脱活乾乾漆像

■脱活乾乾漆像

丸山士郎

 十大弟子・八部衆像は脱活乾漆造という、主に漆と麻布を用いる技法によって造られる。まず手足など身体の形状に即した心木を組み、そこに塑土を盛り付けて像の概形を造る。塑土の上に麻布を貼りそれを漆で塗り固めるという作業を、五回くらい繰り返して像の形を造る。厚みは六ミリメートル程度である。

 乾燥後、背中などを切り開いてなかの塑土を取り除く。このとき心木も取り除きあらためて木組みを入れるのか、そのまま残すのかはよくわかっていない。というのは五部浄像の頭部(上図左)右腕(上図左右)の心木や像内の麻布、東京華術大学所蔵の十大弟子像の心木(下図左)を見ると、塑土の痕跡が残っていないのである。そのため塑土と心木を取り除いたのち、像内にさらに麻布を貼り、別の木組みを入れた可能性が考えられる。しかしその場合、腕、脚などに及ぶ、像の広い範囲を切り開く必要があるので、塑土や心木の表面を細かい砂で仕上げたか、紙や布などで覆った上で麻布を貼り重ね、心木は完成後も残した可能性もある。

 衣文の盛り上げには木片を用いて厚みをつけ、表面全体を漆と木の粉を混ぜた木尿漆(こくそうるし)というペースト状の物で塑形する。指は鉄を心として木尿漆で塑形している。

 像は乾いた漆と麻布でできており、像内は木組みがあるが空洞である。「乾漆」は乾いた漆、「括」は中心部を意味し、それを「脱」する、すなわち除くので脱括乾漆造と名づけられた。十大弟子・八部衆像の重量は大変軽く、台座を除くと一四キログラム前後である。