現代芸術論1回目
現代芸術論1回目
課題現代芸術における「~主義(イズム)」とは何か。一つの主義(イズム)を中心としてその流派と終焉及び継続について述べよ。
20世紀美術ほど美術史において特異で変化に富んだものはない。その中でもダダが20世紀美術の大きな影響を与えたことは否定できない。特に、クルト・シュビッタースからマルセル・デュシャンそしてアンディ・ウォーホールなどのポップアート絵画が現代美術の中に大きな位置を占めることに驚く。私自身絵画制作をする上での理論的根拠として強い影響を受けた。この学習でさらに深く追求し、再度現代美術に出会えることが嬉しい限りである。
はじめに未来派からダダが生まれた経緯と根拠にいて述べてみたい。
ダダが生まれたのは、未来派の発想に原点があった。未来派は、ドイツ表見主義派、パリの立体派と後期印象派主義の詩を統合したイタリアの芸術的アナーキズムであり、この未来派がチューリッヒ時代のプログラムを形成した。
未来派が、ダダの規範の中心となる概念を引き出している。その事例は同時性、嘲笑主義、騒音音楽に見られる。シュールレアリズムのアンドレ・ブルトンは、ダダについて次のように言っている。
「立体派は、絵画の流派であり、未来派は、政治活動である。ダダは、心の状態であり、反対することにより無知や悪習に対抗するのだ。・・・ダダは、直感を認識し、先天的解釈を非難する。ダダにのみによって我々自身が制約されないで居られるのだ。
我々は、道徳と趣味というドグマについて考えることをやめなければならない。」
このことは、政治的感覚に密着した運動ではないが、発展のためのプログラムとイデオロギーを妨げるものに対する偶像崇拝と不遜な行為は、やはり政治性を少なからず持つと言えよう。
1914年の世界戦争によって、19世紀ブルジョア社会の全面的破壊と古い道徳的価値の変革を願い運動も広まったと言える。ダダイストたちは、産業革命に始まる技術社会と電気とサイバナテックの革命の間の歴史的な影響によって、芸術家たちの環境の総合的な改革や文化的変化への反応により、多様な表現(コラージュ、エルンストのフロッタージュやデカルコマニー、オートマテイズム、ロールシャッハなど)が生まれたのではないだろうか。ダダの中で、コラージュ技法を完成させた作家としてクルト・シュビッタースとマックス・エルンストを忘れてはならない。
エルンストは、フロイトに根ざしたシュールレアリスムの方法による視覚的世界を創造したイメージの形成を主眼に置いているが、シュビッタースは、都会生活から廃棄された多種素材である現実的事物の導入をし、非現実的な抽象絵画への展開が見られた。
また、ハンス・アルプは、ダダの発展の基点となっている。彼が偶然や偶発的な制作の実験を行った不合理の発見は、ダダ美学と言える。これは、文学のオートマティズムに利用され、写真のコラージュやデカルコマニーと共に、気まぐれで無意味な考えには、社会からの拘束からの完全な存在の自由を絶対的な心象風景の中に見ていたと言えよう。
一方、ピカビアやマルセル・デュシャンたちは、機械文明がもたらしたイメージの発想であり、物文明が背景にある。機械を<人間精神の抽象>として見る。デュシャンは後に、有名な大ガラスの作品「彼女たちの独身者たちによって裸にされた花嫁さえも」見られるように図像に示されている。
ダダイストが機械に見いだしていたものは、形態美ではなく、機械のもつ半自然性とか人工性であった。それは、自立したメカニズムをもった人間の観念の産物としてのそれであった。
シュビッタースは、、後にメルツ絵画を生みさらに、廃物という素材の平等性をもとに、機械のように絵画が構成され、立体構成に至るまで発展するのである。それが、<メルツ建築>というレリーフ状の空間構成を試みるのである。
シュビッタースの廃物による廃品芸術は、第二次世界大戦後、ジャンクアートとしてジャン・ティングリーの動く彫刻やルイーズ・ニーベルスンの木製品の廃品のアッサンブラージュを生みだす影響を与えたのでは内だろうか。さらにアメリカポップアートの旗手であるロバート・ラウシェンバーグのコンバインの理論を生み出すことになったと考えられる。
ダダは1922年以降影響力を失うが、ダダは、地下いわば個人の行動として、デュシャンやピカビア、マン・レイなどに生き続けることになる。ダダの運動が滅んだとしても、
社会的状況が、アナーキスティクな精神をもつ必要がなかっただけである。
第二次世界大戦で戦火を逃れるべく多くのヨーロッパの作家が、アメリカに渡米したのである。40年~50年代に、ネオ・ダダやポップアートの誕生が見られる。この起爆剤になったのは、渡米したブルトン、マックス・エルンスト、アンドレ・マッソンらである。 バウハウス帰りからジョセフ・アルバースは、ロバート・ラウシェンバーグに大きな影響を与えた。ポロックを始めとする抽象表現主義は、シュールレアリスムの思想を引き継ぎ、ロバート・ラウシェンバーグは、芸術と生活の境界線を超えて、「現在性」を内に秘めたダダの精神が背景にあると言える。ポップアートも大量消費社会の申し子であり、裏返しのデュシャンとも呼べよう。
(執筆平成15.4.21)
参考図書文献・引用について
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ダダと構成主義 1988西武美術館アンドレ・ナーコフ(基本要素の発見)
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現代美術 伊藤順PARCO出版
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現代美術の手法(1) コラージュ9.15-9.10.22
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美術手帳1988.8.1出版特集マルセル・デュシャン
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現代美術ポロック以降東野芳明三秀社1971.11.10
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アメリカの美術1988.4.17~1945以降
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杉村浩哉栃木県立美術館アメリカ年代記より
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