高校情報教育課程「情報」
高校情報教育課程「情報」
課題1 今日における情報教育の課題
高度情報化社会の進展に伴い、これからの教師とって、社会変化に対応できる生徒の育成していく上 で、進路や今後の生き方との関わりから何を学ばせ、何を身に付けさせていかなければないかを、しっかりと認識することが重要である。特に、新教育課程が示 す「生きる力」の意図には、社会の中で生きていく力の必要性が説かれ、豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の必要性であり、自ら学 び、自ら考える力であると指摘している。教科学習・教科外学習を進めていく上で社会との関わりを踏まえ、カリキュラムの編成をする必要がある。
具体的には、「総合的な学習の時間」のキーワードである「情報・環境・国際理解・福祉・健康」などの例をもとに、児童生徒自らテーマを見つけ、社会と自分 との関わりからどんな生き方が大切なのかを学び、新たな自分の発見に気づき社会に生かしていく学習に結びつくことができるようにしていかなければならな い。 従来のような知識注入的学習のみの情報を効率よく伝えたり、いかにたくさんの記憶を身につけているかを重視する教育観かでは不可能になってきている。新 たな学習方法の選択肢として、情報教育のもつよさを学習の中に取り入れ、学習への理解力がより深く高まるような指導が不可欠になっているのである。情報教 育を学ぶ上での重要な要素は、情報の持つ意味を正し理解し、自分の体験から見つけた言葉で、自分にとって意味のある情報を創りだし、自らの責任の名のもと に自己の表現を情報発信することにある。
電気通信という情報のネット社会が生み出した新たな世界は、今までの教育に新たな学習のあり方を問い直している。情報機器の使い方 いかんによって、時間と空間を越えて素早く学習者同士がに意見を伝達・受信できる双方向な学習が成立する便利なツールである。がしかし、逆に危険もはらん でいる。そこには、情報分野のリテラシーや高度情報化社会のモラルを守り、情報を正しく的確に活用できる能力を身につけなければならないことが必要にな る。
この学習の中には、必然的に人として欠かすことのできない人格形成に関わる道徳的判断能力の育成や、人との関わりの中で積極的情報のやりとりができるコミュニケーション能力の育成が必要となっている。 高度情報化社会では、IT技術革新の産業分野を始め、ベンチャー企業などのビジネスチャンスをとらえ、的確な判断のもとに決断する能力や、まぐるしく変化する社会システムの変化に対応できる能力を身に付けなければならない状況下にある。
教師の役割は、児童生徒が直面する事象を予測し、より質の高い経験が得られるように次の課題へ進められるよう指導方法をしっかりプラン化しなければならな い重要なものである。今までの指導方法から一歩踏み込んで、知識伝達という役割から、児童生徒の取り組む学習課題のプロセスを見通し、解法のヒントを示し たり、さらに課題解決がより高次の段階に進められるよう支援できるコーディネーター的な能力を身につけていなければならないことになる。
しかし、教育現場では、人的にも物的にもいったいどれほど情報教育の学習環境が整備されているのだろうか。過去数年間のデーターによると、情報教育の推 進校を例に取り上げてみると、通産省・文部科学省の協力で押し進められてきた「100校プロジェクト」NTTの「こねっとプラン」など小・中・高校生を対 象にしたパソコン指導や情報通信ネットワークを中心にしたインターネットの活用状況の事例報告をみると、積極的に環境学習・総合学習と関連させたテーマ学 習には、優れた報告もみられるが、一方には一部の教師のみが中心となって、試行錯誤を繰り返しながらようやく一つの実験的試みを終えた段階にすぎない例も みられる。どの学校も、体系的な運用方法やその教育成果を測定するためのシステムを見つける作業に着手しなければならない課題もある。
つまり、現段階における情報教育の普及活動は、ハードの基盤整備やパソコン操作の指導を中心とする教育現場の「技術革新」であり、「学校の電脳化」を進 めているのに過ぎないといっても過言ではない。現在の教育に課題があるとすれば、社会に対してコンピューターがどう貢献できるのか最初に考えておく必要も ある。
しかしながら、現実には、2003年高校も「情報」実施される今、上記のような問題を抱えていても解決しなければならない状況 にある。教育現場では、社会のニーズに対応できる「生きる力」を育てていくために、高等学校学習指導要領の「情報編」の意図を十分理解し、適切に教育効果 が高まるよう努力する必要がある。
【レポート】高校で始まる「情報」の授業 – 情報教育の遅れは取り戻せるか(1)
4月から、全国の高校で「情報」の授業が必修科目になる。IT機器やネットワークが”生活必需品”となった現代社会に生きるために必要な能力を育てるのが目的で、情報を活用するための知識と能力、すなわち”情報リテラシー”能力の育成に重点を置いていることが特徴だ。しかし、この教科で具体的にどんなことを教えるのか、想像が付く人はそれほど多くないと思う。教科の内容を紹介するとともに、日本の情報教育の現状と今後の課題を探る。
○実習メーンの教育
4月から導入される「情報」の教科書
「情報」の授業は、普通高校では、「情報A」「情報B」「情報C」の3教科からの選択制。履修の時期や方法は各地方や高校に任されており、学校によっては、教員の資格・能力や設備の関係で「情報B」「情報C」が履修出来ないところもあるが、基本的には生徒本人の希望で履修科目を決める。
「情報A」は、3教科のうち最も基礎的なメニューで、パソコンやインターネットを使っての実習がメイン。基礎的な情報活用能力の習得を目的としている。実教出版の発行する「情報A」の教科書を例に取ると、検索エンジンの使い方やコンピューターの仕組み、簡単なHTML言語などを紹介するほか、表計算ソフトの画面の説明から基本的な関数の使い方、プレゼンテーションソフトを使ったプレゼン用資料の作成なども別枠で扱うなど、日常生活で必要なスキルを総括的に紹介している。
「情報A」の教科書では、プレゼンテーションソフトの使い方を紹介するページも
一方で、「ネットワーク利用の心がまえ」などの章を設け、「Webページ上には……誤った情報やかたよった情報も含まれている可能性がある」などと、情報受信者の判断力の大切さを教えるほか、クレジットカード番号など個人情報保護の必要性、著作権などの知的所有権保護の重要性、アンチウイルスソフトやファイアーウォールを例に挙げてのセキュリティの概念の説明など、ネットワークを使いこなすための”情報リテラシー”について説いている。
「情報B」「情報C」では、内容構成は似ているものの、さらに高度な内容を扱うようになっており、特に「情報C」では、ネットワークに関する内容が中心になってくる。同社の教科書「情報C」を見ると、インターネットの仕組みやセキュリティのあらまし、転送速度やデータ転送のコツ、ネットワーク上でのマナーにも触れている。また、「情報A」で取り扱っていた、ソフトの使用方法についても詳細になっており、プレゼンテーションソフトを使って、学校紹介などひとつの作品を作成する手順なども扱っている。
このほか、「ビジネスにおける情報化」などのテーマも取り扱っており、POS(販売時点情報管理)システムやFA(ファクトリーオートメーション)、CADシステムなど、社会の中でIT技術がどのように使われているかも解説している。
一方、工業高校や商業高校などの専門高校では、情報技術を専門とした情報学科の設置が認められた。内容的には、普通高校の授業よりは取り扱う範囲が広く深くなっており、「情報産業と社会」「アルゴリズム」など11科目が教えられる。情報関連授業の総時間の半分以上を実習に当てるよう定められているなど、より実践的なのが特徴だ。文部科学省によると、この4月から6~7校が開設を予定しているという。
基礎的なプログラミングやデータベースの操作、システム構築、ネットワークシステムの管理なども扱うほか、それらに必要な基礎的な統計学も合わせて学び、将来、情報産業で活躍出来るような人材を育成していく。
○「情報活用能力」「情報モラル」の育成を
ところで、なぜこれらの教科や学科が導入されることになったのだろうか。文部科学省初等中等教育局の中井淳一・情報教育調査官は「情報化が進み、普通に生活していく中で、コンピューターや通信ネットワークを使わざるを得ない世の中になった。だから、使えるようにするスキルを養っていく必要が出てきた」と説明、「現代は、様々なメディアから色々な情報が流れて来る。それらを見分け、有効に使いこなすために、ITを活用した『情報活用能力』や、情報社会に参画する際の態度『情報モラル』を生徒に身に付けさせることが重要」と話す。
これらの考え方は、1997年に出された中央教育審議会の答申で、週5日学習や総合学習の導入とともに登場したもの。1998年の「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」最終答申で具体化され、同年に改定された新「小学校及び中学校学習指導要領」、翌年に改訂された新「高等学校学習指導要領」などに盛り込まれた。既に本年度から、小学校では「総合学習」の中に、中学校では「技術・家庭科」の中にそれぞれ情報学習が盛り込まれている。
これらの教科を教えられる教員の育成も進んでおり、現役教員に対する3週間の講習で、既に約1万4,000人が資格を取得しているほか、大学で「情報」のカリキュラムを受講して資格を得た新卒教員、教員資格認定試験の合格者を合わせると、約1万5,000人が「情報」の授業を教えられる体制になっている。前述の中井調査官は「全国の高校数が約4,140校なので、地域や学校によっては不足もあると思うが、おおむね十分足りる計算にはなった。ハード的にも、3年の準備期間を置いたので、体制としては万全」と胸を張る。
しかし、欧米諸国や韓国、シンガポールなどに比べ、日本の情報教育が遅れを取っているのはぬぐい難い事実でもある。
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