教育原理2
今日の日本の教育は、一面では、教育内容も高度に普及し、諸外国の教育事情と同様に教育制度も市民のニーズに対応すべく大きな変革を迫られている。特に、週五日制による時間の削減を設定した新指導要領改訂により、小中高校通して、基礎学力の低下への危惧があり、憂慮しなければならない状況下にある。このような現実を踏まえ、「教育の混迷」とか「学校崩壊」といわれるに等しいと感じる面がみられる。確かに事態は深刻さを増し、メディアでもたびたび関連した内容が取り上げられ 「いじめ「校内暴力」「中途退学」「青少年の自殺」などの事柄が社会問題化している。最近は「プッツン」「キレ」てしまう子どもたちや、授業が成立しないいわゆる学級崩壊などといった現象もみられる。しかしながら、本来、教育とりわけ学校教育というものは、子供や青年の知的、身体的な能力や諸能力の発達を図り、それを通して彼らの人格形成や幸福追求に寄与すべき役割を担っている。それ故、様々な困難の中、児童生徒のため、「新しい学校づくり」の活動に焦点を当て、学校再生の可能性、及び新たな創造へ向かって取り組む方策を論じてみたい。まず、学校教育の再構築に向け、教育内容、教育方法の改善を始め、学校の自主性、自立性の確立のための学校改革がみられてきた。その先進的な取り組みの一つに、開かれた学校づくりがある。学校自ら、教育計画の達成度を点検する「学校教育診断」「学校協議会」など地域の教育コミュニティを形成し、総合的な教育力を活性化するための事例「地域教育協議会」(大阪府教育委員会)や地域と学校連携によるコミュニティづくり(千葉県市川市教育委員会主催)がそれである。しかも、わかりやすく楽しい指導を目指した授業の工夫と改善に向け研究授業や授業公開が実施され、私自身の勤務する学校(福島県田村郡三春町の教育) も同じである。しかも、地域のお年寄りの知恵に学ぶ地域学習や昔遊び学習、味の体験学習などは、私自身も企画に参加し、少しずつ成果が上がっている。児童生徒も、地域の方と共に企画に参加するたびに、笑顔や心のゆとりがみられてきた。
さらに、チームティーチング指導は、児童生徒の一人ひとりの個に応じた学習指導に効果的であり、このことが教育の質の向上を図ることができる。このことは、特に教師自身の地域のニーズに対応した教育への意識改革と共に地域に開かれた学校環境づくりが急務である。二つ目の改革の方策は、従来の教育課程のあり方を問い直し見直しをすることである。児童生徒が何事にも興味関心をもって生き生きと学習し、学校生活の中で主体的に活動できる学校の教育環境づくりの見直しをすることである。このような環境が構築できるための手だてとして、次の点が考えられる。
(1) 固定時間の廃止とノーチャイムの導入 モジュール導入による日課表の改善を図る。 児童生徒の学習意欲により時間の変更と調整ができる仕組みを作る。常に外部から刺激よる行動では他律的な行動習慣から抜けきれず、自ら時間を意識し、自立的に行動できる姿勢は芽生えない。
(2) 児童生徒の活動の姿が全面にでる教育環境づくりをする。 学習の成果や作品などの積極的掲示と全児童生徒の掲示の場を開くこと。児童生徒が、お互いの作品を鑑賞しあいふれあいの場を作ることである。いつでも使用可能な図書や情報通信ネットワーク 環境構築と多様なメディア環境の配置、友達同士がふれあいができるホームベース環境の設置など、 従来の学校建築にはないインテリジェント校的要素を推進することが明るい学校づくりにつながる。オープンスペースの導入や多目的ホールなどによる全校集会の場の設置など多くの課題がある。 特に学校建築には、地方自治体による教育行政の姿勢などや国庫による予算面のハードルがある。
(3) 保護者や地域との連携を積極的に導入する。 地域コミュニティ推進事業の活性化が必要である。学校での児童生徒の活動の様子を積極的に開放することである。土曜参観・日曜参観による保護者との参画型授業の実現、このとは、教師の授業改革への刺激となり、多くの保護者の学校参加を活性化し家庭同士の話題が豊富になる。生徒指導という側面を大きく変え、人との関わりを学習する場となり、ゆとりある心の教育への手がかりを生む。
(4) 新指導要領で加わった総合的学習の時間に対する教職員全員の積極的な取り組みが必要である。この学習は、従来の学歴社会が生んだ知識偏重教育のあり方への問い直しでもある。児童生徒の興味関心を前提に自らテーマを選択し、生き方を学ぶ実践的な学習であり、従来の教育とは根本的に考え方が異なる。
ここには、指導書、教科書という学習の指導書らしきものはなく、全て地域の実情に応じて学習内容を組み立てることができる。このことは、教師の指導力が試される時代を意味している。教師自ら、教育にたいする意識を変えないと児童生徒の要求に対応できる資質が問われることになるからである。
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