はじめての発酵食品

はじめての発酵食品 ニッポンの知恵、世界に羽ばたくAS20150426000201_comm

 味噌(みそ)、醤油(しょうゆ)、漬物……。無形文化遺産に登録され、一汁三菜が基本の「和食」に欠かせないのが、発酵食品だ。日本は世界有数の発酵食品大国。味わい深い「発酵」の世界をのぞいてみませんか。

 発酵を助ける微生物は主に、カビ、酵母菌、細菌の三つ。夏に高温多湿な日本では、その気候から特にカビ食文化が発達した。西欧でカビ食と言えば、ブルーチーズやカマンベールだが、日本の代表的なカビ「麹(こうじ)菌」は、清酒、味噌、醤油、みりんなど和食に欠かせない食材の原点になっている。

 米や大豆などの穀物に発酵に必要なカビを繁殖させた「麹」は、同様に湿気の多い東南アジアや東アジアに存在するが、発酵学者の小泉武夫・東京農業大学名誉教授は「菌の種類も麹の作り方も異なり、日本のこうじは大陸から伝わったものではなく、独自に発生したものだと考えられる」と話す。麹菌が「国菌」とも呼ばれるゆえんだ。現在も麹を作るための菌「種麹」の専門企業がある。全国種麹組合によると、専業は全国で6社。組合理事長で、株式会社樋口松之助商店(大阪)の6代目、樋口松之助社長(68)は「受け継がれた麹菌の性質を変えずに管理すること、また、安全で新しい菌を開発することが大切。味噌や酒に生かして頂いています」。

 19世紀に細菌学者のパスツールが、発酵は微生物の力によるものと明らかにするずっと前から、人は発酵を利用してきた。発酵食品の起源は酒と言われ、メソポタミア文明ではワインを、日本でも縄文時代には果物などで酒を造っていたと考えられている。

 酒が発酵すると食酢に。世界最古の調味料は酢で、日本でも4世紀後半には食酢が造られていた。味噌や醤油は、古代中国の「醤(ひしお)(肉や魚、穀物に塩を加え発酵させたもの)」に由来。醤油に詳しい舘博・東京農業大学教授は「日本はひしおをヒントに、大豆で味噌を造り、室町時代には、味噌の桶にたまった汁を絞り『溜まり醤油』に発展させたとされます」。

 世界にも酢漬けなど漬物はあるが、日本には約600種もあるという。それは、ぬかや酒粕(さけかす)、もろみなどの多種多様な漬け床があり、国土が縦に長く四季のある日本には多彩な地方野菜が育ち、漬ける材料の種類も多かったからだ。寿司(すし)のルーツで、魚を米と塩で漬け込む「なれずし」もまた、かつては日本各地に広がっていた。

 2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、発酵食品に多く含まれる「うまみ」や健康効果は世界でも注目を浴びる。世界一硬い食品と言われるかつお節もその一つ。枕崎水産加工業協同組合(鹿児島)は今年、フランスに初のかつお節工場の建設を計画。小湊芳洋参事は「将来的には現地のカビを使って本枯節も作りたい」と話す。茨城県工業技術センターは糸が引きにくい納豆菌を見つけ出し、外国人に敬遠されていたネバネバを抑えた納豆を開発。欧米への輸出を狙う。

 国内でも地域で育った特徴のある発酵食品を見直す動きが高まり、千葉、秋田、福島などは発酵食品に注目して町おこしに動く。

 発酵食品。それは知恵の宝庫だ。食べ物の背後にある、地域の気候風土、食文化を見つめるための窓でもある。(才本淳子)

 <読む> 小泉武夫著「発酵食品礼讃」(文春新書)は、日本と世界の発酵食品を通して、人類が築いた発酵文化について記述。舘博監修「図解でよくわかる発酵のきほん」(誠文堂新光社)は、発酵食品の歴史や発酵を利用した環境テクノロジーにまで焦点を当て、カラー写真と図で解説。

 ■ぼろぼろの体救ったぬか床 タレント・川村ひかるさん

 「グラドル」から「漬けドル」へ、と言われるほどぬか漬けが好きです。グラビアアイドル時代は無理なダイエットや不規則な食生活で体はぼろぼろ。三十路前には、肌荒れや体調不良に悩んでいました。

 食生活を見直す中で現れた救世主がぬか漬け。マイぬか床で、季節の野菜を漬けて楽しんでいます。おつまみにポテトチップスはやめてぬか漬けを。歯ごたえがあって満足感もあるし、酵素もとれます。便秘も解消されて肌の調子もよくなりました。毎日のぬか床の手入れで手もしっとり。そんな効果にはまって、著書「発酵美人」(幻冬舎)も出しました。

 微生物がすむ「ぬか床ちゃん」は生き物。手の感触でご機嫌もわかります。かわいくって。食べきれない野菜は何でも漬けて、腐らせずに保存。エコですね。今こそ発酵という知恵と食文化を見直すべきです!

 思わぬ効果もありました。男性に「ぬか漬けを漬けている」というとモテます(笑)。きちんとしていて、家庭的な印象なのでしょうか。発酵食品で健康に、キレイになって、恋にも効く!? となれば、私はますます発酵食品の虜(とりこ)です。

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