アスプルンドの作品を見ると20世紀前半に建築されたとは思えないフォルムです。言葉としてはモダニウムがぴったりなのですが、おそらく当時は見合う言葉が見当たらなかったかもしれません。時代背景としては、同時期にル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエが活躍していた時代なので、そうした近代建築の巨匠に影響を受けながら独自のモダニズムを貫いたのだと思います。 こうした時代を先取りしたかのような建築物は、北欧デザインにモダニズムをもたらしたわけで、その作品「北欧モダニズムの原点」とも言われます。
人間はかたちが発信する意味を知覚して無意識にふるまう。これをアフォーダンスという。認知心理学やインターフェースデザインではお馴染みのキーワードである。「与える/提供する」という意味の”afford”という動詞から来ており、環境が提供する意味や価値から人間の行為が導き出されることを指す。この椅子はまるで壁が自然にめくり上がったようなかたちをしている。どっしりと座るというよりも、軽く体重を預けるにふさわしい。事実この椅子をすわるのは、礼拝堂に移動するまでの間だけなのである。まったく角ばっていないのは、この部屋を訪れた人の心を傷つけまいとする配慮からだろう。滑らかな曲線は席を立つ人をするりと送り出す。
北欧デザインといえば、アルヴァ・アアルトやアルネ・ヤコブセンといった巨匠デザイナーが思い浮かびますが、そうした巨匠もアスプルンドの影響を強く受けています。アスプルンドの功績なくしては、現在のスカンジナビアンスタイルは成り立たなかったと考えられますし、彼をなくしても北欧デザインを語ることは出来ないほどの人物です。
■イェーテボリ裁判所の椅子
この椅子はイェーテボリ庁舎の裁判所を増築した時にデザインされました。
緩やかに描くアーチ状になった背もたれの曲線と一体になった後脚のラインが非常に美しく、現代的な洗練されたフォルムです。座面と背もたれのカラーを合わせたデザインは、一体感があってとても美しく、こうしたモダンな家具デザインは後の北欧デザインにも多大な影響を与えました。
■椅子「セナ」
1925年にパリ万国博覧会(アール・デコ博覧会)のスウェーデン館のためにデザインした椅子「セナ」である。この博覧会には、ル・コルヴュジェも「エスプリ・ヌーヴォー・パビリオン」を出展している。
■ベンチ
この椅子は、壁と同一の仕上げ材で、壁からうねり出たようなユニークなベンチである。この「森の火葬場」は、彼の「森の墓場」における最後の作品となりました。
■ロートアイアン
「神は細部に宿る」という言い方がある。森の礼拝堂には、レリーフのついた門がある。門をくぐると、周囲の樹木と同じ太さの純白の柱がある。そして鉄製の黒い製鉄の扉の穴鍵には首をかしげた髑髏(どくろ)のモチーフがある。目玉と鼻が鍵穴となっている。礼拝される人々に生と死への問いかけをしているような錯覚をする。
■その他のインテリア