がんゲノム情報管理センター(C-CAT)

■ゲノム情報の管理

 わが国の保険診療として行う遺伝子パネル検査の結果と、付随する臨床情報は、患者さんの同意に基づき、「国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)」に集められ、大切に保管されます。その情報は、ご本人の今後の治療や診断のみならず、ほかの患者さんのよりよいゲノム医療のためにも、貴重な基盤データとなります。また、適切・公平な手順で、国内外の研究者による、がんの新しい治療開発などの研究のためにも活用されます。

▶︎ゲノムとは、遺伝子とは

1)ゲノムとは

●ゲノムとは、遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味します。

 私たちの体は、約37兆個もの細胞からなっています。細胞の中には「」と呼ばれる大切な部分があり、その中に遺伝子を乗せた「染色体」が入っています(図3)。ゲノムとは、染色体に含まれるすべての遺伝子と遺伝情報のことです。
染色体を構成する重要な成分が「DNA」で、DNAは4種類の「塩基」と呼ばれる分子のブロックが一列に並んでできている長い分子です。この4種類の塩基の並び(「配列」といいます)が、単語や文章のように決められた意味をもっていて、私たちの「遺伝子」の情報(遺伝情報)を構成しています。

図3 ゲノムと遺伝子

図3 ゲノムと遺伝子

2)遺伝子とは

●遺伝子は体をつくるための情報の1単位です。たくさんの遺伝子があり、それぞれ遺伝子の機能は異なります。

 遺伝子は、染色体の一部です。1人のゲノムには約2万~3万種類の遺伝子が含まれているといわれており、遺伝子ごとに、体をつくるためのさまざまな機能があります。

 ヒトのゲノムは両親から受け継いだ62億個もの塩基が並ぶ、塩基配列で表されます。一部の塩基配列が異なることで、一人一人の個性が生まれます。これにより外見や性格、病気のなりやすさ、薬の効き方、副作用などが人によって違ってくると考えられています。

 こういった塩基配列の違いは、「生殖細胞(精子、卵子)」を介して親から子に伝わります。一方、環境や生活習慣や加齢などによって体細胞(体をつくる細胞)の一部に塩基配列の違いが起こることもあります

3)がんとゲノム・遺伝子

●がんは、ゲノムの変化によって起こる病気です。

 がんは、ゲノムの変化に伴って塩基配列の違いなどが生じ、遺伝子が正常に機能しなくなった結果、起こる病気です。

 ほとんどのがんは、喫煙や生活習慣、加齢などが原因となり、正常な細胞内の特定の「体細胞」の遺伝子が後天的に変化(変異)することによって、がん細胞が発生します。がんが進行していく際には、がん細胞においてのみ生じたこの遺伝子変異が、進行・増殖のもととなると考えられています。このようながん細胞にだけ起きた遺伝子変異は、次の世代に遺伝するものではありません。

 一方で、がん細胞以外の、全身の正常細胞に含まれている遺伝子に、生まれつき存在する変異が主な原因となって発病するがんもあります。これらは、がん全体の5%程度といわれる遺伝性腫瘍(家族性腫瘍)と呼ばれます。精子や卵子の生殖細胞の遺伝子にも存在する変異なので、親から子へ遺伝する可能性があります。