ぐるぐる

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 世界とは、基本的に物体とそのまわりの流体(気体、液体)とで構成されていると、認知科学は教えてくれます。どんな生物も、そのように世界を認識けいるというわけです。僕らも、世界とはそのようなものだと普通に考えています。

 その時、物体と流体との関係を記述するために、さらさらとかねばねばとかぐるぐるといったオノマトぺが用いられます。

 流れには渦がともなうので、流休の粒子とは基本的にぐるぐると運動しているのです。ぐるぐるというと、求心的な螺旋運動を想像してしまうかもしれませんが、ランダムな渦の中て粒子が漂い、流されていく状態。これが世界の常態です。整然と流れているほうが、例外的なのです。

 整流状態の時、すなわち流れが整然としている時、ぱたばたれたさざ波が立ちま七渦が生まれると、ばたばたがぐるぐるに変化します。渦は、生物にとって、脅威であると同時に、さまざまな居場所を用意してくれる、有難い現象です。渦にのっていれば、動き続けながら、しかも知らない場所に流されることなく、同じ場所にとどまっていられるという利点もあります。仏教ではこのような状態を輪廻と呼びました。ぐるぐるとは輪廻でもあり、環境的に記述すればリサイクルでもあります。

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 民俗学者の折口信夫(1887−1953)は、日本の芸能を「まい」と「おどり」とに分類しました。「まい」はぐるぐるれた回転運動て「おどり」はばたばたとした上下運動だという、きわめて具体的な目のさめるような分類でした。折口は、そこに神が出現する際の、2つのスタイルを見出していたのです。僕は折口から建築が出現する際の作法を教わりました。

▶新津知・芸術館

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 中国・四川省の成都市新津、道教の聖地、老君山のふもとに立つ美術館。
箱としてのリジッドな美術館ではなく、老君山へと到る通、スパイラル状にぐるぐると聖地へと上昇する道として、すべての空間をデザインした。このぐるぐるした空間を、現地の瓦を用いて製作した半透明のスクリーンが、やわらかくくるんでいる。

 野焼きと呼ばれる原始的な製法で焼かれた現地の瓦は、寸法も色も安定しない
このざらざらな粗い瓦を、細いステンレスワイヤーで吊ることによって、ぱらばらとした軽やかな皮膜をつくることができた。ワイヤーの上端部のラインと下端部のラインとを回転させることによって、HPシェルの3次元面をこのスクリーンに与えることができた。

九州芸文館(本館)/   Kyushu Geibunkan Museum

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 低層の木造住宅が連なる九州の田園風景の中に、その屋根の群れに融け込むような、小さな屋根をもつミュージアムをつくった。まずミュージアムのヴォリュームを分割し、その分割した小さなヴォリュームが、中庭のまわりをぐるぐると回転するような、流動性の高い渦巻き状の全体構成とした

 それぞれのヴォリューム自体も四角いハコとならぬように、角形をしたぺらぺらな面の集合体としてデザインし、その三角形の面が、ある時は屋根、ある時は壁として、空間を囲い込んでいる。

ナンチャンナンチャン / Nangchang−Nangchang

 「以心伝心(ナンチャンナンチャン)」をテーマに、韓国の光州ビエンナーレに出展した竹の作品。通常、建築は動くことがなく、われわれがいかに動こうとも、それに反応することはない。「以心伝心」は、3cmにさいたやわらかな竹を用いることによって、われわれの動きに対して反応する、「しなやかな」建築である。

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竹の上を歩くと竹の洞窟がゆらゆらと揺れる

 具体的にはテコの原理を応用し、竹の上をわれわれが歩くと、グルリと曲げられた竹の先端が、われわれの頭の上でゆらゆらと動く仕組みになっている。竹のしなやかさを利用して、ぐるぐるした断面形状をつくることによって、このようなインタラクティブな建築が可能となった。ぐるぐるとまがる竹の洞窟の中を歩くと、洞窟自体がゆらゆらと動き、生物の内蔵の中のような、やわらかな存在として出現する。