つんつん

 ざらざらの内圧が高まってくると、つんつんとしてきます。

 「GCプロソミュージアム・リサーチセンタ」(2010年)、「スターバックスコーヒー太宰府天満宮表参遣店」(2011年)、「サニーヒルズジャパン」(2013年)などのファサードは、つんつんとしています。木という物質が、沸騰して、いまにも爆発しそうになると、木の小ロ(断面)が、つんつんと壁の外側へと、とび出してくるのです。

 「木の建築」というのはせの中にたくさんありますが、木がテクスチャーの一種へと墜ちてしまって、すなわち「木」という壁紙みたいになってしまって、木という生き物カ、ら発する内圧が感じられるような建築はなくなってしまいました。

 木というのは生き物です。その生き物から発せられる圧カがちゃんと感じられるような建築が、日本にはたくさんありました。軒を支える組み物と呼ばれるディテールは、つんつんの代表です。

 つんつん部分のエッジは、しばしば白く塗装されています。このエッジ部分カ、ら水が浸入するのを防ぐために、この部分に貝殻の粉からつくられた白い胡粉(こ;、ん)を塗るという披法が日本には伝わっています。この白い′J、ロてつんつん感が、何倍にも高められています。木という生き物の持っているカをどう伝えるかという課題に対して、日本の伝統建築が出した解答でした。

GCプロソミュージアム・リサーチセンター

 飛騨高山に伝わる木製玩具(千鳥)のシステムは、木の棒(線吋エレメント)を編おことで、3次元の立体を生成する興味深いシステムである。すなわちここでは、線が面(2次元)を媒介とせずに、3次元へとジャンプするのである。

  このプロジェクトではその千鳥のシステムを発展させ、6×6cmという小断面の木材を釘も接着剤も用いずに組み合わせて、中規模の木造建築をつくった。木製のグリッドは建物を支える構造体であるとともに、ミュージアムの展示ケースのグリッドにもなっている。

 上に行くにつれせり出していく形状は、木材を雨から守るためのエ夫で、木材のつんつんと突出した端部を守る白いペイントも、同様に木材を守るためにほどこされている。

 日本の伝統木造においては、材料の端部の強調が醸し出すつんつんとした印象が、構造体を軽やかに見せている。庄鮨と曲げの強度実験を行い、日本の伝統的な玩具システムが、「高さ10mの大きな」建築でも適応可能であることを確認した。つんつん系列の作品は、この後、スターバックスコーヒー太宰府天満宮表奉送店を経て、サニーヒルズジャパンへと展開していく。

スターバックスコート太宰府天満宮表参道店 /starbucks

 6cm角の細い木の棒を斜めに編み上げた、メッシュ状の構造システムによって、木の彼の洞窟のような、やわらかでざらざらとした空間ができあがった。

  棒の端部をつんつんと切りっばなしにすることてそもそも木に備わっているざらざらとした質感を、さらに増幅することができた。ダイアゴナルなジオメトリーが空間全体を支配することで、直交グリッドでは得られることのてぃ、、渓流の流れのような、ざわざわと泡立つ空間をつくり出すことができた。

参道(南)側より見る。敷地の奥行きは約40mある

ニーヒルズジャパン

 日本の木造建築に伝わる「地獄組み」という名のジョイントシステムで細い(6×6cm)木の棒首組み上げ、竹カゴ状のもじゃもじゃとした構造システムをつくった。

 木の棒の先端をつんつんと空に向かってのばすことで、建築のシルエットは唆味となり、東京・青山の住宅の中に、小さな森ができた。つんつんとした切断の方法は、このシステムがオープンエンドの有機的でフレキシブルなシステムであることを暗示している。

 パイナップルケーキショップに用いられた室内は、もじゃもじゃとした厚みのある構造体を透過する、木漏れ日のような光で満たされている。