■秋田犬
※このページは、秋田犬保存会(以下、秋保という。)発行「秋田犬の栞」より抜粋した内容を掲載しています。
国の天然記念物6犬種の一つに選ばれた秋田犬が、いつの頃より当大館地方に棲息、飼育されたかはあまり詳かではないが、上代の狩猟(マタギ)には絶対に欠くことの出来ない伴侶であった。当秋田地方に出羽国が設置される頃から地域の開拓と鉱山の開発がすすみ、群雄割拠で戦乱がおこり、また他国人の流入は世情を不安にして、狩猟犬は番犬としても飼育されたのである。
徳川時代になってからは大きく強くなった番犬で闘犬が行われるようになり、明治後半期からは常設闘犬場が設けられ、大正期になってからは闘犬が興行化されて、種族的な犬質は愈々雑種化されていた。
このような時代、失われてゆく日本の伝統的名勝史跡及び動植物の天然記念物指定保存の世論がおこり、大正8年にその法律が制定し、秋田犬は再度の調査があって昭和6年7月、日本犬では最初に天然記念物に指定されたのである。天然記念物の指定と相俟って、秋田犬を著名にしたのは、昭和7年10月、朝日新聞紙上に忠犬として報道された 『ハチ公』 である。その記事は愛犬家は当然一般日本人の胸に深く感動を与え、秋田犬も広く脚光を浴びることになった。そうして大戦中の空白はあったが、戦後は順次に発展、犬質も向上して、現在は立派な秋田犬が全国各地で飼育されている。
秋田犬標準(審査基準)
1.本質とその表現
沈毅にして威厳を備え悍威に富み、忠順にして素朴の感あり、地味な中に品位を持ち、感覚鋭敏にして、挙措重厚敏活共に備う。
1.外貌
体躯均斉を得、骨格頑丈緊密にして筋、腱、靭共に発達し、皮膚弛緩なく牡牝の表示判然とし、牡は体高体長の比100対110に対して牝は牡より体高に比して体長稍長とし、体高牡66.7糎(2尺2寸)、牝60.6糎(2尺)とし上下各3.03糎(1寸)迄を可とす。体高胸深の比を略2対1とす。
1.頸
頸部太く逞しく、皮膚弛緩なく適度に起立す。
1.頭
頭骨大にして頭蓋の頂き稍平、額広く、皺なく、明らかなる縦溝と適度の落ち込みあり頬部良く発達し張る。
1.耳
稍小さく厚く三角形にして適度に前傾し、耳線直にして緊乎として立ち、耳の間隔は適当なる広さを有す。
1.眼
稍三角形にして深く、外眦上り虹彩濃茶褐色を呈し、眼は適度の間隔を有す。
1.口吻、鼻
鼻梁直にして、吻充実し、基は太く先は細く尖らず、鼻鏡緊り唇良く引緊る。
1.歯牙
歯牙強靱にして、咬み合わせ正しい。
1.胸腹
胸深くして肋骨良く張り、前胸発達し、腹部適度に引緊る。
1.背腰
背線直にして、腰強靱なり。
1.前肢
前肢は肩胛上膊適度なる角度を持ち良く発達し、肘付良く、前膊直にして太く強く、繋少しく傾斜し、趾円く大きく、厚味を有し緊握す。
1.後肢
後肢は良く発達し、強靱にして力強く踏張り、飛節適度の角度を持ち、弾捷力に富み、趾厚味を有し緊握す。
1.尾
太く力強く巻き、長さは略飛節迄とし、巻型は左巻、右巻、太鼓巻、二重巻とす。
1.被毛
毛剛直にして、下に綿毛密生し、キ甲部、臀部称長く、尾毛他部より長し。
1.毛色
白、黒、赤、胡麻、虎、斑。
1.本質とその表現
沈毅にして威厳を備え悍威に富み、忠順にして素朴の感あり、地味な中に品位を持ち、感覚鋭敏にして、挙措重厚敏活共に備う。
1.外貌
体躯均斉を得、骨格頑丈緊密にして筋、腱、靭共に発達し、皮膚弛緩なく牡牝の表示判然とし、牡は体高体長の比100対110に対して牝は牡より体高に比して体長稍長とし、体高牡66.7糎(2尺2寸)、牝60.6糎(2尺)とし上下各3.03糎(1寸)迄を可とす。体高胸深の比を略2対1とす。
1.頸
頸部太く逞しく、皮膚弛緩なく適度に起立す。
1.頭
頭骨大にして頭蓋の頂き稍平、額広く、皺なく、明らかなる縦溝と適度の落ち込みあり頬部良く発達し張る。
1.耳
稍小さく厚く三角形にして適度に前傾し、耳線直にして緊乎として立ち、耳の間隔は適当なる広さを有す。
1.眼
稍三角形にして深く、外眦上り虹彩濃茶褐色を呈し、眼は適度の間隔を有す。
1.口吻、鼻
鼻梁直にして、吻充実し、基は太く先は細く尖らず、鼻鏡緊り唇良く引緊る。
1.歯牙
歯牙強靱にして、咬み合わせ正しい。
1.胸腹
胸深くして肋骨良く張り、前胸発達し、腹部適度に引緊る。
1.背腰
背線直にして、腰強靱なり。
1.前肢
前肢は肩胛上膊適度なる角度を持ち良く発達し、肘付良く、前膊直にして太く強く、繋少しく傾斜し、趾円く大きく、厚味を有し緊握す。
1.後肢
後肢は良く発達し、強靱にして力強く踏張り、飛節適度の角度を持ち、弾捷力に富み、趾厚味を有し緊握す。
1.尾
太く力強く巻き、長さは略飛節迄とし、巻型は左巻、右巻、太鼓巻、二重巻とす。
1.被毛
毛剛直にして、下に綿毛密生し、キ甲部、臀部称長く、尾毛他部より長し。
1.毛色
白、黒、赤、胡麻、虎、斑。
減点
1.後天的損傷及び著しく栄養管理不良のもの。
1.秋田犬として好ましからざる毛色。
1.体色に副わぬ虹彩著しく淡きもの。
1.欠歯、乱歯及び切端咬合。
1.舌斑。
1.特に性質軟弱なもの(臆病、軽佻等)及び凶暴性のもの。
1.その他秋田犬として特徴乏しきもの。
失格
1.先天的に耳立たざるもの。
1.先天的に尾巻かざるもの。
1.先天的に著しく短毛及び長毛。
1.著しく下顎突出及び下顎後退し、噛み合せ不正なもの。
1.体色に副わざる鼻色(白は赤鼻を許容す)
1.陰睾。
1.その他秋田犬の特徴を欠くもの。
審査
以上が、秋保の標準である。この標準がいわば憲法の如もので審査の基本となる。細かい審査方針は別に審査部会で決定する。
本質的に良い犬が、部分的に外貌、体型が良くなかったりして、犬の本質と展覧会の成績は、必ずしも一致しない場合がある。本質と順位とが一致するのが理想であり、そうなるべきであるが、実際は犬のコンディション、リング態度等により、総合的に判定するからである。
いくら良い犬でも、病気、毛替期、又、管理の悪いときは、その持てる本質を充分発揮し得ないし、本質的に悪い犬は、いくら最良のコンディションでも、その本質をかくし得ないので、成績の上位を占めることができない。
秋田犬は、昔から3年ならぬと本当の完成美が見られないといわれる。その頃から渋味のある古武士的風貌を呈する。幼犬、若犬時代良くとも、壮犬、成犬になるにしたがって悪くなる犬があるが、成犬になるにしたがって良くなる犬は本質の良い犬である。
しかし、幼犬時代から成犬時代まで一貫した良さを発揮するのが本当に優れた犬である。評価は、特優、優秀、準優、認定、失格の5段階である。本部展で、秋田犬の最高級の犬には「秋保名誉章」を授与する。
結び
以上、秋田犬に付いて概略説明したが、現在の統計によると、我国の蓄犬数の僅か4~5%が純粋犬と言われ、そのうち、また、何%かが秋田犬の数と思う。雑種犬を排し純粋で優秀な秋田犬を奨励、益々その向上を期し、将来世界の蓄犬界に進出しなければならない。