汚染水の流出非公表に地元反発

■汚染水の流出非公表に地元反発 東電は陳謝スクリーンショット(2015-02-26-15.17.54)

 漁業者に対し頭を下げる新妻常正・東京電力福島復興本社副代表(中央)。野崎哲・福島県漁連会長(左)は硬い表情を崩さなかった=福島県いわき市

 東京電力福島第一原発から港湾外の海に汚染水が流出していた問題で、地元の福島県からは25日、流出を公表してこなかった東電の姿勢に一斉に反発の声が上がった。建屋周辺の地下水をくみ上げ、浄化後に海に流す「サブドレン計画」の交渉は棚上げに。信頼関係が失われ、廃炉計画に影響する可能性も出てきた。

 福島県漁業協同組合連合会(野崎哲会長)は25日午前、いわき市で定例の組合長会議を開いた。東電幹部が出席し、雨が降るたびに排水路の水の放射性物質濃度が高まることを把握しながら、公表していなかったことを陳謝した。

 東電が排水路の放射性物質の定期測定を始めたのは昨年4月。8月には、ベータ線を出す放射性物質で通常の10倍以上の1リットルあたり約1500ベクレルを検出していた。

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 これに対し、漁業者からは「なぜ我々に黙っていたのか」「情報隠しだ」と批判が相次いだ。もともとこの日はサブドレン計画について協議する予定だったが、持ち越しとなった。会合後、野崎会長は「東電との信頼関係を揺るがせる事態だ」と記者団に語り、計画をめぐる交渉を凍結する考えを示した。

 県も内堀雅雄知事ら幹部が急きょ対応を協議。内堀知事は「情報の速やかな公表と、その意識の徹底という基本がなされなかったことは極めて遺憾だ」と強い口調で東電を批判した。

 排水路には、2号機の原子炉建屋とつながる「大物搬入口」の屋上にたまった雨水が汚染されて流れ込んだとみられる。東電は、外洋と仕切られた港湾内へ排水路の水を流すポンプの設置などを検討するという。

 菅義偉官房長官は25日午後の記者会見で、流出先の海水での濃度は低い値だとして「港湾外への汚染水の影響は完全にブロックしている。状況はコントロールされている」と強調した。

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 ただ、原子力規制委員会にも、検出状況は報告されていなかった。東電は「原因を調べ結果が分かってから公表するつもりだった」と釈明。搬入口が原因と特定できたため24日になって公表したという。規制委の田中俊一委員長は25日の会見で「環境に影響するようなことなら、速やかに発表するべきだ」と指摘した。

 東電は過去にも、放射性物質の分析結果や流出を示すデータを公表せず、批判を招いてきた。サブドレン計画をめぐっても、以前から地下水くみ上げを検討しながら、浄化して海に放出する考えを明らかにしたのは昨年8月。計画は汚染水対策に必要として理解を求めている最中だった。

 今後も汚染水対策やがれき撤去をめぐり地元の理解が必要な作業が控える。経済産業省幹部は「信頼は非常に重要。残念だ」と話した。