OECD調査にみる日本の教育の現状と課題
■OECD調査にみる日本の教育の現状と課題
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに期待が高まる少人数学級や、小中学生に1人1台の端末を配布する「GIGAスクール構想」。今秋、OECD(経済協力開発機構)が公表した国際調査の結果から、日本の教育の現状と課題を探った。
OECDは、Organisation for Economic Co-operation and Development の略称で、日本語で経済協力開発機構といいます。OECDは、国際経済全般について協議することを目的とした国際機関で、「世界最大のシンクタンク」とも呼ばれています。
OECDの目的は何ですか?・・・OECD条約には、1)経済成長、2)開発途上国援助、3)多角的な自由貿易の拡大、の3つの設立目的が明記されています。
その後、国際社会・経済が多様化するに伴い、OECDは上記3点に加え、環境、エネルギー、農林水産、科学技術、情報・通信、教育、医療、投資、金融、高齢化、税金、年金・健康保険制度、競争政策といった経済・社会の広範な分野で積極的な活動を行っています。
OECDが9月に公表した2020年版の「図表でみる教育」によると、18年の日本の1クラスあたりの児童生徒数は、小学校27人、中学校32人。一方、OECD加盟国の平均は小学校21人、中学校23人だった。
加盟準備中を含む38カ国のうち比較可能な国のなかでは、日本はいずれも2番目に多かった。小学校では日本、チリ、イスラエル、英国以外の国が25人以下だった。中学校では、コスタリカと日本だけが30人を超えた。
OECDは、学級規模と学力の相関については否定的な立場をとりつつ、少人数学級のほうが子どもと教員の対話が進むメリットがあるとしている。
新型コロナウイルスの世界的な流行によって、20年前半には各国で休校措置がとられた。OECDの分析によると、1クラスあたりの児童生徒数が少ない国では、学校の再開が容易だったという。子ども同士の距離を保つため、フランスや英国の小学校では1クラスあたりの上限を15人とすることが推奨された。アイスランドの小学校は1クラスあたりが20人以下なら授業を継続することができた。
日本の文部科学省は新型コロナウイルス対策を強調し、よりきめ細かな指導も可能になるとして、現行の上限40人から段階的に引き下げたい考えだ。教育現場からも教員の負担軽減につながるとして、少人数学級を求める声が高まっている。だが、教員の増加による財政圧迫を懸念する財務省は、少人数化による効果が実証されていないとして、認めないという立場をとっている。
■ICT教育、指導力向上が課題
文科省は小中学生全員に端末を1台ずつ配る「GIGAスクール構想」を推進する。約4300億円をかけ、目標を3年前倒しして今年度末までの配備を目指している。
OECDが19年に公表した調査からは、端末を使って教える側の課題が浮き彫りになった。調査結果によると、中学校の授業などで生徒にICT(情報通信技術)を「いつも」もしくは「頻繁に」使わせている教員の割合は、OECD平均が約50%だったのに対し、日本は20%以下。調査対象国では最低水準だった。
別の調査では、学校長が教員がデジタル端末を授業に取り入れるための「十分なスキルがある」と答えた学校に所属する生徒の割合は、OECD平均が65%だったのに対し、日本はとくに低い27%。「十分な時間がある」と答えた学校に所属する生徒の割合も、OECD平均が61%だったのに対し、日本はわずか12%だった。
こうしたことから、文科省は教員の指導力向上を急ぐ。「1人1台端末」の初年度となる21年度に向け、今年9月にはICTを活用した各教科ごとの授業例をまとめた。「録画機能を活用して、自分や友達のスピーチをよりよいものにする」(小学校国語)、「国内外のデータを加工して可視化したり、地図情報に統合したりして、深く分析する」(地理歴史)などの事例を紹介。教員向け動画を作成し、ユーチューブで公開している。
■事務・会議…教員に負担
長時間労働のわりには、授業で生徒に接する時間は短い。OECDの調査からは、そんな日本の教員の働き方も見えてくる。比較可能な最新の調査によると、日本の中学校の教員の年間の総労働時間は、ドイツとほぼ同水準。だが、授業時間は日本の方がドイツよりも少なく、総労働時間が少ないフランスやオランダよりも下回った。
他国に比べ、事務作業や会議や打ち合わせ、生徒指導、部活動の指導などの時間が長いことが背景にあるとみられる。新学習指導要領への対応や、新型コロナウイルス対策などが求められるなか、教員の負担を減らすための実効性のある策が求められている。
Top