超高温原子炉

NHKニュースより2014.7.8

 「下村文部科学大臣は、メルトダウンや水素爆発を起こしにくく安全性が高いとされる「高温ガス炉」と呼ばれる新しいタイプの原子炉の研究施設を視察し、国として研究開発を促進する考えを示しました。

 下村文部科学大臣は7日、茨城県にある日本原子力研究開発機構の拠点施設を訪れ、研究用の「高温ガス炉」などを視察しました。
「高温ガス炉」は、炉心の冷却にヘリウムガスを使い、核燃料を耐熱性の高いセラミックスで覆う新しいタイプの原子炉で、炉心を水で冷却し、核燃料を金属で覆っている従来の「軽水炉」と比べて安全性が高いとされており、ことし4月に決定された国のエネルギー基本計画にも研究開発の推進が盛り込まれています。視察で下村大臣は担当者からこうした「高温ガス炉」の構造を聞き、メルトダウンや水素爆発が起きにくいと説明を受けていました。下村大臣は視察のあと記者団に対し、「『高温ガス炉』は、『軽水炉』に比べてはるかに安全性が高いものとされているので、文部科学省として日本の技術を有効活用して、国民が客観的に納得できるよう説明責任を果たしながら、研究開発の促進に取り組んでいきたい」と述べました。

 超高温原子炉(ちょうこうおんげんしろ、英語: Very High Temperature Reactor,VHTR)は、1000度近い高温状態で発電を行う第4世代原子炉。ヘリウムを一次冷却材として使う方式が、最も開発が先行して実証炉段階にあるために高温ガス炉として知られているが、他に溶融塩原子炉または鉛冷却高速炉の超高温炉も研究されている。この原子炉は発生熱の出口部分で600 – 1000度近い高温が可能である。熱効率の高いガスタービン複合発電が可能で、ガスタービン原子炉として知られている。また高温ゆえ、原子力水素製造・原子力石炭液化・原子力製鉄などの工業熱源に使用可能で化石燃料枯渇後の工業熱源として期待されており、熱電併給により揚水発電を不要にできる。そして、冷媒が水でないため水素/水蒸気爆発しにくいなど、従来の軽水炉の欠点の多くを改善・一新する新世代炉である。

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 ガスタービン原発とも呼ばれ、炉心溶融や爆発しにくく、原子力製鉄などの産業熱源に使え、「原子力熱電併給」で出力調整が可能で再エネを保完でき、熱効率50%以上、使用済み燃料排出が1/5、冷却水消費量が少ない、など軽水炉の問題点を一新する第四世代原子炉である。
出口部分で600 – 1000℃の高温ヘリウムが得られ、ガスタービン発電と工業プラントが併設されている。昼ピークや、太陽/風力がダウンしたときは工業プラントの稼動を最低限に抑えて、ガスタービン複合発電に核熱ヘリウムの多くを流して熱効率50%での発電をし、夜間にはガスタービン発電機を止めて、核熱ヘリウムの多くを熱化学水素製造や、原子力エチレン焼成(水素副産)や原子力石炭液化(水素消費)や原子力製鉄に振り向け、揚水発電を不要にすること、再生可能エネルギーの不安定性を補う事、などが可能で、熱効率向上で 発電コスト大幅コストダウンが見込まれるほか、ウラン消費や使用済み燃料排出が半分近くカット可能である。
原子力エチレン焼成においても少ないCO2発生でナフサのほかに、水素を併産できる。水素は「石炭液化プラント」や、重油・タールサンドタールを軽質油に転換する「重質油水素化分解プラント」に不可欠である。 また、原子力石炭液化においては在来石炭液化より少ない石炭投入・少ないCO2発生で多くの人造石油が得られるため、石油ピークを過ぎて石油生産が枯渇衰退期に入っている現在、バイオ油より安価大量に人造石油を化学合成する手段として期待されている

高温ガス炉の設計は1947年にオークリッジ国立研究所の電源発生部の職員によって最初に提案された[3]。ドイツのルドルフ・シュルテン(英語版)教授は、1950年代に開発役を果たした。アメリカのピーチボトム原子力発電所 (en) の原子炉は電力生産のための最初の高温ガス炉であり、これは成功裏に終わり1966年から1974年にかけて技術的な証明の先駆者になった。高温ガス炉の設計の例の一つであるフォートセントブレイン原子力発電所 (en) は1979年から1989年にかけて高温ガス炉として運用された。この炉はいくつかの問題に苛まれ、経済的理由から炉は閉鎖されたものの、アメリカの高温ガス炉のコンセプトの証明として役立った[4]。これ以来高温ガス炉の新しい商業炉は開発されていない。
高温ガス炉は英国のドラゴン炉、ドイツの AVR と THTR-300 、日本の高温工学試験研究炉、中国の HTR-10 などでも研究されている。2009年に計画された 100 – 195 MWe の発電力を持つペブルベッド型高温ガス炉実証炉2基が中国において建設中であり2013年竣工予定である。[5]、いくつかの国の原子炉設計者によって建設が推進されている。
これらの高温ガス炉をさらに効率的に運用するため超高温下で利用できるようにするための研究も多く行われ、これが超高温炉の研究のきっかけともなっている。最近では設計が事実上新型に更新され、現在は超高温ガス炉として知られる形式で提案されている[6]。日本においては溶融塩炉の燃料を液体燃料から粒状の燃料に変え、高温下で利用を考えた新型高温原子炉 (AHTR) という計画があるが、これは溶融塩利用の超高温原子炉に分類することができる。

高温ガス炉は一次冷却材に液体金属ではなくヘリウムを用いるガス直接冷却黒鉛炉である。大型化が困難であるが、非常に炉心溶融しにくい。 高温ガス炉の特徴としては多くの設計において黒鉛を減速材とし、以前のような燃料棒でなく、何らかの形式で皮膜された粒状の燃料の集合体を基にしているなど受動安全性が重視されていることが挙げられる。超高温炉の冷却材にはヘリウムと溶融塩が想定されているが、多くの場合ヘリウムガス冷却炉として考えられており、高温ガス炉としてより知られている。ガス冷却の場合、商業的に利用されている高温ガス炉(黒鉛減速ガス冷却炉)と互換性がある。 2013年に実証炉が完成予定で、超高温炉の中で、現在もっとも実用化に近い型式の高温ガス炉には二つのタイプがある。一方はペブルベッド炉であり、もう一方は六角柱型炉である。六角柱炉は炉心の形状からその名がついており、六角柱の燃料集合体の炭素ブロックが円形の圧力容器に会うように組み合わされており、ペブルベッド炉の設計は核燃料を黒鉛で覆った仁丹状の燃料を集め、6 cm 程度の球にしたものを圧力容器中心部に積み上げたものである。両方の炉で出力要求や設計にあわせ、格納容器の中央に黒鉛の塔が入り輪になった場合もある。

利点

鉛・溶融塩との比較
1 m3 あたり発熱量が低く、黒鉛の大きな熱容量のために非常に炉心溶融しにくい
熱交換器や原子炉容器の腐食問題がなく実用化に最も近く、初期故障も懸念が少ない
原子炉内部が見える
水を必要としないため、水をかけなければ水素爆発も水蒸気爆発も非常に起こりにくい

欠点

鉛・溶融塩との比較
3次元的拡大が困難かつ、原子炉容器からの放熱なので30万kw以上の拡大はクラスタ炉になる
配管等が破断して、隔離弁が作動せず空気が流入した場合、黒鉛火災の可能性がある
鉛冷却炉との比較
黒鉛火災に備えて、液体窒素やハロンや溶融鉛などの窒息消火剤の準備が必要

減速材

 中性子の減速材は黒鉛であり、また、ペブルベッド方式、六角柱方式にかかわらず炉心の構成物にも黒鉛が多く含まれる。

燃料

 超高温ガス炉において利用される核燃料はTRISO型燃料粒子と呼ばれており、セラミックや黒鉛によって被膜された燃料粒子である。TRISO粒子は燃料の中心核を持っており、多くの場合二酸化ウランから構成される。しかしながら、炭化ウランや炭酸化ウランにも可能性はある。炭酸化ウランは酸素の量論量(酸化に必要な酸素量)を減らすためにウラン炭化物と二酸化ウランの混合物になっている。量論酸素量が少ないことは、炭素層の酸化によって生じる一酸化炭素によりTRICO粒子内圧力の上昇を抑える[7]。TRISO粒子はペブルベッドの中にぺブル(球状粒子)に分散させたり柱状に固められ、六角柱状の炭素ブロックに入れられる。アルゴンヌ国立研究所で考案されたQUADRISO燃料[8]のコンセプトは進んだ核反応を良好に制御するために使われている。

冷却材

 ヘリウムは多くの高温ガス炉に使われている冷却材で、ピーク温度と出力は炉心設計に依存する。ヘリウムは不活性気体であり、このためほとんどの素材に対して化学的反応が起こらない。加えて、ほかの冷却材と比べ、中性子の放射にさらされても放射化しない。

運用

炉心では六角柱型の制御棒が練炭状に穴の開いた黒鉛ブロックの穴に差し込まれている。ペブルベッド炉が利用された場合、超高温炉は以前の PBMR 炉のように運用され、制御棒は周囲の黒鉛反射体に差し込まれる。制御は中性子吸収材を含む小球を追加することで可能である。

安全性とその他の利点

 設計は具体的な最適化でヘリウム冷却と黒鉛減速炉心の性質に固有の安全特性を活用している。黒鉛は大きな熱慣性を持ち、ヘリウム冷却材は単層、不活性で反応性をもたない。炉心は黒鉛で構成されており、高温であっても高い熱容量と構造安定性を持っている。燃料は酸炭化ウランに覆われており、これは 200G Wd/t に届く高燃焼度と核分裂生成物の保持性をもたらしている。1000度近い高い炉心出口温度はプロセス熱の排出のない生産を可能にしている。