前立腺の病気
■前立腺肥大症とは No.1
前立腺に起きる病気のなかで、最も患者数が多いのは、前立腺肥大症です。昔から珍しい病気ではありませんでした。
中年期以降の男性の尿トラブルの原因の多くは、この前立腺肥大症からくるものです。 前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなる=肥大する病気です。肥大するのは、前立腺の中心部に近い尿道周辺の移行領域です。
移行領域が肥大して問題になるのは、移行領域が尿道を囲むようにしてあるためです。この部分が肥大すると、尿道が圧迫されて狭くなり、尿が出にくい、残尿感、頻尿、尿閉などのさまざまな尿トラブルが起きてきます。生活の質にも影響があります。
困ったことに、前立腺は年齢とともに少しずつ肥大してくることが多いからです。前立腺の肥大は、50〜60歳代では約50%、80歳代では80%の人に認められます。
ただ、前立腺が大きくなっても、必ずしも前立腺肥大症というわけではありません。
前立腺肥大症は、前立腺の肥大に加えて、尿のトラブル(下部尿路症状・26頁参照)や下部尿路閉塞の症状が現れたときに、病名がつきます。 しかし、年齢とともに発症しやすくなるという病気の特性上、65歳以上の人口が、全人口の25%を超えようという超高齢化社会の日本では、今後ますます増加することが予想されています。それでは、なぜ加齢により前立腺が肥大してしまうのでしょうか。
▶︎血液を採取して「PSA測定」と「クレアチン測定」
血液を採取して成分を検査することで、前立腺の病気について調べられます。「PSA(前立腺特異抗原)測定」と「クレアチニン測定」です。
PSA測定とは、血液中にPSAがどれだけ含まれているかを調べるものです。
PSAは、前立腺で分泌され、前立腺液の成分になる糖たんばく質の一種です。がんや炎症で前立腺の組織が破壊されると、血管内に大量に流れ出します。つまり、血液中にPSAが多ければ、前立腺にがんがある疑いが高くなるということです。PSAは、がんの有無や勢いを推しはかるための腫瘍マーカーの1つです。
PSAは「前立腺特異抗原、prostate-specific antigen」の略語で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクです。多くは精液中に分泌されますが、ごく微量が血液中に取り込まれます。検診などの血液検査で、しばしば今回のように「PSAが高い」と指摘されることがあります。近年、健康診断、人間ドック、かかりつけの先生のところでの検査など、PSAをチェックする機会が増えています。一般的には基準値を超える場合、すなわち4ng/mL以上になった場合に「PSAが高い」と言われます。また、若い方の場合には、基準値を3ng/mL以下などのように低く設定する場合もあります。
PSAは、前立腺がんのほか、前立腺肥大症や前立腺炎でも血液中に放出されます。PSAは前立腺の病気を見つけるのに、とても役立つ検査なのです。
PSAの値が4.0ng/mL以下で正常、4.1〜10.0では軽度上昇で何らかの前立腺の病気が疑われます。10.1〜20.0ng/mLでは中程度上昇で、前立腺がんが疑われ、20・1ng/mL以上の高度上昇では前立腺がんが強く疑われます。
クレアチニン測定は、筋肉の代謝に伴って産生されるクレアチニンの量を測るものです。 クレアチニンは、健康な男性では0.61〜1.04mg/dLほどが含まれているのですが、腎機能の低下などにより、血液中に増加します。前立腺の肥大や多量の残尿が腎機能障害から起きていることもあります。
ただ、クレアチニンの血中濃度は筋肉量の影響も受けるので、スポーツ選手などでは腎臓に問題がなくても高めの数値になることがあります。
実は、PSAの数値も単純に高い低いで判断できず、注意が必要です。次項で、正しい数値の見方と考え方について詳しく取り上げましょう。
▶︎PSA値の正しい見方と考え方
PSA検査は腕から血液を採取して成分を検出して行います。前立腺がんの疑いがあるかどうかを簡単に調べられます。
健康診断の検査項目に入っていることもあり、費用も比較的かからないため、多くの人が受診しており、前立腺がんの早期発見に役立っています。
ただし、PSA検査には、いくつかの注意点があります。 まず、検査でPSAの数値が高く出たとしても、その段階では必ずしも前立腺がんとは限らないということです。
PSAの値は、加齢に伴って、健康な人でも少しずつ上昇するものです。これは、前立腺が少しずつ肥大していく影響によるものです。 また、前立腺肥大症や前立腺炎など、ほかの前立腺の病気や尿閉でも、PSAの値が高くなることがあります。直腸診の後も数値が高く出ることがあります。逆に、PSA検査で異常がなくても、前立腺がんである場合もあります。さらに、前立腺肥大症の薬物治療のなかには、PSAの数値が下がるものがあります。
つまり、PSA検査は前立腺がんを見つけるために非常に有効な検査ですが、数値と前立腺がんが必ずしも結びつくものではないと考える必要があります。
では、PSA検査はどのように受けたらよいのでしょうか。
一般的に50歳を過ぎたら、家族などに前立腺がんの人がいる場合は、40歳代からPSA検査を受けるようにします。そこで数値が低ければ2~3年に一度、高めであれば年に一度は受けるようにします
▶︎PSA検査・・・萩原 明(萩原同仁クリニック)
近年欧米並みに罹患率(りかんりつ)が高まりつつある前立腺がんですが、PSA検査は前立腺がんを判断する最初の基 準として非常に有効です。血液検査だけで測定できる ため、最近では集団検診でも広く用いられています。
ちなみにPSAとは健康男性の前立腺から分泌される タンパク質で、通常は血液中に流入する量はごくわず かです。
しかし、前立腺の疾患などによって浸出量が 増加するために検査値が上昇します。PSA値が高け れば高いほど、前立腺がんの確率も高くなります。年 齢にもよりますが、約4.0ng/mL程度からがんの疑いが強 くなります。4.1~10ng/mLはグレーゾーンと呼ばれ、が んの危険性は20~30%、さらに10.1ng/ml以上の方の約 50%にはがんが存在すると言われています。
ただし、PSA値の異常が必ずしも前立腺がんの存在を示すとは限りません。前立腺肥大症、前立腺炎、 射精直後や激しい運動の後にも異常高値を示すことが 知られています。それ故、あくまで前立腺がんを発見 するきっかけとなる一つの基準と考えるべきです。前立腺がんは中年以降に多い病気です。積極的に定 期健診でPSA検査を受けるべき年齢は50歳が一つの 目安となります。しかしながら、ある程度の遺伝性が あるとの報告もありますので、家族や親族に前立腺が んになった人がいる場合には、40歳以降には年に一回 程度のPSA検査は受けた方が良いでしょう。
もしも、PSA検査に異常がみられた場合、本当にが んがあるのか?また、がんが存在したとしても、その悪 性度や進行の程度まではPSA値のみの結果では判り ません。
まずは泌尿器科を受診して、肛門から指を入れる直 腸診で前立腺の状態を調べてもらうことが大切です。 そして、超音波やMRIなどの検査で、がんが疑われれ ば、組織片を調べる前立腺生検で確定診断をつける必 要があります。
前立腺がんに限らず、すべての疾患に共通すること ですが、まずは定期健診を受け、病気の早期発見に努 めることが重要です。
前立腺がんは中年以降に多い病気です。積極的に定期健診でPSA検査を受けるべき年齢は50歳が一つの 目安となります。しかしながら、ある程度の遺伝性が あるとの報告もありますので、家族や親族に前立腺が んになった人がいる場合には、40歳以降には年に一回 程度のPSA検査は受けた方が良いでしょう。
もしも、PSA検査に異常がみられた場合、本当にが んがあるのか?また、がんが存在したとしても、その悪性度や進行の程度まではPSA値のみの結果では判り ません。
まずは泌尿器科を受診して、肛門から指を入れる直腸診で前立腺の状態を調べてもらうことが大切です。 そして、超音波やMRIなどの検査で、がんが疑われれ ば、組織片を調べる前立腺生検で確定診断をつける必 要があります。
前立腺がんに限らず、すべての疾患に共通すること ですが、まずは定期健診を受け、病気の早期発見に努 めることが重要です。
▶︎前立腺肥大症が疑われたときに行う検査
前立腺肥大症が疑われる場合、必要に応じて「尿流動態検査(ウログイナミクス検査)」「膀胱尿道内視鏡検査」を行うことがあります。実際に受ける患者さんはそれほど多くはありませんが、尿路の閉塞程度を調べるものです。
尿流動態検査は、蓄尿時と排尿時の膀胱の様子と尿道の働きを測定して記録する検査です。これにより、どこに障害があって排尿のトラブルが起きているのか、より詳しく知ることができます。
具体的には、「膀胱内圧測定」で膀胱の蓄尿機能、「尿道括約筋璧屯堅で尿道括約筋の活動、「尿道内圧測定」で蓄尿時の尿道の締まり方、「内圧尿流検査」で排尿するときの排尿筋の収縮と前立腺部尿道の閉塞の様子、残尿量測定(p44参照)などを同時に測定して、排尿の状態を正確に調べます。
膀胱尿道内検査は、尿道から内視鏡入れて、尿道と膀胱内を観察する検査です。
検査に使われる内視鏡は、6㎜、長さ30㎝ほどの棒状です。最近では、より柔らかいファイバー製の内視鏡も使われます。
検査の際は、観察しやすいよう監肌を生理食塩水仙局所麻酔をして、潤滑剤も使用しますが、男性の州尿道は長いため、軽い痛みを感じる人もいます。内視鏡で観察した映像は、撮影もできます。尿道内を直接見ることで、尿道の閉塞状況などが正確に把握できます。
▶︎No.2 へ続く
Top