FIVE-EYES

■ファイブ・アイズとは 英語圏5カ国で機密情報共有

▶︎ファイブ・アイズ

 米英などアングロサクソン系の英語圏5カ国によるUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組みの呼称。米英が立ち上げ、1950年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。米国以外は英連邦の構成国である。

UKUSA協定(ユークーサ・きょうてい、英:United Kingdom – United States of America Agreement)とは、アメリカ合衆国 (USA) の国家安全保障局 (NSA) やイギリス (UK) の政府通信本部 (GCHQ) など5カ国の諜報機関が世界中に張り巡らせたシギント (SIGINT) の設備や盗聴情報を、相互利用・共同利用する為に結んだ協定のことである。かつては秘密協定だったが、現在は条文の一部が公開されている。 なお、UKUSA協定グループのコンピュータネットワークはエシュロン (Echelon) と呼ばれている。

 米国を中心に「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集、分析しているとされる。参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用する。長らく公式に存在を認めていなかったが、2010年の関連文書の公開で活動の一端が明らかになった。

エシュロン(Echelon)米国を中心に、英国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの5か国で共同運営する通信傍受システム。 無線、電話、ファクシミリ、電子メール、各種データ通信を傍受し、米国のNSA(国家安全保障局)が一元的にその情報の収集と分析を行っているとされるが、米国政府は公式にはその存在を認めていない。

 日本は5カ国と安全保障面で協力を進めている。米国は、日米安全保障条約に基づく同盟関係に基づいて連携する。英豪などとの関係は「準同盟国」とも呼ばれ、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)などを結んでいる。

■機密情報共有、英が秋波  「ファイブ・アイズ」協力探る
▶︎中国警戒 日本、保秘強化が不可欠

 英国から日本に機密情報の共有拡大を働きかける動きが出てきた。米英など5カ国の枠組みである「ファイブ・アイズ」と日本の連携を強化し、中国の勢力拡大に対処する構想だ。日本側も歓迎する声が出ている。実際に運用するには民間企業を含めた保秘体制の整備が不可欠となる。

 ファイブ・アイズは、米英とオーストラリア、カナダ、ニュージーランド(NZ)の5カ国による安全保障に関する情報共有の枠組みを指す。通信傍受網で得た情報を協定に基づいて共有する。

 ファイブ・アイズとの連携論が浮上したのは7月下旬だった。河野太郎防衛相と電話協議した英議会のトゥーゲンハット外交委員長がツイッターで、日本を加える「シックス・アイズ」構想を話したと明らかにした。

 日本は以前から5カ国と情報交換をしているものの、枠組みに加わってはいない。より早い段階での共有や機密性が一段高い内容の意思疎通など協力拡大の余地がある。日本政府内には5カ国の協定に正式に加わらずに、実務上の情報共有を増やす方法も可能だとの見方がある。

 英国側が秋波を送るのは香港問題や新型コロナウイルスへの対応を巡り中国への警戒感を強めているためだ。英国は欧州連合(EU)から離脱したばかりで、ドイツやフランスとは別の連携相手を探す思惑がある。

 米国も民主主義国と中国包囲網をつくる方針を出しており、日本とファイブ・アイズの協力は時宜にかなう。米下院が2019年にまとめた報告書は情報共有の相手として日本とファイブ・アイズを同列に並べている。

 北東アジアに位置する日本には中国やロシア、北朝鮮に関する情報を期待する。国際的な情報戦略に詳しい日大の小谷賢教授は「ファイブ・アイズ日本の衛星情報近海で集める軍事情報に関心がある」と指摘する。

 日本の政府高官も「ファイブ・アイズへの参加は悪い話ではない」と前向きな反応を示す。信頼できる国と分担して情報収集する利点は大きい。日本側で機密を守る体制整備は課題となる。政府は、2014年に外交や防衛に関する秘匿性の高い情報を漏洩した人に厳罰を科す特定秘密保護法を施行した。2020年6月には特定秘密に指定できる情報の範囲を広げた。

 政府内の保秘体制が改善した一方で、民間企業を管理する法整備は整っていない。民間人も含めて情報漏洩の恐れがないと認められた人しか機密性情報を閲覧できない「セキュリティー・クリアランス(SC、適格性評価)」制度がない

 先端技術や通信分野など企業が秘匿性の高い情報を持つ機会は多い。経済安全保障に詳しい井形彬・多摩大院客員教授は「民間も対象に情報保護の環境を整えなければ信頼されない」と話す。

 情報収集体制の拡充も必要になる。日本で情報を集めるのは警察や公安調査庁、内閣情報調査室だ。米中央情報局(CIA)や英秘密情報部(MI6)に比べて「予算も人員も見劣りする」(政府高官)という