■60台の重機が動く「新国立」建設現場
山留め・掘削工事は終盤に、工程を一部前倒しで地下工事へ
空に向かって伸びたクレーンのアームの先端は、完成した新国立競技場の屋根の高さ(最高高さ49.2m)とほぼ同じになるという。プロジェクトの発注者である日本スポーツ振興センター(JSC)は3月24日、新国立競技場の建設工事現場をメディアに公開した。
上の写真は工事現場の東側から撮影した風景だ。撮影者の目線は完成時のスタンドの1層目と2層目の間にあるコンコースとほぼ同じ高さ。クレーンを設置した地盤面は、完成したフィールドからは70~80cmほど地下だ。今後はコンクリートの基礎を設置して、配管などを設置した後、土を盛って天然芝を養生する。
本体の建設工事は2016年12月から始まった。現在は約60台の重機で山留め・掘削工事を進めている。掘削工事は現場の北側を起点に、スタジアムの楕円に沿うように左右から同時進行で進めており、作業は終盤に差し掛かっている。
敷地内では350~400人の作業員が働いている。1日にトラック300台以上、3000~3500m3の建設発生土が運び出される。利根川の近くなど関東近郊に数カ所の建設発生土置き場があるという。
天候に恵まれたこともあり、これまでのところはスケジュールに遅れはない。工事現場の北西から東側を見ると、山留めの壁が整然と並んでいる様子が分かる。
地下工事の一部を先行
地盤の上に置くコンクリートの基礎は、作業効率を考えてプレキャスト(PCa)化している。大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体(JV)が作成した技術提案書では、工期短縮のために「スタンド部基礎躯体の7割以上をPCa化」と説明していた。
施工者の大成建設の山内隆司会長は、日経アーキテクチュア2016年2月11日号のインタビューで「自社でPC工場を持っている建設大手は当社だけ。基礎の梁から柱、梁、斜めの梁まで、できるだけPCa化を進めたいと考えている」と語っている。
スタジアムの地盤の上には約4000ピースのPCaコンクリートを並べる。コンクリート部材などを吊り上げるため、現場には100トン超のクレーンが11台導入されている。JSC新国立競技場設置本部の下野博史総括役は「何カ所も工事現場を経験してきたが、建築でこれだけ多くのクレーンが入る現場は初めてだ」と話す。
工事現場でプロジェクトの進捗を説明する日本スポーツ振興センター(JSC)新国立競技場設置本部の下野博史総括役。現在は350人ほどの作業員が働いているが「最大では3000人ほどまで増える」と話す(写真:日経アーキテクチュア)