燃料取り出し準備難航
2年以上遅れに 福島第一1号機
東京電力福島第一原発の廃炉作業で、東京電力は30日、1号機の核燃料取り出し時期を見直す方針を公表した。使用済み燃料は2年遅れて2019年度開始、溶け落ちた燃料の取り出しは5年遅れの25年度開始とする。溶け落ちた燃料の取り出しは昨年6月に1年半前倒ししたばかりで、作業を見通す難しさが改めて浮き彫りになった。
■廃炉計画に影響も
30日に開かれた政府の「廃炉・汚染水対策チーム」の事務局会議に報告した。2号機もずれ込む見通しで、取り出し方法の絞り込みについて15年度以降に判断していく。
見直しの背景には、前提となる作業の遅れがある。爆発によるがれきを撤去し、燃料を取り出すためには、事故後に設けられた建屋カバーを解体する必要がある。しかし、放射性物質の飛散防止策の検討などで予定よりずれ込んでいる。今月22日に解体作業が始まったが、本格化するのは来春になる予定だ。
11年12月に作成された国と東電の廃炉工程表は、燃料取り出し後の建屋の解体など全体の廃炉作業の終了時期を41~51年とした。溶け落ちた燃料の取り出しは昨年6月の見直しで前倒しし、20年度前半とした。現段階で工程表に影響はないとしているが、来春に予定される計画見直しではずれ込む可能性がある。
建屋上部のプールにある使用済み燃料の取り出しは、従来の装置が爆発で使えないうえ、線量が高い建屋内で慎重な作業を強いられる。溶け落ちた燃料に至っては位置や状態がわからず、難航が予想される。
会議では、具体的な燃料の取り出し方法が検討された。1号機は使用済み燃料プールに392本の燃料が残り、原子炉内の燃料は溶け落ちたとみられている。建屋上部の耐震性を確認、取り出し用のクレーン設備を設けてプールの燃料を取り出す。さらに設備を造り直し、溶け落ちた燃料を取り出す方針だ。
2号機は、作業内容や作業員の被曝(ひばく)を検討してから見直しを判断する。検討対象の2案では、早くてもプールの燃料取り出しは19年度、溶け落ちた燃料は21年度になる見込みだ。
東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは会見で、工程表の作成段階ではわからなかったことが多々あったとし「放射線量やがれきの撤去など非常に大変で未経験だが、工程ありきではなく、一日も早くリスクを下げたい」と話した。
現段階で、順調に作業が進んでいるのは事故時に運転を停止していた4号機。使用済み燃料プールからの取り出し作業は計画通り年内に終える見通しだ。建屋が爆発した3号機は、今年8月、がれき撤去の作業中に周辺の機器が燃料プールに落ちるトラブルがあり、作業が中断している。(熊井洋美、川田俊男)
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