる。再生医療に活用できると期待されている。
また、NASAが開発を進める宇宙望遠鏡。巨大なパネルを宇宙で展開するときに、折り紙の技術が採用された。直径30mのこの花形のパネルが、折りたたんで小さなロケットに収まる。折り紙の考え方で作られたロボット。一枚の板が自動的に組み上がって立体になり、歩くこともできる。

▶折り紙の歴史

 世界的に origami という単語が使われるようになっていますが、ヨーロッパでも紙を折る文化は古くからありました。そのため「折り紙は日本を発祥の地として世界に広まった」という考えは正確で無いようです。

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 誰もが一度は折ったことがあると思われる「鶴」は江戸時代初期の作品であると考えられています。この鶴のさまざまなバリエーションをまとめた本「秘伝千羽鶴折形」が、今から200年以上も前の1797年に刊行されました。この本には、複数の鶴が連なった作品を中心に49種類もの完成図と切込みの入れ方が載っています。

▶折り紙

 日本の「折り紙」が今、「ORIGAMI」として大進化している。宇宙から医療まで、世界中の先端科学の分野で採用されているのだ。理由の1つは、「折るだけで、二次元から三次元の立体を作り出せる」こと。この特徴を使い、ロボットや人工血管を作る新技術が誕生している。もう1つは、「コンパクトに収納でき展開も自由自在」なこと。究極の輸送効率が求められる宇宙開発の現場で活かされている

■宇宙から医療まで 2016

▶コンピュータグラフィックスに関する研究

 コンピュータが登場して以来、思い通りの映像を作り出す技術の実現は多くの人の夢でした。数々の研究の積み重ねによって、今では実写と区別できないほどリアルな映像が、映画、ゲーム、広告、そして医療などの幅広い分野で活用されています。これらの映像は、1秒間に数十フレームの画像から構成され、各画像は数百万の画素から構成されます。つまり、一つの映像を作り出すために膨大な、そして高度な計算が必要となります。

 コンピュータグラフィックスを支える技術は主に、映像に表示される物体の形を構築する技術(形状モデリング)と、各画素の色を計算によって決定する技術(レンダリング)、対象物に時間軸の変化を加える技術(アニメーション)から成ります。

▶折紙設計に関する研究

 日本の伝承的な遊びとして「折紙」は多くの人に親しまれています。あまりに身近すぎて、うっかり見過ごされがちですが、折紙は幾何学的な観点から、とても興味深い研究対象です。1枚の紙を折るだけで作ることができる形とは、どのようなものだろうか。どのようにしたら、折紙の形を設計できるだろうか。このような問題に、数学とコンピューターの力を使って研究に取り組むと、新しい発見がたくさんあります。たとえば、従来の試行錯誤による発見的なアプローチでは難しかった、曲線での折りを持つ折紙もデザインできるようになりました。そして、新しい「折り」のデザインは、服飾やパッケージへ応用でき、また「折りたたみ」の技術は多くの産業分野で活用できます。

▶デジタルファブリケーションに関する研究

 3Dプリンタやレーザーカッターなど、コンピュータによるデジタル制御でモノづくりを実現するための機器が普及してきました。このような便利な道具が安価になり、家庭でも使えるようになったとき、いったいどのようなことが起こるでしょうか。家庭でのモノづくりを支援するためには、自分の欲しいものを自分で設計できることが重要です。ソフトウェアによる設計支援によって、楽しい便利なものが簡単に作れます。