退会者に「ごみ出すな」

■(自治会は今・フォーラム4)退会者に「ごみ出すな」

 住民が集まって暮らしやすい街をめざす自治会。ところが加入しなかったり、異論を唱えたりすると、たちまち「組織」と「個人」の対立構図に陥ってしまうこともある。「地域のため」という言葉の背後で、いざこざは絶えない。

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 三重県鈴鹿市の男性(65)は、ごみを捨てるとき、いつも気まずい思いがする。ごみ集積所…

 住民が集まって暮らしやすい街をめざす自治会。ところが加入しなかったり、異論を唱えたりすると、たちまち「組織」と「個人」の対立構図に陥ってしまうこともある。「地域のため」という言葉の背後で、いざこざは絶えない。

 三重県鈴鹿市の男性(65)は、ごみを捨てるとき、いつも気まずい思いがする。ごみ集積所は自治会が管理しているが、男性は自治会に入っていない。「自治会を辞めたら、ごみを堂々と出せないなんて」と男性は憤る。

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■「半強制加入」

 自治会の予算の使い方などに不満があり、昨年退会した。間もなく、地区の連合会長から「辞めるなら、ごみは出すな」と電話があった。相談した市の担当者は「自治会の集積所が使えないなら、市の清掃センターに直接持ち込んでください」。センターまで車で約15分。事業者や個人が持ち込むごみで、混雑時は順番が来るまで30分以上待つこともある。「これじゃ行政による半強制加入。自治会に入っていようがいまいが、市のサービスは公平に受けられるべきだ」

 市によると、ごみ集積所は自治会や集合住宅単位など20世帯以上から置くことになっていて、戸別収集には対応していない。市廃棄物対策課の鈴木佳明課長は「戸別収集を認めれば、収集場所が一気に増えてしまう。自治会と話し合って折り合いをつけてもらうのが望ましい」と話す。

 生活する上で避けて通れない「ごみ捨て」は、自治会加入者に限定するのではなく、住民全体に保障されるべきではないのか。朝日新聞フォーラム面には「自治会をやめたら、ごみを捨てられなくなった」「相談しても市は『自治会と話し合って』と言うだけ」などの声が寄せられた。

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 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」は、市町村に一般廃棄物の収集や処分を義務づけている。環境省は、「ごみの集め方は市町村にゆだねている。自治会に入っていない家庭のごみも一般廃棄物であり、市町村に収集や運搬の義務が発生する」との見解だ。

■準会員制度も

 こうした中、「自治会に入っていないからごみが捨てられない」といった相談が寄せられ、対応に乗り出した自治体もある。栃木県市貝(いちかい)町は2014年に自治会に入っていない人のためのごみ捨て場を役場の駐車場に設けた。現在、21世帯が利用しているという。

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 また、鳥取県米子市が14年に実施した自治会アンケートでは、ごみ捨てだけのために加入する人を「準会員」とし、会費を減額している自治会が複数あった。

 入退会の自由をめぐり裁判沙汰になっているケースもある。

 兵庫県宝塚市の男性(53)は昨年6月、所属する自治会を相手に、入会届などを出していない住民も自治会員となっている入会方法を改めるよう提訴した。自治会は昨年5月、希望者は申し出れば退会できるようになったが、男性は一から会員を集め直すべきだという。「多くの人は、自治会にとどまるか、やめるかを考えず放置してしまう。そうすると結局、多額の会費を一部の人が握り、自治会の私物化につながる」と男性は主張する。

 一方、さいたま市西区の男性は昨年1月、自治会費と共益費の未納分、計3万円を支払うよう自治会から裁判を起こされた。不払いの理由は「自治会の会計に不正がある。領収証を見せるよう求めても開示されないから」とのことだった。

 これに対し、昨春就任した自治会長(81)は「自主防災会に自治会から年間50万円流れ、どう使われたのかも不明だった。ただ不正の追及と自治会費の問題は別。会費を払えば帳簿を閲覧してもいいが、不払いを宣言した人には見せられない」と応じなかった。男性は一審で敗訴したという。20121025165134

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