核のごみたまる一方

AS20150308000087_comm 東京電力福島第一原発事故でばらまかれた放射性物質によって、姿かたちや汚染のレベルも様々な廃棄物が大量に生まれ、広い範囲にたまり続けている。いつになったら処分が終わるのか、だれも見通せていない。

■原発ごみ、たまる一方 敷地内に防護服・がれき・木

 東京電力福島第一原発事故でばらまかれた放射性物質によって、姿かたちや汚染のレベルも様々な廃棄物が大量に生まれ、広い範囲にたまり続けている。いつになったら処分が終わるのか、だれも見通せていない。

 福島県大熊、双葉両町に立地する福島第一原発。2月下旬、4年前の原発事故後に、どのような廃棄物が出ているのか現地を見た。

 福島第一の敷地面積は350万平方メートルあり、東京ディズニーランドにして七つ分の広さがある。車で回ると、事故を起こした1~4号機のエリアから北側に約2キロ離れた敷地に、廃棄物の保管エリアが広がっていた。かつては雑木林だった場所だ。

 敷地内では、原子炉建屋上部や周辺に散らばったがれき、汚染水タンク設置のために切り倒した樹木、汚染水の処理で使ったホース類など、様々な廃棄物が発生している。付着した放射性物質の分析が難しく、扱い方が決まるまで敷地外に出せずにたまり続けているのだ。

 エリアの一角で、覆土式のがれき一時保管施設の工事が進んでいた。長さ80メートル、幅20メートルの広さで地面を掘り込み、がれきを置いて土を盛る。重機の音が響くなか、白い防護服を着た作業員らが測量や備品の搬送にせわしなく動いていた。

 4千立方メートルの容量を持ち、既に2基が完成。毎時30ミリシーベルトまでの高線量の廃棄物をより分けるが、近く予定される1号機の作業で出るがれきを保管するため、3、4基目に取り組んでいる。

 雨が降っても表土が流れ出さないように草が植えられ、かまぼこ形の外観は古墳のようだ。「土に接する部分は遮水シートで覆って、漏れ出さない対策をとっています」と、福島第一原発の七田直樹・廃棄物管理グループマネージャーは説明する。東電によると、毎時30ミリシーベルトを超える高線量がれきは金属製容器に入れて別の場所に置いた貯蔵庫で保管。同1~0・1ミリはシートで覆い、それよりも低ければ野積みというように線量に応じて保管方法は分かれる。

 作業員が着る白い不織布製の防護服ゴム製の手袋類も毎日出る廃棄物だ。作業によっては放射性物質が付着する可能性があるため密閉の容器で保管される。覆土式施設の海側には、防護服類が詰まった1辺約1メートルの立方体のコンテナが1万4千個も整然と積み置かれ、目には角砂糖のように映った。

 現段階で廃棄物は毎月数千立方メートルずつ増え続けている。東電は、事故から5年の来年3月末、がれきが約29万7千立方メートル、伐採木が約11万5千立方メートルに達すると見込む。東京ドームの3分の1杯分だ

■処理方針、2017年度まで示されず

 これらの廃棄物にどう向き合うのか。通常の廃炉作業と異なり、どんな種類の放射性物質がどこにどんな形で残っているのかわからない。国際廃炉研究開発機関(IRID)に加わる日本原子力研究開発機構(茨城県)でがれきの分析が進むが、時間がかかる見込みだ。国・東電の現段階の廃炉工程表によると、処理や処分の基本的な考え方は、2017年度にならないと示されない。

 しかも、これらは序盤の廃棄物にすぎない。廃炉の最重要課題は溶け落ちた燃料の取り出しだが、放射線量が高くて人が近づけず、取り出し方を検討している段階。溶融燃料の処理、原子炉や建屋の解体に伴う廃棄物の総量の把握は見通しが立っていない。(熊井洋美)

■汚染土の中間貯蔵、最長30年

 放射性物質で汚染された廃棄物は、福島第一原発敷地外の岩手から静岡までの13都県に広がる。いずれも最終処分のめどは立っていない。

 福島では、除染による汚染土が最大で2040万立方メートル、除染で集めた落ち葉など廃棄物の焼却灰などが160万立方メートル見込まれている。これらは、敷地内のものより総じて濃度は低いが、東京ドーム18杯分の膨大な量だ。全量が原発周囲に建設される中間貯蔵施設に運び込まれる。

 搬入は13日から始まり、最長30年間にわたり保管される。汚染土は、放射能の自然減衰や分離によって土木資材などへの利用が図られる。その上で必要なものは、県外で最終処分すると法律で定められた。

 施設予定地の面積は、羽田空港に匹敵する16平方キロで、全域が住民全員が避難する帰還困難区域だ。地形を生かしたダムのような土壌貯蔵施設と、遮蔽(しゃへい)効果のある倉庫のような廃棄物貯蔵施設が中心になる。土の施設は、濃度8千ベクレルを境に、遮水設備などが異なる2タイプをつくる。廃棄物の容積を減らす焼却施設や、放射性物質分離技術の研究施設も併設する。

■13都県に8000ベクレル超のごみ

 このほか、除染と無関係に出て、1キロあたり8千ベクレル超に汚染されたごみを、自治体や企業などの申請を受け国が決める「指定廃棄物」がある。稲わらや堆肥(たいひ)、浄水処理で発生した土や家庭ごみの焼却灰などが典型例だ。

 指定廃棄物は、福島を含め12都県にある。保管が切迫している宮城、栃木、茨城、千葉、群馬の5県では国が処分場を新設する方針だが、地域住民の反対などで作業は進んでいない。

 その他の都県では「特措法通り国が責任を持って処理すると考えている」(東京都)などと国の対策を待つ状態だ。ただし、岩手県では環境省が、濃度8千ベクレル超を含む申請前の牧草1202トンを他のごみと混ぜ濃度を下げ、一般の廃棄物として処分できるか検討する実証事業を行い処分を進めた。埼玉県は、濃度8千ベクレル超の廃棄物を抱えるが、指定申請はせず自然減衰にあわせ処分を進めている。

 また、除染を行う市町村は福島以外にも岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉にあり、汚染土や除染ごみが保管されている。福島県外の汚染土は昨年9月末で7県計27万立方メートル。処分法は未定だが、低濃度のため技術的には大部分が資材などで利用できるという除染ごみは計5万立方メートルあるが、一般ごみとして処分される。これらには、放射能を測る規則はない。

Top