T 研究の構想
 
1.研究主題

豊かな読みをする児童の育成(二年次)
〜文章を読みを深める力の育成〜

 
 
 
2.研究主題設定の理由
 (1) 社会の要請から













 
 21世紀を迎え、現代社会は急激な変化を見せている。この変化の激しい現代社会を生きぬくためには、その変化に対応しながら、相手や目的意識にしたがってあふれる情報の中から自分に必要なものを取捨選択し、その情報を正しく読みとる力が不可欠である。
 さらに、「学校週5日制」が完全実施された今、学力の低下の心配が深刻な問題として教育現場に投げかけられている。文章を正確に読みとる力がなければ、算数の問題の意図をとらえ、解決することもできない。あらゆる教科の基礎となる力でもある。
 よって、これからの社会を生きていく子どもたちには、様々な情報がとびかうなかで、情報を正しく読みとり、さらに自分の考えをしっかり持つことが、他者と関わる基礎となる力になる。「読む力」を育成していくことは、「生きる力」を育成していくことにつながっていくものと考えられる。
 
 (2) 本校教育目標との関わりから







 
  教育目標〉  
 豊かな人間性と思いやりの心を持ち、よく考え、進んで表現できる、
心身ともにたくましい実践力のある子どもを育成する。
  めざす子ども像  
   ○進んで学ぶ子ども(意欲・思考力・表現力・判断力)
   ○豊かな心を持つ子ども(優しさ・思いやり・感性・誠意)
   ○心身ともにたくましい子ども(健康・体力・耐性・本気と根気)
 
 
 





 
  〈重点目標〉  
○進んで学ぶ子ども(意欲・思考力・表現力・判断力)
  〜学ぶことの楽しさや成就感を体得させ、
    自ら学ぶ意欲を育てるとともに学力の向上を図る〜

 

 
 これを受けて、国語科のみならず、全教育活動において、一人一人のよさを生かし可能性を信じて教育目標の具現化に向けて努力している。








 
 それには、基礎基本を身に付けさせ、子どものよさを生かす教育を推し進め、心豊かな子どもを育てることが大切である。そこで、自分の思いや願いを明確に持ったり、正しく理解したりする中で、自分の言葉で考えたり、想像したり、判断したりできる資質や能力の育成を重視している。
 共同研究においては、国語科の「読むこと」領域における「読み取り深める力」の育成に重点を置いて研究を進めていくことで、教育目標の具現化を図っていくこととした。自ら学習に取り組む意欲の喚起とともに、文章を的確に読みとる力を高めることは、他の教科での学習や社会で生きていくうえの基本となると考えている。
  
 (3) 子どもの実態と教師の願いから





























 
 本校は、全校児童81名のへき地・小規模校である。児童は明るく素直
で、決められたことは最後までやり抜くことができる。反面、人的交流が
少なく、交友関係が固定化しやすいためか、自分を型にはめてしまい、持
っているよさを十分に発揮できない児童も多い。
 今年度は「豊かな読みをする児童の育成」についての研究の二年次になる。昨年度の研究の成果について以下の点が挙げられる。
○中心となる文や語を取り上げ、叙述に即した読み取りを繰り返し行うこ とにより、場面の様子を正確に読み取ることができるようになった。
○初発の感想をもとに児童と教師の読みのねらいを合致させた単元シラバ スを作成したことにより児童の教材に対する興味・関心を持続させるこ とができた。
○課題提示の工夫やワークシートの活用により児童一人ひとりが自分の考 えを持ち、主体的に学習しようとする態度を身に付けることができた。

しかし、一方では課題として以下の点が挙げられる。
●語彙が少なく、言葉に対して敏感な児童が少ないため、一つの言葉から 想像を膨らませたり、心情を読み深めたりする力が弱い。
友達の考えのよいところを見つけ、自分の考えをさらに広げたり深めた りすることができない。
●学習課題を練り上げたり、論理立てて説明したりする表現力をしっかり と身に付けたい。
●説明文を読むことにおいて、段落相互の関係をとらえ、書かれている内 容をより具体的に理解する力を身に付けていく必要がある。

 以上の理由から今年度は国語科「読むこと」の領域を中心に「読みを深める力の育成」に視点を当てる。物語文、説明文の指導を通して「根拠を明らかにしながら叙述に即してより正確に読み取ること」「論理立てた説明を加えながら自分の読みを深め、広げること」ができるようにしたいと考え、本研究主題を設定した。
 
 
3.研究主題についての考え方
 (1) 主題「豊かな読みをする児童」について
  ○「豊かな読み」とは
   「豊かな読み」とは、単に書いてあることを読み深めるだけでなく、
   ・ 教材との出会いを大切にし、教材のおもしろさを十分に味わうこと 
   ・ 自分が文章を読んで感じたことや考えたことを友だちと交流するこ 
     とによって、さらに深まり広がること
   ・ 豊かな表現を読み味わうこと
   ・ 次の読書活動につながること
  であると考える。
   これは、国語科だけにとらわれず他教科、道徳及び特別活動、「総合的  な学習の時間」などでも必要なものであると考える。また、学校生活だけ  でなく家庭生活、地域生活の中で活用されることも多い。我々は、児童の  「読む」活動を重視し、「読む」ための技能を計画的に指導していくこと  が大切であると考える。
 
 
 (2) 副主題「文章を読み深める力の育成」について













 
○「文章を読み深める」とは
 「読み深める」の力を育成するためには、まず初めにそこに書いてある内容を正しく読みとることが必要である。文字を正しく認識し、言葉の意味が分かって初めて文章に書かれてある内容の大体が分かる。さらに、言葉の持つ独特のニュアンスや言葉の言い回しなどによって、書き手の意志を感じ取ることもできる。また、行間を読むといった、直接、文字には表現されていない事がらをも読むことができる。
 昨年度は、まずそこに書かれてあることを正しく読み(文字を正しく認識し、言葉の意味が分かる)とり、内容や要旨を的確に把握することができることを研究し、成果を上げてきた。今年度はさらに児童一人ひとりが自分の考えを持ち、友達と意見交流させることによって、自分の意見が深まり広がることを目指す。学び合うことの楽しさを十分に味わわせながら「読む力」を育成していきたい。
 
4.研究仮説
 (1) めざす児童の姿
○文章を読み深めることができる児童
 ・教材を読んで自分の考えをきちんと持つことのできる児童
 ・友達の考えやよさを認め合い、自分の考えを深めていく児童
 ・文章を読むことを楽しみ、学んだことを生活の中に生かすことのでき  る児童
 
 (2) 研究仮説

 国語科の「読むこと」の学習を中心に、以下のような手だてを講じ、文章を読み深める力を育んでいけば、「豊かな読みをする児童」が育成されるであろう。
 @ 一人ひとりが確かな読みをし、それを表現するための学習過程や支援  を大切にする。
 A 認め合い学び合いの場を工夫し、読みを深める楽しさを味わえるよう  にする。

 
 
 (3) 仮説のための理論
  @ 仮説の構造図











 
 








 
 単元





 
@一人ひとりが確かな読みをし、それを表現する
ための学習過程や支援を大切にする。

 
学習課題の把握
課題の追求
 



の追


 
     

 
A認め合い学び合いの場を工夫し、読み深める楽し さを味わえるようにする。。   学び合い  
   


 

 
学習の振り返り
次への見通し
 
 
   
  基礎・基本の定着  主体的な問題解決能力の育成  
     
  文章を読みとる力  
 
         文章を読み深める力        







































 
  豊かな読みをする児童  

 児童が文章を読みとることができるようになるためには、まず学習の基本的な過程を児童自身が把握しなければならない。学習過程を把握することにより、見通しを持ち、積極的に課題を解決しようとする態度が身に付く。また、自分の意見を持ち、友達と意見交流する場面を設定することが文章を読み深めることにつながっていく。本校では、この学習過程を、「単元を通して」、さらに「単位時間の中で」繰り返し確認し、支援することによって児童の力を伸ばそうと考えた。また、文章を自分の生活と照らし合わせたり、さらに本を意欲的に読んだりして、国語科で身に付けた力を日常生活の中で生かすことによって、「豊かな読みをする児童」を育成したい。

 A 手だてに関わる概念規定
  「@ 一人ひとりが確かな読みをし、それを表現するための学習過程や
    支援を大切にする。」
 「読み深める」力を育成するためにはまず、児童一人ひとりが教材文を正確に読み取り、自分の考えを持つこと(「確かな読み」をすること)が必要である。そのために教師は
 ・作品が持つ教材としての価値を把握すること
 ・学習指導要領に照らし合わせ、指導内容を明確にすること
が必要である。その上で、課題を提示し学習活動を展開していかなくてはならない。
 次に、自分の考えを分かりやすく表現することができなくてはならない。根拠を明らかにして説明できれば児童は自分自身の意見をさらに深めることができるであろう。そのために教師は、児童が自分の考えを表現するための手だてを講ずる必要がある。

 A 認め合い学び合いの場を工夫し、読み深める楽しさを味わえるように  する。
 学校教育が家庭教育と大きく違うのは、集団の中で学習の方法を学び、考える力を養うことができる点である。
 児童には一人で考えてもよい考えができないとき、集団で考えることにより、よりよい考えが生まれてくるよさを実感させたい。みんなで考えることの前提には「一人で考える」ことが必要である。考えることは個別に行うものであるが、それらを集め練り上げて課題に対する答えを導き出していくのが授業であり、一人ひとりが意見を出し、それらのなかからよいものを選んだり、修正を加えてさらによい意見にしたりすることができる。認め合い学び合いが活発になされることで児童は自分の考えを深め、学習の楽しさを味わうことができるであろう。
 















































 
(4) 仮説にせまるための具体的な手だて
 仮説@ 一人ひとりが確かな読みをし、それを表現するための学習過      程や支援を大切にする。
ア、一人ひとりが確かな読みをすることができる学習活動の展開や支援の工  夫
@低学年ブロック
・さし絵など具体物を使った課題提示の工夫
  ・ワークシートの工夫(課題が分かり取り組みやすいもの)

A中学年ブロック
  ・課題解決の手引きの活用
  ・ワークシートの工夫(学習の積み重ねが分かるもの )
  ・前時を振り返り本時の課題解決につながる掲示の工夫

B高学年ブロック 
  ・児童の学習意欲を喚起する学習シラバス作り(初発の感想の活用)
  ・ノート作りの工夫(学習のつながり、学習の深まりが分かるもの)
  ・体験的な学習との関連

イ、個に応じた支援の工夫
@低学年ブロック
  ・単元シラバスと自己評価表の活用
  ・指導内容と評価規準の一体化

A中学年ブロック
  ・単元シラバスと自己評価表の活用
  ・指導内容と評価規準の一体化
  ・自力解決のためのヒントコーナーの活用

B高学年ブロック
  ・単元シラバスと自己評価表の活用
  ・指導内容と評価規準の一体化
  ・小中連携とT,Tを取り入れた授業

 仮説A 認め合い学び合いの場を工夫し、読み深める楽しさを味わえるよ    うにする。
ウ、互いの考えを認め合い、学び合う場の設定
@低学年ブロック
  ・基本的な話し合いのしかたの定着
  ・役割読みを取り入れた音読発表

A中学年ブロック
  ・学習形態の工夫(ペア学習など)
  ・一人ひとりが考えを持つ時間と表現できる場の確保

B高学年ブロック
  ・伝える活動を活発にする学習形態の工夫(ペア学習など)
  ・互いのよさを認め合い、読みが深まる発問やはたらきかけの工夫
 
5.研究の全体構想
 
 
  〈教育目標〉  


 
豊かな人間性と思いやりの心を持ち、よく考え、進んで表現できる、
        心身ともにたくましい実践力のある子どもを育成する。
 
   
  〈具体目標〉    



 
   ○進んで学ぶ子ども(意欲・思考力・表現力・判断力)
   ○豊かな心をもつ子ども(優しさ・思いやり・感性・誠意)
   ○心身ともにたくましい子ども(健康・体力・耐性・本気と根気)
 
   


  〈研究主題〉    

 
豊かな読みをする児童の育成
 
   






 
  〈 めざす子ども像〉    





 
 ○文章を読みとることができる子ども
 ・教材を読んで自分の考えをきちんと持つことのできる児童
 ・友達の考えやよさを認め合い、自分の考えを深めていく児童
 ・文章を読むことを楽しみ、学んだことを生活の中に生かすことのでき  る児童

 
   
       

〈一年次〉
「文章を読みとる
 力の育成」
    を通して
 





 

〈二年次〉本年度
「文章の読みを深め る力の育成」
    を通して

 





 

〈三年次〉
文章の読みを生か
 す力の育成」
     を通して
 





 
6.研究計画
 (1) 研究方法









 
@ 授業研究、関連活動の研究を通し、研究主題及び研究仮説を受けて 検証する。
A 各学年最低一回の検証授業を公開し、研究の成果の共有化を図る。
B 先行研究を基に、「読み深める力」の育成のための手だてを検討す る。
C 児童の実態把握のために調査を行い、学習指導に生かす。
D 年間指導計画を作成し、年間または6年間を見通した指導実践を行  う。
E 小学校と中学校との指導内容の系統性を明確にする。
 
 (2) 研究内容
 






















































 
【一年次】
 @ 国語科年間指導計画の作成
  ・各学年の国語科における目標の洗い出し
  ・「読むこと」基礎基本の洗い出し
  ・「読むこと」評価規準系統表の作成
 A 子どもに読みとる力をつけさせるための授業研究
  ・支援の研究
  ・教材を読む方法の提示
  ・評価の研究
 
  【二年次】(本年度)  
 @ 豊かな読みをするための授業研究
  ・「読みを深めるため」の理論研究
  ・仮説検証や手だてにそった検証授業の実践
 A 関連活動における実践の工夫
  ○興味・関心を高め、語彙力・想像力を高める活動の工夫
   ・家庭との連携の模索
   ・群読集会での詩や文学作品の暗誦発表・感想交流
  ○読書活動の推進
  ・小中連携した図書室の開放
  ・委員会の本の読み聞かせや読書量調査
   ・読書単元の重点指導
 B 指導計画の作成と改善
  ・小・中学校9年間を見通した「読むこと」評価規準系統表の作
   成と見直し
  ・小・中学校9年間を見通した「読むこと」学年指導計画系統表
   の作成
  ・「指導と評価の一体化」の研究(修正指導案の作成)
 

【三年次】
 @ 豊かな読みをするための授業研究
  ・「読みを生かすため」の理論研究
  ・仮説検証や手だてにそった検証授業の実践
  ・研究のまとめ
 A 関連活動における実践の工夫
  ○興味・関心を高め、語彙力・想像力を高める活動の充実
   ・言葉に親しむための詩や言葉遊びの掲示
   ・群読集会での詩や文学作品の暗誦発表・感想交流
   ・新聞やニュース視聴の推進
  ○国語科以外での「読む」場の重視
   ・他教科・行事・児童会活動と連携した読む場の設定
  ○読書活動の推進
  ・小中連携した図書室の開放
  ・委員会の本の読み聞かせや読書量調査
   ・家庭での読書活動のありかた
 B 指導計画の作成と改善
  ・小・中学校9年間を見通した「読むこと」評価規準の系統表の見   直し
  ・小・中学校9年間を見通した「読むこと」学年指導計画系統表の   見直し
  ・「評価と指導の一体化」の研究
                (学習指導案の活用性の向上)
                         
   
 (3) 年間研究計画


活 動 内 容












10


11




12










 

○年間研修計画の確認・研修組織の編成
○小・中学校9年間を見通した「読むこと」評価規準系統表の作成 ○理論研究

○第1回校内授業研究会
 〈4年〉「夏のわすれもの」(物語文)

○小・中学校9年間を見通した「読むこと」学年指導計画系統表の作成    
○児童の実態把握(第1回目)

○第2回校内授業研究会 
 〈5年〉「森林のおくりもの」(説明文)

○第3回校内授業研究会
 〈2年〉「名前を見てちょうだい」(物語文)
○第4回校内授業研究会
 〈3年〉「もうどう犬のくんれん」(説明文)

○第5回校内授業研究会
 〈1年〉「おとうとねずみ チロ」(物語文)
○第6回校内授業研究会
 〈6年〉「海のいのち」(物語文)
○児童の実態把握(第2回目)

○研究のまとめ

○小・中学校9年間を見通した指導計画の作成

○次年度研究計画案の作成
 
 
 (4) 研究組織
  校 長  
   
  教 頭  
   


 
現職教育推進委員会

 
・研究の企画、運営、調整
・研究集録の編集
   


 
現職教育全体会

 
・研究計画、内容の共通理解
・事前、事後研究会
   
       






 
学習環境部





 
授業研究部





 
資料調査部





 
・学校、教室環境作 成
・教材教具設備
・関連活動の提案、 実践
 
・授業研究に関わる 準備、提案、資料 収集


 
・校内読解力確認テ ストの集計、考察
  (9月、12月)
・学力検査(NRT) の集計、 考察
 
       
   




 
            各 学 年



 


 
低学年ブロック

 
中学年ブロック

 
高学年ブロック

 
・教材研究
・授業計画・実践
・教材研究
・授業計画・実践
・教材研究
・授業計画・実践
 
 
 
 
 
 
 
 (5) 本年度研究の全体構想
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
U 研究の実際
 
1.研究授業による仮説の検証
 
(1)仮説@ 一人ひとりが確かな読みをし、それを表現するための学習過程      や支援を大切にする。  
 
 手だて:ア、一人ひとりが確かな読みをすることができる学習活動の展開や     支援の工夫
 

児童の興味関心を引き出し、学習意欲を継続させる課題提示の工夫
 
<1学年 「おとうとねすみ チロ」の実践を通して>  【資料1】
 本単元は人物の様子や気持ちを豊かに読み取り、読み取ったことを音読に生かすことをねらいとしている。人物の様子や気持ちの大体を読み、読み取ったこと(登場人物の気持ち)を音読で表現することができれば、児童の読みが深まった状態であると考えた。そこで、本校で毎月行われている群読集会の中で発表し、全校生に聞いてもらうことを単元を通しての目標とすれば児童の音読に対する興味が持続するであろうと考え実践した。
 その結果、場面の読み取りの最後に行った音読のペア練習にも張り切って取り組んだことはもちろん、どうすればもっと登場人物の気持ちを上手に表現できるか児童同士が互いにアドバイスしあう姿も多く見られた。群読発表会でも生き生きと発表することができ、意欲の継続につながった。
 
<3学年 「もうどうけんの訓練」の実践を通して>   【資料3】
 本単元は教材文から分かったことをもとに「ブラインド情報センター」をつくることを単元を通してのねらいとした。読みのめあてを持つ段階で「ブラインドウォーク」を体験させることによって児童の興味・関心を十分に喚起できるよう配慮した。この体験が目の不自由な人の生活について児童の関心を強く引きつけ、教材文の読み取りにも主体的に取り組み、一つ一つの内容について形式的な読み取りに終わることなく、それは具体的にどういうことなのかまで、考えながら読み進めることができた。また、ブラインド情報センターを発表の場と位置づけたことも単元の終末まで児童に目的意識を持たせ、学習意欲を継続させることにつながった。  
 

児童と教師の読みのねらいを明確にした単元シラバス作り
 
 <2学年 「名前を見てちょうだい」の実践を通して>   【資料2】
 本単元は登場人物の行動や会話文から読み取ったことを音読や動作化で豊かに表現しようとすることをねらいとしている。
 まず、初発の感想を書く観点を明確にした。そして出された感想カードをもとに場面わけをしながら、場面ごとに読みの課題を児童といっしょに考えたものを単元シラバスとした。児童といっしょに単元シラバス作成を行ったので自分の課題として単元を通して意欲的に課題解決に取り組むことができた。また、児童といっしょにていねいに場面わけをしていったことが書かれている内容について時間的な順序、出来事の順序の大体をつかむことにもつながり、読み深めの際の手がかりともなった。
 
  <6学年 「海のいのち」の実践を通して>   【資料6】
 本単元は登場人物の生き方、考え方について叙述に即して読み取り自分の考えをまとめていくことをねらいとしている。6学年という発達段階から考え、自ら進んで学習しようとする態度も育成していく必要がある。そこで、初発の感想をもとに全場面について自分で課題作りを行った。
 児童は読み取りの段階で自分の課題に対する考えを友達の意見も参考にしながらまとめていくことができていた。この背景を考えてみると、初発の感想、課題作りからひとりで考える時間を十分に確保したことで、じっくりと課題に向き合う姿勢を持つことができたことが挙げられる。課題を自分のものとしてとらえる手だてを講じることが、児童の学習意欲を喚起し、読みを深めていくことにつながると思われる。
 

自力解決を促す学習活動の展開
 
@課題解決のための手引きを活用した実践
 <3学年 「もうどう犬の訓練」の実践を通して>   【資料3】
 説明文の学習であるので、文章の中心や段落のつながりを意識し、自力で文章を読むときの手がかりとして「説明文の手引き(ひみつの教科書)」を活用した。3学年の発達段階を考慮し、説明文の基本的事項をていねいに指導する必要があると考えた。
 児童は手引きをもとに繰り返し出る言葉や接続詞などを意識して文章の構成をとらえることができた。また、そこで学んだ接続詞を使って短文作りをし、獲得した接続詞の知識を実際の場面で使うことができるよう、習熟を図った。また、単元終末の発表会の原稿を作成する場面でも手引きに出された言葉を使うなど、単元を通して活用することができた。
 
Aワークシート・ノートを活用した実践
 <1学年 「おとうとねすみ チロ」の実践を通して>   【資料1】  <2学年 「名前を見てちょうだい」の実践を通して>   【資料2】 
 1,2学年の実践では登場人物の気持ちを想像させる際にワークシートを使用した。シートには人物の絵と吹き出しを配置し、児童が書き込みやすいよう配慮した。
 1学年では2つの場面について気持ちを想像させた。初めの場面の気持ちが場面の様子を表す言葉を経てさらに読み深まっていくのだが、その読み深まりの様子が想像できるよう(人物の表情を変えるなど)工夫した。児童は、話し合いの中から、場面の様子を想像し、人物の気持ちを読み深めていった。
 2学年は出来事に対して登場人物のそれぞれの考え方が異なっているので、そのちがいを対比的にとらえることができるような形式にした。その結果、気持ちのちがいを児童は的確にとらえながら場面の様子を読み深め、次の展開へと読み進めていくことができた。
 両実践とも、低学年の発達段階を考えたワークシートの活用がなされ児童の読み深まりを促すよい手だてとなった。
 
 <6学年 「海のいのち」の実践を通して>        【資料6】
 6学年では自力解決の手だての一つとしてノートの活用を図った。課題に対する自分の考えをまず、鉛筆で書き、友達の意見の中で参考になるもの、自分の考えと違っているものについては色ペンを使って書き加えさせた。また、自分の考えがよくまとまらない場合でも、途中まで考えたことを箇条書きし、違う考えが出てきても前の考えを消さずに残しておくようにした。
 その結果、自分の考えを明確にすることができるようになったことはもちろんのこと、友達の考えを聞きながら自分の考えをより深めていくことが可能になった。また、学習の足跡としても残していくことができた。どんどん書き込まれていく自分のノートに児童は満足感を持つことができ、次時への学習意欲へもつながっていった。
 
Bサイドラインを活用した実践例
 <2学年 「名前を見てちょうだい」の実践を通して>    【資料2】 <4学年 「夏のわすれもの」の実践を通して>       【資料4】
 課題に対する答えを教科書の叙述に即して見つけるために、サイドラインを引かせることを取り入れた。自分の考えを説明するためには文章の中から適切な言葉を選び出し根拠を示すことが必要になる。両実践は教科書の文に立ち返ったことが、解決の手がかりとなる言葉を選び、自分の考えを明確にするために有効であった。2学年では登場人物ごとにサイドラインの色を変えるなどラインの引き方にも細かい配慮を行った。4学年では場面の盛り上がりを選び出すのに何度も文章を読み返しながら懸命にサイドラインを引く児童の姿が見られた。
 

体験的な学習との関連
 
 <5学年 「森林のおくりもの」の実践を通して>    【資料5】
 本単元は森林環境について実際に調べたり、見学したりすることを通して教材文の読み深まりをねらった実践である。直接体験をすることが読み取った知識をより深まった知識(読み深まった状態)に導いていくと考えた。
 まず教科書に出てくる木材について実際に木ぎれを用意し、その様子を見たり、ふれたりすることができるようにした。児童は文章を読んで分かったことを自分の目で確かめ、実感することができた。また、歴史民俗資料館に出かけ、木材が実際に数百年の間使用されていることも学習できた。読み取ったことを実際に確かめる活動を取り入れることが可能な場合、積極的に取り入れていくことも読みの深まりを促す一つの手だてであることが分かった。
 
手だて:イ、個に応じた支援の工夫 
 

単元シラバスと自己評価表の活用
 
 <1学年 「おとうとねすみ チロ」の実践を通して>   【資料1】  <2学年 「名前を見てちょうだい」の実践を通して>   【資料2】
 初発の感想から作成した学習シラバスに自己評価を書き込めるようにした。児童は、授業の終わりに自分の学習について観点を明確にした自己評価ができた。1,2学年は記号(◎、○、△)を使った評価を行った。1学年は時間ごとに話し合う場面の所を空欄にしておき、児童との話し合いから本時のめあてを導き出し、いっしょに書き込むようにしたところ、本時の場面意識が高まり、効果があった。◎をつけることのできた児童は「がんばって勉強できた」と満足感を得て、次時の学習にも意欲を見せていた。
 しかし、児童によって自己評価の基準が違っていることが問題点としてあげられる。今後は、児童が自分の学習に対して適切に評価できるよう指導していく必要がある。自己評価はあくまでも評価の一つの目安であるので教師の評価規準を明確にしておくことが大切である。
 
 <3学年 「もうどう犬の訓練」の実践を通して>   【資料3】
 3学年は単元シラバスに自己評価を書き込む形については1,2学年と同様であるが、記号ではなく折れ線グラフ状に表した。単元を通した評価項目が、前時から本時、次時へとつながっていき、その変化が明確になっている。これは2学年の授業実践の反省をもとに改良された。
 また、児童の自己評価能力の向上も問題点としてあげられていたので、前時の学習で分かったこと、まとめたことについてよく書かれていた児童に次の時間の最初に発表させるようにした。児童に自分の学習について反省しまとめる力が身につくよう配慮し、児童の自己評価能力の向上に努めた。
 
<6学年 「海のいのち」の実践を通して>        【資料6】
 6学年は単元を通して国語科の領域で身に付けたい力を「学習スキル」という形で児童に提示した。また、常時、教室内に学習スキルを掲示し意識化を図った。自己評価は単元終了時に文章記述で行った。これは毎時間、スキルについての反省の時間をとる余裕がないこと、記号では形式的になってしまうおそれがあることが考えられたからである。
 この学習スキルは、教室に常時掲示しておいたので、授業の終わりに自分でよくできたと思われる項目について話す児童も見られた。単元終了時の文章記述による自己評価も自分の学習をよく振り返り、適切な反省をすることができた。自己評価を他の単元でも継続的に行ってきたことによって、自己評価能力が身についてきたものと思われる。
 本時の学習の振り返りとしては、学習シラバスに自分の課題についてのまとめを文章で記述させた。その内容から児童の読みの深まりを確認することができ、読み深まりの不足している児童には朱書きを入れて次時への意欲付けを行った。文章記述をさせたことは、書く力の育成にもつながった。
 

ヒントコーナーの活用
 
<3学年 「もうどう犬の訓練」の実践を通して>   【資料3】
 3学年では自力解決の際、自力解決の難しい児童を「ヒントコーナー」に集めて指導を行った。課題に対する答えを見つけられない児童が自分で判断してこのコーナーにくるようにした。コーナーでは解決のヒントとなる文章やキーワードを確認した。
 本学級は上位児と下位児の差が大きく、下位児各々を個別に指導するのは時間的にも難しい。ヒントコーナーで一斉に指導することで、時間に余裕を持つことができ、また、児童一人ひとりに自分の考えを持たせた上で、話し合いに臨ませることができる。読み深める上では自分の考えを持たせることが基本であるので、ヒントコーナーを活用することで下位児にも自分の意見を持たせることができ、有効な手だてであった。
 45分間の時間の中で、児童一人ひとりに自分の考えを持たせ、読み深めの時間(話し合いの時間)を確保するためにも、自力解決のための手だては重要である。
 
*ならなし学級(特別支援学級)の指導     【資料編U 資料11】
 教師の読み聞かせをもとに、書かれている内容について、ワークシートにまとめながら読み深めていくことができた。
(2)仮説A 認め合い学び合いの場を工夫し、読み深める楽しさを味わえ       るようにする。 
 
手だて:ウ、互いの考えを認め合い、学び合う場の設定

読み深めのための発問の工夫
 
<3学年 「もうどう犬の訓練」の実践を通して>   【資料3】
 3学年では前時まで読み取った2つの事柄を比較することで、単なる情報の読み取りに終わることなく、さらに読み深めていこうと試みた。
 説明文の学習は、ともすると書かれてある事柄について意味内容を形式的に読み取ることになりかねない。接続詞、文末、繰り返し使われる語句などの言葉に注目し文章の中心をとらえることが大切である。その点において本実践は、前時までに読み取ったことを比較することで、より接続詞に注目し、読み深めていくことができた。二つの訓練を比べて、どちらがより厳しいかという発問にも児童は引きつけられ、自分の考えに理由をつけながら話し合っていくことができた。
 一人ひとりの考えを出し合い、読み深める段階において、主発問をどのように組み立てていくかを明確にしておくことは重要である。本実践は発問計画を本時の授業構想に明確に位置づけた。このことにより、教師は、本時で身につけたい内容を整理して授業に望むことができた。主発問と補助発問を精選することで児童による気づきを促し、児童の発言を結び付けながら授業を進めることができた。発問の精選と吟味は、児童の意欲を喚起しながら、限られた時間の中で、効果的に読み深める話し合いをするのに、大いに効果的であった。
 

読み深めの場面の設定
 
 <4学年 「夏のわすれもの」の実践を通して>     【資料4】 
 4学年では、物語を通してもっとも盛り上がる場面について自分の考えを持ち、話し合いを通して読み深めることとした。児童は場面の移り変わりをとらえ、もっとも心に残る文章から場面の盛り上がりについて自分の考えを持った。話し合いの段階では、自分が考えた場面の盛り上がりについて理由を加えながら説明していった。そして、友達の考えた意見が自分のものとちがっていても、友達の考えをよく聞いている姿が見られた。教師は、それぞれの児童の読みを大切にし板書にまとめていった。
 中学年は「読み取った内容について自分の考えをまとめ、一人ひとりの感じ方について違いがあることに気づくこと」を指導内容の一つとしている。文章の読み深めについても、一つの意見に練り上げ、高め合うことだけでなく、互いの感じ方に違いがありそれを認め合うことも読み深まりの一つの形であるととらえる。その点から、本実践は互いのとらえ方の違いを認め合うことのできるものであったといえる。
 
 <5学年 「森林のおくりもの」の実践を通して>    【資料5】
 本時は、木材の性質と使われ方について考えることをめあてとした。本時で取り上げた文章は、木材の使われ方の事例を挙げ、その理由がその木材の持つ特質によるものであることをとらえるものである。
 読み深まりの場面では、読み取った理由が本当にそうであるといえるのか、逆の発問(ゆさぶりの発問)を行った。児童はなぜその木材を使用しなければならないのかについて、使用の例を用いながら、説明することができた。
 本実践では最初、木材の性質を読み取ることに評価の観点をおいていたが、前述の通り、事例を挙げながら自分の言葉で説明できることを読み深まりの段階としてとらえなおした。(資料・P77 修正指導案参照)しかし、説明文を読み深めるということについてのとらえ方が十分であるとは言えないので、今後も研究を重ねていく必要がある。
 

読み深めのための学習形態の工夫
 
 <6学年 「海のいのち」の実践を通して>        【資料6】
 本実践では、一人ひとりに自分の意見を持たせた後、読み深める第一段階として二人組で意見交換を行った。単元を通してこの手だてを実践してきた。読み深めるということは、相手の意見をそのまま受け入れることではなく、友達の意見を深く知り自分の意見の中に取り入れたり考え直したりする姿であるととらえ、意見交換の際に、相手に質問するようにした。その結果、初めは児童はただ友達の意見を自分のノートに書き写すことで満足していたのだが、本時では友達の意見に納得してからノートに書き加えるようになり、さらに読みが深まっていった。また、自分の意見をより確かなものにしなくては相手に説明することができないため、自分の意見を明確に持つことへもつながっていった友達に自分の意見を受け入れてもらう喜びも感じることができ、学び合いの姿が見られた。
 今回は意図的なグルーピングはしなかったが、より充実した話し合いが行われるためには、意図的なグルーピングが必要である。下位児にも解決の糸口が見つかるようなグルーピングの工夫が今後、必要になってくると思われる。
 読み深めの第二段階として全体での話し合いの場面を設定した。ここでは座席表を活用し、意図的指名を行いながら児童の意見を結んでいくことで読み深まっていくように配慮した。また、構造的な板書を行い読み深まりの様子が視覚的にもとらえられるようにした。
 

読み深めたことを発表する場の工夫
 
 <1学年 「おとうとねすみ チロ」の実践を通して>   【資料1】  <2学年 「名前を見てちょうだい」の実践を通して>   【資料2】
 1、2学年では、登場人物の気持ちや様子を読み深めていった後、読み取ったことを取り入れた音読練習と発表の場面を位置づけた。児童は読み深めのための話し合いの段階から音読練習をすることを意識していたためか、教師が「ここはどんな声で言ったらいいか」などの発問に対して意欲的な反応を示した。また、気持ちを表すためには、声の調子だけでなく表情も大事であることに気付いた児童もいた。
 音読練習の場面では、二人組になり、全体の場ではあまり発言のない児童でも友達の音読にどんどんアドバイスする姿も見られた。音読練習の形態にも気を配ったことにより、一人ひとりが活躍する場を保証することができた。
 低学年の「声に出して読むこと」のねらいは主に内容理解のためであるが、授業であるいは家庭学習で音読練習をたくさん取り入れることで、はっきりとした発音でひとまとまりの語や文として読むことができるようになり、さらに想像をふくらませながら読んでいくことにもつながっていった。このことは中学年以降の「内容の中心や場面の様子がよく分かるように声に出して読む」ことにもつながっていくと考えられる。
 
2.関連活動における実践
(1) 興味・関心を高め、語彙力、表現力を高める活動の充実




 
 本校の子どもたちは、他の地域や人々と交流する機会が少なく、また、家に帰ってからもゲーム等の時間が長く、新しい情報に触れる機会や豊かな体験が不十分である。よって、語彙も少なく、読書経験も少ない。学校生活の場や家庭との連携を図ることで、より多くの知識や情報に触れさせ、言葉に興味を持てるよう配慮した。
  
  @ 音読の習慣化・学年便りの活用             【資料7】
 正しく読み取ることの基本は正しく声に出して読むことであると考え、全学年で音読の習慣化に取り組んできた。国語の授業の中で音読することはもちろんのこと家庭学習の一つとして保護者の協力を求めた。その結果、声に出して読むことの抵抗が少なくなったのはもちろんのこと、読み間違いが少なくなり、授業での文章の読み取りもスムーズにできるようになった。また、学力に不安のある下位の児童でも、繰り返し練習することで自信を持って読めるようになり、他の学習活動にもよい影響を及ぼしている。
 また、本校では群読集会を行っているが、そのときの様子を学年便りを通して家庭に知らせてきた。音読の重要性、家庭学習の重要性なども合わせて家庭に知らせることにより家庭との連携を図っている。
 
  A 群読集会での詩の暗誦発表              【資料8】
 友達と声を合わせることで、言葉の持つ豊かな世界や響き、重なりなどの美しさを味わわせ、言葉への関心を高めることをねらいとし、毎月の全校集会時に群読発表を行った。児童は、回を重ねるごとにさまざまな発表形態、発表方法を工夫し、自信を持って声に出す児童が増えてきた。聞いている児童にも、聞く観点を提示し、聞き方の指導も行った口型や発音、発声の方法、話の聞き方について一斉指導するいい機会となっている。
 
  B 学習環境の整備                   【資料9】
 読書の啓蒙を図り、よりよい本を選ぼうとする態度を育成するために
各学年とも読書単元の指導に工夫を凝らした。日常的な読書活動の推進に加え、授業の中でも重点的に取り上げてきたことで、発達段階に応じた本や、教師の読ませたい本にふれさせる機会を多く持つことができた。今後も児童がよい本にふれることができるように、日常的な指導と授業での指導の双方向で、読書活動を推進させていきたい。
 話し方・聞き方の資料の提示、朝の学習の工夫による語彙力向上など総合的な国語の力(話す・聞く・書く・読む・話し合う)を日常的に伸ばしていく指導の工夫を今後も行っていきたい。
 
 (2) 読書活動の推進
   朝の時間を利用した読書タイムを各学年ごとに随時取り入れ、読書の啓
  蒙を図っている。本校では、読書が好きであると答える子どもも多いが、
  個人差は大きく、活字離れも否めない。また、本を買い与える家庭も多く
  はなく、家庭での読書量は少ない。学校図書館を利用し、さらに読書の楽
  しさを味わえるような実践を試みた。
  
  @ 読書タイム                   【資料10】
 週2回朝の活動の時間を読書タイムとした。下学年では、教師による読み聞かせも適宜行ったきた。文字に対して抵抗のある児童も楽しく物語の世界に浸ることができ、読書への関心を高めるとができた。
 しかし、読んでる本の種類に偏りがあり、図鑑や漫画を多く用いた本ばかり好んで読む児童も見られた。語彙を増やし、文字に慣れ親しむことで読解力を養いたいと考える教師の意図とのずれが生じたため、お薦めの本の紹介など行い、ほかの種類の本(多くは読み物である)へ目を向けさせるよう努力してきた。児童の読書の幅を広げていくことが今後の課題である。 
 
  A 小中連携の図書室利用・図書委員会の活動      【資料10】
 読書意欲の向上、読む力の育成、語彙の拡充、豊かな心の育成をねら
いとして、隣接している沢石中学校の図書室を開放し、小学生にも本の貸し出しを行っている。中学校の図書室に行くことで、中学生や中学校教師との交流がよい刺激となり、児童の読書の幅が広がり、数多くの本に親しもうとする児童が増えた。
 図書委員会の児童が中心となり、下学年への読み聞かせや図書室の環境整備、よい本のお薦めポスター作りなど全校生への読書活動の啓蒙に努めている。
 
3.指導計画の作成と児童の学力の変容
 
 
 (1) 国語科指導計画の作成






















 
@ 基礎・基本表                    【資料12】
 「C読むこと」の領域における言語活動例とそれに関連する指導事項、言語事項について、低・中・高学年ごとに整理した。これにより読む力を育成することを中心に関連した事項が明確になり指導に役立てることができた。

A 評価規準系統表(小学校)【資料13】 (中学校)【資料14】 
 「C読むこと」の領域において小学校6年間を見通した系統的な指導ができるよう、評価規準を作成した。さらに中学校の3年間の評価規準も整理し、9年間を見通せるようにした。このことにより、低・中・高学年での到達目標が明らかになり、指導の重点化が図られるようになった。また、中学校の評価規準も合わせて見ることができるので、特に6学年の指導内容から中学1年の指導内容への段差をなくすことができるような指導を行っている。

B 「読むこと」指導単元一覧系統表          【資料15】
 実際に使用している教材を各学年の身に付けるべき内容に照らし合わせて見通せるように、単元一覧表を作成した。また、中学校の国語科教師の協力を得て、中学校の単元一覧も合わせて作成した。このことにより、実際に指導する単元がどの指導内容に位置づけられているのかが一目で分かるようになった。

 
 (2) 個人カルテを用いた評価                【資料16】





 
 上記@〜Bの指導計画を基に、単元の具体的な評価規準を設定し、個人カルテを用いて評価をした。単元全体を通して一人ひとりの変容が分かることと、1単位時間ごとの様子を短時間で評価できることを考えた形式にした。さらに単元全体の指導計画も加えることで、単元を通して、観点を明確にした評価が可能になった。
 
 
 (3) 評価規準と指導の精選化                【資料16】
 一単元において評価規準を精選し、その評価規準を達成するためにはどのように指導したらよいか学習の手だてを記録するようにした。これは、月の学習指導案に綴じ込み、算数科においても同様に活用している。日々、手だてを明確にした上で授業を行うことが自己の指導力の向上につながると考え、実践している。  
 
 
  (4) 修正指導案の作成                  【資料17】
 指導法の改善と指導力の向上を目指し、検証授業終了後、修正案を作成した。(資料編T 各学年の実践記録参照のこと)検証授業を行うにあたって、事前研究を行い、児童の実態に応じた適切な指導を行うことができるよう熟考しているが、検証授業後は問題点がよりはっきりみえてくる。その問題点をそのままにせず次の指導に役立てるため、修正指導案作成を試みた。
 
 
 (5) 学力実態調査の結果と分析               【資料18】
 本校では年3回の学力実態調査を行っている。前年度末の標準学力検査(NRT)の結果をふまえて、年度当初に学力向上プランを立案した。また、説明文、物語文の読解力確認テスト(9月、12月)の実施により、年度途中における学力の変容をとらえることができた。結果の分析を通して、正答率から指導の効果を確認したり、陥没点については補充的な指導を行ったりと、児童一人ひとりの習熟の程度を把握しながら指導の改善に努めた。説明文、物語文の確認テストについては、問題の妥当性、客観性が問題点として挙げられるが、指導と評価を連動させ、より個に応じた手だて講じることが大切である。
 
 
 
 
 
 
V 研究の成果と課題 (○・・・成果 ●・・・課題)
 
1.研究授業による仮説の検証
仮説1 一人ひとりが確かな読みをし、それを表現するための学習過程や支援    を大切にする。
 ア、一人ひとりが確かな読みをすることができる学習活動の展開や支援の工   夫
○導入の段階で単元を通しての目的意識や課題意識を持たせる手だてを講じたことが児童の学習意欲の継続につながった。  
○学年の実態に応じ、初発の感想を生かして学習課題を設定したことにより、児童の興味・関心が高まり、意欲を持って学習に取り組むことができた。
○読み深めることができる前提として、一人ひとりに自分の意見を明確に持たせることを意識した指導を行ってきた。学年の発達段階に応じたワークシートの活用、「学習の手引き」の活用、体験的な学習を取り入れること、自力解決する時間の確保等、自力解決の手だてを講じてきたことが、自分の意見を持ち、話し合い活動(読み深め)に積極的に参加することにつながった。
 このように、様々な手だてで子どもの興味・関心を高め、意欲を持たせることは、主体的に学ぼうとする態度を育てることにつながるということが分かった。また、ワークシートやノートを活用し書くことが、自分の考えをしっかりと持つことにつながり、そのあとの互いの考えを認め合い、学び合う場にも生かすことができた。
●文章を正確に読み取る力をつけていくことが基本である。教科書の語や文章に立ち返って考えさせることや、児童の基本的な語彙力の拡充を図っていくことが今後も必要である。
●単元の終末に活動を含む発展的な学習が展開される場合がある。読み深めたことを広げる活動として有効であるが、「読むこと」の時間が削減されている中、単元の展開や指導事項の精選化を図っていく必要がある。
 イ、個に応じた支援の工夫
○自力解決の難しい児童には、ヒントコーナーを活用したり机間指導を行いキーワードを指し示したりして支援していった。また、前時までの学習の流れが一目で確認できる掲示物を準備したところ、自力解決の手がかりとして有効に活用できた。
○単元シラバスにもとづく自己評価表の活用を図り、本時の学習の様子から、次時の具体的な支援計画立てることができた。
 このように、単元シラバス、自己評価の意図的な活用は、児童が主体的に学ぶための効果的な手だてであることが分かった。評価規準や個に応じた手だてを明確にし、自力解決から学び合いへと導いていきたい。
●児童自身が適切な基準で自己評価する力(自己評価力)を身に付けていくことが必要である。
●上位児、下位児にそれぞれ適切な支援を行っていく必要がある。限られた時間であるのでそれぞれの児童に有効な手だてを講じていくことが大切である。児童の実態に応じた手だてについてを明確にし、指導にあたっていく必要がある。
 
仮説2 認め合い学び合いの場を工夫し、読み深める楽しさを味わえるように    する。    
 ウ、互いの考えを認め合い、学び合う場の設定
○「読み深める」ための話し合いでは、児童の意見を効果的に引き出すために、発問計画と発問の精選、意図的指名、構造的な板書の工夫などの手だてを講じてきた。児童は積極的に自分の意見を発表したり、友達の意見を取り入れたりしながら読み深めていくことができ、児童同士の学び合いの姿を見ることができた。
○学び合い・意見交換の場面で学習形態(ペア・グループ・全体)を工夫したところ、互いの意見に質問し合ったり、自分の考えを持てない児童が友達に教えてもらったりすることができた。自分の考えを深めていくことにつながった。
○読み深めたことを発表する場を設定したり、本時のまとめを記述したりすることにより学習の成果を児童自身が確かめることができた。「分かった、できた」という充実感と学習の楽しさを味わうことができた。
 このように、音読発表会をしたり、互いの考えを学び合う時間や場を設定したりすることは、自分の考えや読みをさらに深めることにつながることが分かった。
●読むことの領域ではあるが、より豊かに文章を読み深めるには、他領域の話すこと・聞くこと、書くこと、言語領域の学習がとても大切であり、総合的な取り組みが必要になってくる。
2.関連活動における実践
○正しく読みとることの基本は正しく声に出して読むことであると考え全学年で音読の習慣化に取り組んできた。繰り返し音読することによって、読み間違いが少なくなり文章の読み取りが容易になった。また、下位児でも繰り返し練習することにより自信を持って音読し、学習に臨むことができるようになった。家庭との連携を図ったことも音読の効果を上げる要因となった。
○読書タイムを位置づけ、読書環境の整備、読書単元の拡充を図るなど読書活動の推進に努めてきた。学校生活ではもちろんのこと、家庭でも進んで読書をするようになり、読書量が増加している。
 このように、国語科の授業を支えるために、音読や読書活動の充実を図ってきた。実践を通し、学校と家庭、授業と日常生活を結びつけることがで大切であることが分かった。
●「読む力」を一層高めるために、関連活動の目的を明確にして内容の質的向上を図っていきたい。今後も、図書館教育と連携して実践を深めていきたい。またさまざまな情報に対して興味を持つことができるよう、新聞やニュース視聴を進めていきたい。
 
 
3.国語科指導計画と評価の実際
○「読むこと」の基礎・基本を整理したことで、言語活動例に基づいた単元の展開がなされた。一年間を見通して、また、六年間を見通して、段階的、重点的、継続的な指導を教師が意識できたことの意義は大きい。また、中学校の指導内容についても明確にしたことが、小学校6学年と中学校1学年の段差をなくす指導に役立てることができた。
○個人カルテに評価を累積することで児童一人一人のつまずきに応じた支援ができ、発展的な学習や補充的な学習に生かすことができた。
○学力実態調査を、年間3回実施した。結果の分析を通して、年度当初の実態把握と児童の変容をとらえ、より個に応じた指導の工夫と改善に努めるとともに、指導と評価の一体化を図ることができた。
●評価規準を精選し、具体的な手だてを累積してきたことや授業の反省をもとに修正指導案を作成したことなど指導法の改善と指導力の向上に努めてきた。今後も引き続き取り組んでいきたい。
 
 
 
W 次年度の研究に向けて
 
 
1,研究の成果を生かした授業の充実
 
 今年度は豊かな読みにつながる「読み深める」ということを、「読んで分かったことを生かして発表する」「自分の意見と相手の意見のちがいや相手の意見のよさに気付く」「相手の意見を深く知り、自分の意見に生かす」「分かったことを用いて例を挙げ自分の言葉で説明したり比較検討したりする(説明文)」ととらえ実践してきた。次年度は、さらに学んだことを生活に生かしたり、情報として発信したりすることができる児童を育てていきたい。
 
 
2.読書活動の充実
 
 読みを深めるためには、新たな情報や知識を得ることが大切である。読書を通して考えを広げたり深めたりするために必要な図書資料を選んで読むことができるよう、図書館教育との連携を図りながらさらに読書活動を充実させたい。
 
 
3.教師自身の指導力を高める教材研究
 
 授業を研究すればするほど、教師の教材に対する理解が児童への指導に影響することを痛感した。ブロックや全体の研究をさらに強化して教師側の「読み」を深めていきたい。