遺伝子組換え作物

■遺伝子組換え作物は世界の食糧供給に役立つでしょう 

 2050年までに、地球上の人口は現在より50%増加して、90億人になると言われています。この増加のほとんどは、主にアジアの発展途上国の都市で起こると考えられます。現在の経済発展が続けば、人口増加に見合うためには、食糧生産を倍増する必要があります。今後必要な食糧を考えると世界の穀倉地帯ではそのほんの一部しか生産できません。必要な食糧の大部分は現地で生産する必要があります。食糧供給の問題の一因は農地の不均等分布にもあります。たとえば、中国の人口は世界の4分の1を占めるにもかかわらず、農地は世界の農地の7%しかありません。

 1960年の30億人から2000年の60億人までに人口が倍増しましたが多くの新たな技術が開発、適用されたため、食糧供給が人口増加に追いつきました。優れた耕作技術、新しい潅漑技術、生物分解性の優れた農薬、品種改良、収穫効率向上のための機械設備、化学肥料、栄養分を土に戻す方法、など全てが食糧増産に役立ちました。

■遺伝子組換え作物は問題解決の一手段に過ぎません

 遺伝子組換え作物は、世界の食糧問題を解決する魔法の薬では無いかもしれません。しかし、たゆまない作物の品種改良の延長線上にあり、間違いなく役に立ちます。よく言われることですが、私たちはこの技術を否定するわけにはいきません。むろん、その他の技術革新も必要です。もっと永続的に効果のある病虫害に対する抵抗性、水の無駄を減らした濯概設備、傾斜地の土壌侵食を抑える栽培方法などが必要です。微生物の力を最大限に引き出す良い土作りのための耕作、施肥、輪作の方法をあみ出す必要もあります。明らかにしなければならないことが非常に多くあります。

 遺伝子組換え作物によって貧困や飢餓を撲滅することはできません。それは、これらの問題が社会的、政治的な要因によるものだからです。人々は食糧を買うために仕事を必要とし、経済的需要により食糧生産が向上します。実は今のところ飢餓を解消するのに十分な食糧が地球規模では生産できていますが、食糧を無駄なく分配できる経済システムがいまだ考案されていないことが問題です。

 技術(テクノロジー)というものは常に良いことばかりではありません。特に導入当初はそうです。自動車は大気を汚染し、人々は事故で亡くなりますが、自動車が要らないと思う人はほとんどいません。農業に関する技術にも負の部分はあります。それをより良いものにするには私たち人類の創意工夫が必要です。ジミー・カーター元大統領は含蓄のある言葉を残しています。「信頼できるバイオテクノロジーは敵ではない。飢餓が敵なのだ」と。