0自治会は今

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■(フォーラム)どうする?自治会・町内会:1 自治会は今

 今回のテーマは「自治会・町内会」です。朝日新聞デジタルのアンケートには、中高年の男性を中心に多くの意見が集まっています。交流や防災に期待する一方、行政とのかかわりや人間関係に悩む声もあります。「PTAと同じ問題を抱えている」と指摘する読者も交えて、これからの自治会・町内会のあり方を考えていきます。

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■災害時、「近所」が大切

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 自治会・町内会は何のためにあるのか。アンケートに多くの人がその意義、悩み、不満を書いています。

 ●「むこう三軒両隣は日本の良き生活習慣であり、家庭<町内<地域とエリア拡大する中に人的つながりや生活空間があり、ひいては地域の歴史文化継承などその役割は大きい」(大阪・60代男性)

 ●「大事なのは自治会は最小の住民自治組織であり、普段の生活に密着した活動を行う組織であるということです。人が人として生きていくためには、人との関わりが重要ですし、人との関わりが自らの地域を治めるという『自治』の根幹にあるからです」(岐阜・60代男性)

 ●「SNSを通したつながりで不足を感じない世代が増えていく中、リアルなつながりを求める人は減っているのでしょうか……近年の犯罪はコミュニティーの弱体化が関係するような事件も多いように感じています。リアルな人間関係は面倒も多いですが、メリットの方が多いと感じる40代です」(東京・40代女性)

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■ <小学生の下校、見守り>

 ●「町内会や自治会に参加するといろいろな出会いがありそこからつながりができる。『孤独死』にならないためにも自治会や町内会にかかわることは必要であると感じている」(新潟・20代男性)

 ●「小学生の下校時に、子どもたちを地域の方たちが見守ってくれてとても助かっています。また防犯灯の設置も自治会でおこなっており、暗がりが少なく安全面からも安心して暮らしています」(沖縄・40代男性)

 ●「災害等が発生した時の対応で国や行政に頼り過ぎの感が有る。基本は、自分の命は自分で守る『自助』。高齢者や、体の不自由な方は、周りの人が助ける『共助』。その上で国や行政の『公助』。国や行政もすぐには対応が難しいだろうから、そこで大切になるのが『近所』。町内会等の組織だと思う」(東京・50代男性)

 ●「人間関係が煩わしい」(茨城・50代男性)

 ●「入会していないと安心して暮らせない(嫌がらせなどがある)のが問題」(滋賀・20代男性)

 ●「災害時の避難だけが心配で加入している人がほとんど。爪はじきにされたくないという日本人気質」(神奈川・40代女性)

■<行政の下請けですか>

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 ●「行政が何をしているのか分かりにくい。それを一つでも聞きに行けること」(兵庫・60代男性)

 ●「行政からの配布物の多さ。計画的でないメール便での送りつけ。必要な配布物もあるのでしょうが個人的にはほとんど目を通していません。何でもとりあえず回覧にしておけばそれでことが足りているというお役所仕事の出先機関にしかとれない」(京都・50代男性)

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 ●「行政からの下請け事業が多すぎる。地域の課題は地域住民でないと気付かない部分も多い。つまり、地域の課題は、地域ごとに違うはずである。にもかかわらず、行政からの下請け事業で終始していて、本来の目的であるはずの住民自身による課題解決について手付かずのまま1年が終わり、その繰り返し」(福岡・40代女性)

 では、自治会・町内会は何をしていて、何が課題なのか。あす、引き続き、みなさんの声を紹介します。

■つきまとう任意加入の問題

 自治会・町内会とは、ある区域に住む人たちが、親睦や住民自治のためにつくる団体です。つくる、つくらないは住人の自由で、加入するのも強制ではありません。「自治会」「町内会」の他に、「区」「区会」「部落会」などの呼び方があり、構成単位はマンション1棟から小学校区よりも広いものまでさまざまです。総務省によると、団体数は全国で約30万にのぼります。

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 自治会の起源は地域ごとに異なりますが、1940年には国が戦争遂行のための末端組織として整備しました。47年、GHQが解散命令を出しましたが、52年にサンフランシスコ講和条約が発効すると、各地で再結成されました。

 マンションの管理組合と混同されることがありますが、管理組合は建物や共用スペースを維持・管理することが目的で、原則的に所有者全員が加入します。管理組合によっては自治会の役割を担っているケースもあります。でも、自治会はあくまでも任意加入のため、管理組合費のように自治会費の支払いを強制することはできません。

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 それでも、任意加入の問題がつきまといます。以前、フォーラム面で取り上げたPTAについても、同様の指摘がありました。

 そもそも、多くの自治会には、退会の規定がありません自治会を自由に退会できるかどうか、裁判で争われたことがあります。公営団地の自治会について、最高裁は2005年、「強制加入団体ではない」と判断しています総務省も「必ず入らなければいけないものではない」との立場です。

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 ところが、実際は全員加入が原則となっているため、「加入しない」「退会する」という選択はとても大変なようです。「みんながやっているのに、あの人はやらない」という批判を受けることになります。例えば自治体がごみ集積所の設置や管理を自治会に委託していることがあります。そんな場合、「会員以外はごみを捨てるな」と言われるケースもあります。(田中聡子)

■運営・会計にひずみ? ある読者が感じた疑問

▼今回のテーマ「自治会・町内会」は、読者の提案をもとに選んだものです。

 フォーラム面を中心に4月から5月にかけ、PTAについてみんなで考えたときのことです。PTAに関する切実な意見に交じって、同じような問題を抱える自治会についても取り上げて欲しいという要望、意見がいくつか寄せられました。

 ともに考え、議論し、一緒に新しいニュースを探るのが、フォーラム面の狙いです。提案を、そのままテーマにして議論しよう、という流れになりました。

 意見を寄せてくれた一人が、兵庫県姫路市の事務員、水本雅子さん(57)です。メールでの意見投稿だったため、連絡をとることができました。

 PTAへの意見募集を目にして、自治会についての「モヤモヤした気持ちを何とかしたい」とメールしたそうです。「自治会組織も運営が民主的ではないところがまだまだあるのではと思います」。そうメールには記されていました。

 読者の代表として企画に参加してくれませんか。疑問について詳しく説明してください。そう依頼し、何度かのやりとりの後に了承してもらいました。

 取材班ができて、9月中旬、東京と大阪の朝日新聞社をつないだテレビ会議の打ち合わせを開きました。水本さんは大阪側に参加してくれました。

 自治会について考えるようになったきっかけは、勤務先の事業所が会員になっている兵庫県三田市の自治会の運営について疑問をもったからだと話してくれました。

 1年半ほど前、事業所に自治会から10万円の請求書が届きました。経理などを担当していた水本さんは中身について尋ねたそうです。自治会側からは、「1年分の会費で払ってもらうことになっている」と伝えられるだけでした。

 市の担当者にも聞いてみましたが、納得できるような回答は得られなかったといいます。

 自治会の運営には会員が主体的にかかわるはずなのに、みんなで話し合っていない前年やっていたことを続けると支出は同じだけかかるのに、人口が減れば収入は減る――。水本さんは、「運営や会計のあり方に、ひずみが出てきているのかなと思った」と言います。

 他の自治会はどうなのか、インターネットで調べてみたところ、三田市にはホームページを立ち上げている自治会もありました。地域ごとにカラーがあり、意見がいろいろ言えるところもあるかもしれないと感じたそうです。活動に参加しないと「出不足金」をとられる自治会もあると知り、驚きました。

 一方、水本さんの住んでいる地域では、賃貸マンションの会員は、自治会の活動にあまり参加しない仕組みになっているそうです。それはそれで特別扱いされているようにも感じます。

 「自治会のことは、頑張ってやっている役員さんもおられるので、疑問に感じることをなかなか人に気軽に話せない」。テレビ会議で、水本さんはそんな思いも明かしてくれました。

 今回のシリーズには、これからも水本さんに参加してもらい、一緒に自治会について考えていきます。水本さんが疑問に感じた自治会の会計、運営や行政との関係については、今後、詳しく紹介します。(北村有樹子)

■あすも『自治会:2 老いる組織』

 ◇アンケート「どうする?自治会・町内会」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも受け付けています。