東京アーカイブ

■東京アーカイブ・NHKスペシャル

■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 1/5

■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 2/5.avi

■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 3/5.avi

■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 4/5.avi

■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 5/5.avi

■後編「昭和の戦争と平和 ~カラーフィルムでよみがえる時代の表情~」

総合 2014年10月19日(日)午後9時~10時13分

わずか100年の間に震災と戦争によって2度焼け野原となり、その都度、不死鳥のように復興してきた歴史を持つ、世界的にも希な都市・東京。人々はどのように復興を成し遂げたのか、東京を撮影した白黒フィルムを世界中から収集し、色彩を復元。初公開のフルカラー映像で東京の100年を辿ります。チーフ・ディレクター 岩田真治

時代を自在にタイムトラベル

 今から100年前、まして50年前と言えば、それほど遠い昔ではありません。当時を知る方も多くいらっしゃるでしょう。しかし残されている映像を見ると、白黒イコール遠い過去というイメージから、そこに映る風景や人々と自分自身との間に大きな隔たりを感じてしまいがちです。今回、記録映像の数々をカラー化することで、そうした時間感覚をリセットし、自在にタイムトラベルしているような番組を目指しました。その一方で、2014年という時代を印象づけるため、まるでスマホやタブレット端末の画面を指先で操作して映像に触れているような、ネット上の空間にいるような感覚を意識した演出を試みています。スペシャルサイトと併せてタイムトラベルをお楽しみいただければと思います。

カラーでよみがえる東京 photo01 カラーでよみがえる東京 photo02

東京の街を定点観測

 番組で描くのは2度焼け野原となりながら、力強く復興してきた東京の激動の歩み。東京が舞台なら主人公は土地というわけで、場所の物語をつづることにしました。関東大震災や東京大空襲のとき、それぞれの場所がどんな姿だったのか。定点観測することで史実と同時に物語に富んだ街の映像が伝えられると考えました。スタートラインに据えたのは。「大正六年 東京見物」というタイトルの約100年前のフィルム。東京の主要スポット、丸の内、銀座、上野、浅草などが記録されたものでした。そうして、世界各地に眠る映像を掘り起こすとともに、NHKに残されているアーカイブス映像を加え、街の変遷をたどっていきました。

カラーでよみがえる東京 photo03 カラーでよみがえる東京 photo04

歴史が刻まれたモニュメント

 番組には多くの場所が登場します。かつての東京は浅草や日本橋など山手線の東側を中心に発展していたため、映像も多く残っていました。なかでも私自身の印象に残っているのは日本橋。明治時代に東京の威信をかけて作られ、今も変わらぬ姿でそこにあります。東京の100年を静かに見守ってきた日本橋には、関東大震災の爪痕や、東京大空襲時に落ちた焼夷弾の跡が残されています。東京オリンピックの時には、橋の上に首都高速道路が建設されました。まさに東京の近現代の歴史が刻まれたモニュメント。番組のなかでも重要な場所のひとつとなりました。

カラーでよみがえる東京 photo05 カラーでよみがえる東京 photo06

シリアスな時代を立体的に描く

 100年前の日本は大正初期。大正12年には東京の街並みを一変させた関東大震災が起こり、昭和に入ると満州事変、日中戦争、太平洋戦争へと深刻なニュースが相次ぎます。現代を生きる我々には、白黒の記録映像で見るような、どこか暗い時代のイメージがつきまとうのではないでしょうか。しかし、そうした歴史の一方で、東京ではモダン文化が花開いてもいたのです。今回のカラー化によって白黒では伝わらない東京の華やかさにも目を向け、光の部分を描くことで戦争が迫るシリアスな時代を立体的に描ければと思っています。

カラーでよみがえる東京 photo07 カラーでよみがえる東京 photo08

2年がかりの制作く制作には約2年を要しました。まずは映像の掘り起しから始まり、白黒でおおまかなストーリーを制作。その後フランス パリのチームに持ち込み、1年かけてカラー化しました。その結果、出来上がったのは2時間弱およそ800カットの映像です。建物や洋服の色など、さまざまな資料を元にカラー化を行いましたが、苦労したのは着物の色でした。着物に精通したフランス人スタッフを加えて作業したものの、やはり日本人にしかわからないディテールも多く、密なコミュニケーションが求められたのです。途中、フランス人スタッフから「なぜそこまでやるのか?」と何度も言われましたが、そこはNHKスペシャルとして放送する以上、譲るわけにはいきません。納得できる映像にたどり着くまで、すべてのカットにこだわって作業を進めていただきました。

カラーでよみがえる東京 photo09 カラーでよみがえる東京 photo10

カラー映像で振り返る先人の息吹

 実際にフィルムに色づけすると、人の肌が肌色になるだけで一気にぬくもりが増し、名もなき人々の存在感が迫ってきます。彼らの姿から、身近な人々を連想したり、過去とのつながりを感じたりできるのではないでしょうか。しかし同時に、後に起こる震災や戦争を知らない彼らの姿を見ると、悲劇そのものではなく日常が大きく断絶されてしまう残酷な現実に胸が詰まります。そんななかで、2度の焼け野原を経験しながらたくましく復興していった東京とそこに暮らす人々がどのように大きな苦難を乗り越えてきたのか。過去を振り返り再確認することで、脈々と続く日本人のたくましさやメンタリティーを感じていただけると確信しています。