■家族と法
家族と法は、相性が悪いと言われる。夫婦が相互に愛し合い、両親が慈愛に満ちた聡明な育児をすることが理想だとしても、法は、たとえば愛を失った配偶者に愛することを強制できない。しかし民法は、家族間の権利義務を定める。それはどのような内容で、どのような機能を果たすのだろうか。この講義では、それを考えてみたい。
150年前に明治維新を迎えた日本は、欧米諸外国との不平等条約を改めるために立法作業をすすめ、120年前に明治民法を立法した。「家」制度を定めていた明治民法が、個人の尊厳と両性の本質的平等を要求した日本国憲法に従って、70年前に大改正されて「家」制度が廃止され、現在の民法になったことは、常識として知られている。しかし現在の日本民法が定める家族法であっても、モデルにしたヨーロッパの民法とは相当に異なっていることは、それほど知られていない。日本家族法の特殊性とその抱える問題性を、比較法的な観点からも検討する。
※本講座は、2019年1月に開講した第1回、10月に開講した第2回及び2020年10月開講の第3回と同じ内容となり、課題の一部を変更しております。
第1週:日本家族法の成り立ちと特徴
- イントロダクション
- 家族に関する最近の最高裁憲法判例
- 日本人の法意識
- 徳川日本と明治維新
- 戸籍制度・登記制度の創設と明治民法の立法
- 戦後の民法改正
- 家庭裁判所の創設
- 戸籍制度とは何か
- 民法立法後の社会の変遷
- 日本家族法の特徴
第2週:婚姻と離婚
- イントロダクション
- 婚姻の存在意義
- 明治民法における婚姻法・離婚法と戦後の改正
- 婚姻の要件
- 婚姻の人格法的効果
- 婚姻の財産法的効果
- 日本の離婚法の特徴
- 裁判離婚
- 離婚の財産上の効果
- 離婚の身分上の効果
第3週:親子
- イントロダクション
- 親子法の規定
- 医学の進歩がもたらした新しい問題
- 親子関係存否確認請求訴訟と民法の親子関係訴訟
- 嫡出推定
- 嫡出でない子(婚姻外子)
- 一般養子
- 特別養子制度の立法
- 親権
- 子の引き渡し請求
第4週:相続
- イントロダクション
- 相続法とは何か
- 相続法の基本的な概念
- 日本相続法の展開と特徴~明治民法
- 日本相続法の展開と特徴~相続法の戦後改正
- 昭和55年相続法改正とその後
- 相続財産の取引
- 相続法改正の契機と過程
- 相続法改正
- 最後に
講師・スタッフ紹介
水野 紀子(みずの のりこ)
白鷗大学 大学院法学研究科教授(東北大学名誉教授)
1955年2月生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学助手、名古屋大学法学部助教授・教授、東北大学法学研究科教授を経て、2020年4月から現職。専門は、民法学。
民法の親族法・相続法領域について、母法と対比した日本法の特徴を考察するとともに、立法にも関与してきた。
主な著書
前提条件
特になし
課題内容
理解度確認クイズ(多肢選択):各2点×35問=70点
最終レポート:30点
修了条件
得点率60%以上
学習期間
4週間
参考図書・文献
今後も新規開講講座が追加されます。
また、再開講も随時行っていく予定ですので、ぜひ他講座にもご参加ください。東北大学サイエンスシリーズ・第1弾 解明:オーロラの謎
・第2弾 東日本大震災の教訓を活かした実践的防災学へのアプローチ ー災害科学の役割
・第3弾 銀河考古学入門〜銀河の形成と進化を辿る~
・第4弾 進化発生学入門-恐竜が鳥に進化した仕組み-
・第5弾 放射線安全社会入門~リスクの知見を暮らしに~
東北大学で学ぶ高度教養シリーズ
・第1弾 memento mori -死を想え-
・第2弾 男と女の文化史
・第3弾 家族と民法
・第4弾 社会の中のAI~人工知能の技術と人間社会の未来展望~
・第5弾 化粧で学ぶ心理学 (2022年1月開講予定)