教育相談論 -1
教育相談論
課題-1 「フロイトとロジャーズ(フロイトに基礎を置くカウンセリングとロジャーズに基礎を置くカウンセリングの特徴とそれぞれの長短を論ずる)」(H14.9.28)
フロイトは、現在様々な理論、技法で行われてている心理療法(精神療法・心理治療)の源泉となっている精神分析の創始者である。
一方、ロジャーズは、個人の能力や適性・興味関心などの測定をもとにした職業選択への助言指導という内容に限定されたカウンセリングの考え方から心理療法的内容を含む方法を取り入れた。
では、この二人のカウンセリングの基礎概念の特徴を述べる。
フロイトは、人間の意識の深層には、意識を超えた層として前意識と無意識があると想定した。彼は、心的構造をイドと自我と超自我の三重の構造に分けている。
彼の理論では、人格を力学的に、構造的に、また発生的にとらえようとしたものである。
カウンセリングとは、心的構造におけるイド、自我、超自我のアンバランスを修正することであり、このアンバランスが自我を弱化させ、内と外界の葛藤を処理できず、体験を抑圧して、それに伴う感情や衝動を無意識に追いやった結果、自我の発達が損なわれるとする。
カウンセリングによって、無意識過程が意識化されれば、自我を自由に解放し、イドの衝動を統合していくことで能力回復されることを、治療の目標としている。
彼の末娘であるアンナ・フロイトによって、さらに「自我と防衛規制」で体型づけられた。
フロイトの「精神分析理論」を背景とした精神分析的心理療法のアプローチの特徴は、次の五つの面から捉えられている。
第一は、心的葛藤の意識化である。問題の症状に至らしめたクライアントの感じてきた内的な生活史を治療者と再構成すること。
第二は、治療契約と作業同盟のもとで治療を行うことである。
第三は、転移、抵抗の分析が中心となる。
ここでは、陰性転移から陽性転移へ変化を生む治療となる。クライエントが、自己の衝撃性や防衛のあり方、歪んだ対象関係などに気づき洞察していけるよう治療をすること。
第四の特徴は、中立的、受動的な治療者の態度と方法である。自由な立場でクライエントの内面と自分らしさを尊重することで、自らに気づきを改善し、見守る態度である。
第五の特徴は、対話的自己洞察法と解釈技法である。
以上五つの面接過程を通じて治療が行われる。
次に、ロジャーズによって提唱されてクライエント中心療法の特徴を述べる。
従来の助言や指示を一方的に与えることが多かったカウンセリング手法とは異なりクライエントの力を信じ、あるがままを受容する共感的態度で臨むことが大切さを強調している。
クライエント中心療法は、ロジャーズの「決定的な学習体験」に基づいている。ロジャーズの療法の特徴は、フロイトの精神分析的診療法のような具体的な技法と展開をしていない。フロイト理論に対する批判、補強としてロジャーズの理論が位置づけられている。治療者は、クライエントに対して無条件で積極的関心を伝えることで最小限度達成されることが目標にある。
クライエントが、何に傷つきどの方向にいくべきかどんな問題が決定的か、どんな経験が深く隠されているかなどを知っているのは、クライエント自信であるという事実を重視したのである。この体験をもとに、ロジャーズの重要な中心的理念の基本となっている。
最後に、フロイトとロジャーズのカウンセリング治療の長所と短所を述べてみたい。
フロイトの精神分析理論の思想や発想は、近代精神分析学の重要な位置をしめしている。 「心理」や「精神」という問題に対して、カウンセリング方法を最初に取り組んだ人物であり、心理学理論の確固とした構造理論でもある。特に、人間の「無意識の発見」「防衛規制」「自我、イド、超自我」の心理分析は、心理学の基礎となっている。
心理学の中には、科学的でない実験などの実証性がない意見があり、人間のマイナス面にしか説明していないと批判されている。またカウンセリングの手法に於いても、クライエントとカウンセラーとの一定の距離を置くことで、心理療法に取り組むことも、時間的制約と療法に長い期間が必要となる問題点もある。
しかし、彼の理論には人間味があり、妙に納得される部分も多く、本質的な人間の存在に繋がっていることである。
一方、ロジャーズは、「人間性心理学」に属し、基本的には、「その人がその人らしくある」ことを理想としている。特に、クライエントの人格変容のためのカウンセラー側の態度条件といわれる。ロジャーズの共感的傾聴は、どのカウンセリング技法でも共通する大切なこととして考えられている。人間中心的アプローチやエンカウンターグループ、フォーカシングがロジャーズを受け継ぐ現在の流れともなっている。
しかし、クライエント中心療法の課題として非行少年を療法する場合、クライエントの抵抗をどう克服するか。陰性転移をどう克服するかなどである。保護観察にたいする不信感の緩和どう育て、陽性転移に治療の展開をするべきか課題も多い。常に、クライエントとの信頼関係を成立させる努力が必要となる。
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