■東京アーカイブ・NHKスペシャル
■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 1/5
■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 2/5.avi
■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 3/5.avi
■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 4/5.avi
■戦前の日本 昭和初期のカラー映像 5/5.avi
■後編「昭和の戦争と平和 ~カラーフィルムでよみがえる時代の表情~」
今から100年前、まして50年前と言えば、それほど遠い昔ではありません。当時を知る方も多くいらっしゃるでしょう。しかし残されている映像を見ると、白黒イコール遠い過去というイメージから、そこに映る風景や人々と自分自身との間に大きな隔たりを感じてしまいがちです。今回、記録映像の数々をカラー化することで、そうした時間感覚をリセットし、自在にタイムトラベルしているような番組を目指しました。その一方で、2014年という時代を印象づけるため、まるでスマホやタブレット端末の画面を指先で操作して映像に触れているような、ネット上の空間にいるような感覚を意識した演出を試みています。スペシャルサイトと併せてタイムトラベルをお楽しみいただければと思います。
番組で描くのは2度焼け野原となりながら、力強く復興してきた東京の激動の歩み。東京が舞台なら主人公は土地というわけで、場所の物語をつづることにしました。関東大震災や東京大空襲のとき、それぞれの場所がどんな姿だったのか。定点観測することで史実と同時に物語に富んだ街の映像が伝えられると考えました。スタートラインに据えたのは。「大正六年 東京見物」というタイトルの約100年前のフィルム。東京の主要スポット、丸の内、銀座、上野、浅草などが記録されたものでした。そうして、世界各地に眠る映像を掘り起こすとともに、NHKに残されているアーカイブス映像を加え、街の変遷をたどっていきました。
番組には多くの場所が登場します。かつての東京は浅草や日本橋など山手線の東側を中心に発展していたため、映像も多く残っていました。なかでも私自身の印象に残っているのは日本橋。明治時代に東京の威信をかけて作られ、今も変わらぬ姿でそこにあります。東京の100年を静かに見守ってきた日本橋には、関東大震災の爪痕や、東京大空襲時に落ちた焼夷弾の跡が残されています。東京オリンピックの時には、橋の上に首都高速道路が建設されました。まさに東京の近現代の歴史が刻まれたモニュメント。番組のなかでも重要な場所のひとつとなりました。
100年前の日本は大正初期。大正12年には東京の街並みを一変させた関東大震災が起こり、昭和に入ると満州事変、日中戦争、太平洋戦争へと深刻なニュースが相次ぎます。現代を生きる我々には、白黒の記録映像で見るような、どこか暗い時代のイメージがつきまとうのではないでしょうか。しかし、そうした歴史の一方で、東京ではモダン文化が花開いてもいたのです。今回のカラー化によって白黒では伝わらない東京の華やかさにも目を向け、光の部分を描くことで戦争が迫るシリアスな時代を立体的に描ければと思っています。
制作には約2年を要しました。まずは映像の掘り起しから始まり、白黒でおおまかなストーリーを制作。その後フランス パリのチームに持ち込み、1年かけてカラー化しました。その結果、出来上がったのは2時間弱およそ800カットの映像です。建物や洋服の色など、さまざまな資料を元にカラー化を行いましたが、苦労したのは着物の色でした。着物に精通したフランス人スタッフを加えて作業したものの、やはり日本人にしかわからないディテールも多く、密なコミュニケーションが求められたのです。途中、フランス人スタッフから「なぜそこまでやるのか?」と何度も言われましたが、そこはNHKスペシャルとして放送する以上、譲るわけにはいきません。納得できる映像にたどり着くまで、すべてのカットにこだわって作業を進めていただきました。