線量低下、福島まだら
■線量低下、福島まだら
原発事故から5年目に入った福島県。除染などで放射線量は低下傾向にあり、地元は復興の加速や観光客数の回復を目指す。一方、線量の高い地域の多くは除染の方針すら決まらず、避難中の住民は将来への希望を持てないままだ。
■観光回復途上 進む除染、不安払拭へ一歩
「福島に実際に来て、見て、楽しんでもらうことで、風評の払拭(ふっしょく)をはかりたい」。福島市で2月2日にあった福島県とJRグループの観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」の発表会見。内堀雅雄知事はそう意気込んだ。
毎年7月、「相馬野馬追(のまおい)」が開かれる南相馬市。2011年は部分的な開催しかできず、事故前に19万人いた来場客は1万人を切った。そこで市は、12年春から会場の除染を急ピッチで進めた。東京電力福島第一原発から北に約23キロのメイン会場の空間線量は、毎時1マイクロシーベルト程度から現在約0・3マイクロまで低下。来場客数も徐々に回復した。それでも14年は約17万人で事故前にはまだ届かない。
第一原発の西約50キロの三春町は、国の天然記念物で「日本三大桜」に数えられる三春滝桜で知られる。町によると、11年は花見ツアーがほぼ全てキャンセルされ、事故前に毎年30万人前後だった花見客は約15万人に半減。昨年は22万3千人と回復には至っていない。
原発から遠く離れた会津若松市でも、修学旅行生などが14年度で約3万人と、震災前の半分程度だ。
県全体の11年の観光客入り込み数は約3500万人で前年の約5700万人の6割程度に激減。13年の観光客も8割余の約4800万人にとどまった。
一方で、原発事故後、国や県内市町村は毎年計数千億円規模の予算を計上し、除染を進めてきた。こうした除染や放射能の自然消滅の結果、県内のモニタリングポストの約9割で11日現在、線量は除染の目安となる毎時0・23マイクロシーベルトを下回っている。
シンクタンク「とうほう地域総合研究所」(福島市)の担当者は「(線量が下がった)福島の現状が、正確に理解されているとは言えない」と指摘する。
DCを担当する県幹部は「不安を感じる人に『わざわざ福島に行かなくても』と判断されている。県外の人に現状を知ってもらう機会。繰り返し来たいと思ってくれるファンを増やせれば」と期待する。
(佐藤啓介)
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