空間放射線量

■空間放射線量、どうやって測る

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 東京電力福島第一原発事故の発生から4年半近く経ちました。事故後からよく聞くようになった言葉が「毎時○○マイクロシーベルト」などという空間放射線量です。今もテレビや新聞で福島県内の放射線量が定期的に情報提供されていますし、全国には空間放射線量を常時監視しているモニタリングポストもあります。一体どうやって測っているのでしょうか。

 放射線にはいくつかの種類があります。原発事故後の空間放射線量はガンマ線というものを測っています。事故で放出された、ヨウ素や今も地表近くの土の中などに残っているセシウムなどから出されるのがガンマ線です。

 ガンマ線はエネルギーを持っており、物質にぶつかったり、物体を通り抜けたりするときに、そのエネルギーがさまざまな反応を引き起こします。空間のガンマ線がいっぱいあるときは反応もたくさん起きますし、少ないときは反応の頻度も下がります。この反応の度合いを使って、線量を測るのです。

 計測に使う反応は主に2種類。一つは電気の発生です。ガンマ線が、測定器の検出部を通過することで、検出部内に「プラス」と「マイナス」が生じる、電離という現象が起きます。電離で生まれたプラスとマイナスをうまく回路に導いて電流を測ると、その強弱から空間線量が推計できます。

 もう一つが光の発生です。こちらは検出部に「蛍光体」と呼ばれる分子を使います。ここにガンマ線が当たると、分子にエネルギーを与えて励起という現象を起こします。その後、分子がもとの状態に戻るときに、光が発生します。ガラスなどは蛍光体ではないため、検出部には使えません。

 電気よりは直感的に分かりにくいかもしれません。たとえて言えば、分子がエネルギーをもらうことで一瞬ググッと力を入れた後、「はあっ」と息をつくイメージでしょうか。この「はあっ」という息が光と思って下さい。ガンマ線が多いと、あちこちで分子が励起され、もとの状態に戻るため光が増えます。そのため、線量が高いのだと分かります。

 電気を使うにしろ、光を使うにしろ、検出部を改良することで、推定の精度が上がったり、より安い製品を作れたりします。日々開発が進んでいます。ただ、精度がよくても危険性がある放射線の線量を低めに見積もってしまうものはNGです。

 線量計には、測る仕組みだけでなく、大きさや値段、低めの線量と高めの線量のどの部分が得意なのか、といった違いがあります。これを計測する場所の状況や、持ち運びのしやすさ、計測値の信頼性など、何を優先するのかによって使い分けます。

 事故後に2年ほど福島にいましたが、福島第一原発の敷地内で使っている線量計と、会社に置いてあった線量計は形が違いました。実際、会社の線量計はある町の高線量地帯に入ったときに、毎時30マイクロシーベルトで振り切れていましたが、福島第一原発で使われていた線量計は毎時100マイクロシーベルト近くでも普通に測れていました。

 もう一つ、線量は機械の性能や種類だけでなく、測り方によっても変わりうるということにも注意が必要です。

 「検出器が体に近いと背中で放射線を遮られる可能性がありますし、1回だけの計測ではたまたま大きな値や小さな値が出る恐れもあります」。そう話すのは日本原子力研究開発機構(JAEA)の福島環境安全センター放射線計測技術グループの三枝純さんです。紹介された測り方の例は、地上1メートルの高さで福島第一原発に検出部を向けて手を伸ばし、10秒おきに5回測る、というものでした。

■記者のひとこと

 放射線は空間線量だけでなく、浴びた量、つまり被曝(ひばく)線量を見ることも重要です。5月まで福島県に2年いました。福島第一原発構内や第二原発の原子炉直下にも何度も行きましたが被曝は2年で1.7ミリシーベルト。国際機関が、がん発生率の上昇が見えてくるとする値の数十分の1でした。(小坪遊)