生徒指導の研究-2

生徒指導の研究

課題2「児童生徒の主体性をどうのばすか。」

児童生徒の主体性を伸ばすためには、どうあればよいか。生徒指導の定義は、「人間の行動、行為の指導並びに、行為、行動に直接関わる限りに於いての認識や要求を指導することを通して、民主的人格形成に寄与することを主たる目的とする。」と述べられている。  生徒指導は、実際には主として教科外活動に於いて展開される教育活動であるが、その役割の大切な使命として人格形成のための社会という集団の運動法則を学び取り、民主的な人格形成ができるようにすることにある。

また、子供たちが将来になって民主的共同体としての、社会を再生することができるようにするため、学校、教師だけでなく地域と共に、人格形成ができるよう働きかけることが大切である

子供が主体的に活動できる人格を形成していくには、今日まで我が国で実践されてきたと論ずる竹内常一氏は、学習的生活指導と訓練法的生活指導があるという。前者は、子供自身の物の見方、考え方、感じ方を学習対象とし、生命の豊かさを表現していくことの指導を行うものであり、子供の何者にもとらわれない自由なものの見方、感じ方などが先験的に存在するとする立場、子供の自由意志の存在を承認する教育発想に基づいている。

後者は、現在の生活指導に受け継がれている指導で、学びと訓練により知識で得たことを実践でできるようにすることを目的としている。
学びと訓練は背反するのではなく、子供たちの社会を認識する上で欠かすことのできないものとなっている。
特に、生活認識については、社会生活に於ける社会的諸力の対立、抗争、統制の過程の中で実践的に認識させることの重要性を説いている。
主体的に生きる人間形成が育成されるためには、社会と人間との関係や共同体の持つ役割を知り、民主的な集団を作りあげる生き方を学びとれる指導が不可欠と言える。

では、学校生活の中でね実際子供たちが、主体的に生きていく生き方ができるようにするための生徒指導のありかたをもう少し具体的に述べてみたい。

1970年代後半以降、地域の子供集団の崩壊、能力主義・競争主義・管理主義の強化といった状況変化に伴って、集団づくりの掲げてきた民主的な自治の実現がしにくい状況が広がった。
その中で、子供たちは、組織の主体になるどころか、与えられた組織に上手に対応することを学んでしまい、大人の手による既存の集団・組織へと進んで適応としようとする、いわゆる「指示待ち人間」的な子供たちが増加していったのである。

本来子供たちが、自治的集団を組織し、自分たちの手で新たな価値を創造し外部の世界に挑んでいくことは、自己実現、人格的自立を追求していく過程において不可欠なものである。
まさに今日的課題として自治的で民主的な集団作りが必要であり、学級自治の確立にある。学級集団づくりでは、班長のリーダー権の確立と共に、問題行動を起こす傾向にある子供たちに学級の一員としての存在感を持たせ、集団帰属意識を高めていくことで、よりよい人間関係が築かれ、連帯感が生まれてくる。
グループを中心に団結した授業作りの確立も必要である。それは、生活面だけでなく学習面での連帯感あふれる学級作りを進めることが、全員参加に繋がることになるからである。学級集団作りを基盤に、学校作りに開いた集団作りも生まれてくると思う。主体的な自立的な集団を作り上げるためには、学級集団の民主的運営が子供たちの自治のもとに行われてこそ可能ではないだろうか。

生徒指導の目的は、子供たちの自治的世界を広げ発展させ一人一人がその集団の一員として何ができるかを考えさせることに意味があろう。子供たちの自治は、自ら自立する要求を作り出し、運営させることにより実現させるのではないだろうか。
教師は、集団作りのやりとりや競争を通して集団の持つ素晴らしさと怖さも同時に学びとれるような民主的集団に育てていく使命もあろう。

では、教師が生徒指導を実践していく上で配慮しなければならない点についてのべてみたい。  まず一つは、教師の思想や信条及び感情を子供たちに押しつけることは、厳に慎まなければならない。教師不信を助長するだけであり、子供の人権や表現の自由を奪うことになるからである。
二つめは、道徳の特設によって「正義や勇気」など徳目を注入する教育方法もしてはならない。生徒指導は、心の荒れの中心になってている子供たちに暴力による圧力で押さえつけるものではなく、見放すことでもない。生活実践の訓練指導を通じて、集団の自治や民主的な組織の形成に援助をできるよう教師は、尽力しなければならない。

最後に、生徒指導・生活指導の果たす役割は、益々重要な位置を示すと思われる。特に地域の教育欠如はによる問題や特別活動などの教科外活動の時数削減による子供たちの生活に関わる人格形成の側面が疎外されようとしている。また、人間としてあるべき道徳性の欠如や社会性及び個人主義(利己主義の横行)など、これらを克服するためにも教師の役割は大きく、子供たちの自主性・主体性を育てる使命があろう。

出典
竹内常一1969特設道徳に反対する研究者 全生研研究組織者月刊誌「生活指導」
朝野誠著「転換期の生徒指導」青木書店1996