買い物送迎バス「じょいふる号」の運行を開始

■買い物送迎バス「じょいふる号」の運行を開始

鈴木宏子

 交通弱者や高齢者の免許返納が社会問題になる中、大型ホームセンター、ジョイフル本田(本社土浦市、細谷武俊社長)は2019年10月21日から土浦市全域で、同荒川沖店(同市北荒川沖町)の買い物送迎バス「じょいふる号」の運行を開始する。無料で利用できる。

同市在住の60歳以上の高齢者が対象。市内に52カ所の専用バス停を設け、各地区週2回巡回する。同店で1時間半か2時間、買い物ができる。

15日記者発表した細谷社長は「高齢者がタクシーで来店し、タクシーを待たせたまま買い物している場面を1度ならず2度見た。平日は家族が働いているので同居しているおばあさんは休日しか買い物に行けないという話を社員から聞いた」と話し、「荒川沖店は1976年に第1号店としてオープンし現在店舗面積は30倍になった。

 43年間育てていただいたお客様に何かお役に立てないか、恩返しをさせていただきたい」と運行の理由を説明した。

運行に協力する市社会福祉協議会会長の中川清市長は「空き家、空き店舗、それに伴うバス路線の減少が顕在化している。無料買い物バスの運行は、福祉と産業の領域を超えてつながった時宜を得た社会貢献。順調に発展することで高齢者の免許返納のきっかけにつながるのでは」などと意義を語った。


運行を支援する土浦市社会福祉協議会会長の中川清市長(左)と共に記者発表をするジョイフル本田の細谷武俊社長=15日、土浦市大和町、ウララ2ビル内、市総合福祉会館内

▶︎カラオケセットも装備へ

 バスは27人乗りのマイクロバス。1台が月曜から土曜日まで週6日、午前と午後、市内6地区を回る。住民は地区ごとにそれぞれ週2回利用できる。バス停は設置しないが、市社協が交流会や食事会などを開催する際、送迎バスの乗降場所としている箇所を専用バス停とする。ペットもケージに入れれば同伴できる片道利用や途中下車はできない。

利用者にはポイントサービス「Tポイント」を通常の買い物の3倍進呈する。さらに近々、車内にカラオケセットを装備して、行き帰りの中で楽しく過ごしながらコミュニティを育んでもらえるようにする。

3カ月間を試験運行期間とし、利用者の要望などを聞いて、運行コースやバス停、運行台数などを見直す。1便10人前後、1日平均20人程度の利用を想定している。

同店は今年8月から、65歳以上の市内在住者に、買い物金額に応じて乗り合いタクシーの利用割引券を提供している。無料買い物送迎バスの運行は、第2弾の高齢者の買い物支援となる。

一方、同市内では昨年11月から、12の高齢者福祉施設が送迎バスの空き時間を利用して、交通手段が乏しく買い物が困難な高齢者を対象に月1回、地域のスーパーに無料で送迎する「買い物支援サービス」を実施しており、現在28人が利用している。市社協によるとジョイフル本田のバス運行は市内で2例目になるという。

高齢者の買い物支援の過去記事

【谷島英里子】交通手段が乏しく買い物が困難な高齢者を無料で送迎する「買い物支援サービス」=10月30日付け=の利用が21日、土浦市内で始まった。市内34の福祉施設で構成する土浦市民間社会福祉施設協議会の取り組みで、利用者からは「車で安全に行けるので助かる」と好評だ。

 利用したのは、同市南部の土浦三中地区にそれぞれ1人で暮らす98歳と82歳の女性2人。98歳の女性は、野菜は宅配サービス、肉は近くの精肉店を利用するが、魚屋が近くになくて困っていた。自転車で近くの店まで行っていたが、体力が衰え、別居の子どもに心配されていたという。回覧板でサービスを知り、自ら申し込んだ。

 午後1時30分すぎ、買い物を支援する特別養護老人ホーム「もりの家」のワゴン車が各家に到着すると、「ありがたいですね、待っていました」と一言。車には市社会福祉協議会ボランティアの櫻井忠男さん(77)が添乗し、スーパーで何を購入したいかを話すなど和やかな雰囲気となった。約1㌔離れたスーパーに到着すると、軽快な足取りで約30分間、買い物を楽しんだ。

 利用した2人は「車が自宅に来るので安全で助かる。また利用したい」「初めて行ったスーパーだったのでどこに商品があるのか戸惑ったが、他の店と違うお薦め商品を見つける楽しさにつながる」と満足した様子だった。

 市社協によると、11月に入り回覧板でチラシを配布したところ、数件の問い合わせがあった。今後は、各中学校区にある公民館の市社協職員(地域ケアコーディネーター)や地域の民生委の協力で高齢者に利用を呼びかけていく