ペらペら

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 生物はおどかされるのが嫌いでも威圧する物質は好きになれません。粒子を軽く、しかもやわらかくして、生物に対する威圧感(プレッシャー)を取り除いていこうとした時、線状に解くと、ヒモになってもじゃもじゃになっていき、面状に解くと、ペらペらになります。

 紙やETFEのような、極薄の素材を用いてぺらぺら感を達成することにも興味がありますが、重たくてマッシブだと思われていた石やコンクリートでも、取り付け方を工夫すればペらペらだと感じられます。逆に薄い素材を使っても、威圧感のある建築というのは山ほどあります。というか、経済性を追求して素材を薄くしながら、無理をして、重厚で威圧的な建築をつくるというのが、現代の典型的な建築のつくり方です。

 威圧感のない、やさしい建築をつくりたいと思ったら、大事なのは、エッジ部分の薄さで、エッジさえ薄ければ、根元の部分が厚くても、全体としてはぺらぺらな威圧感のないものとして、生物の身体は反応します。

▶セラミック・クラウド  /  Casalgrande  Ceramic  Cl0ud

 イタリア北部のレッジオ・エミリアのロータリーに立つモニュメント。この地はヨーロッパのタイル産業の中心地として知られ、そのタイルを用いてレッジオ・工ミリアならではのモニュメントをつくった。

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 通常、タイルを用いたモニュメントというと、ガウディの建築物のように、コンクリートの上に仕上げ材としてタイルを貼った、重たいものとなる。現在のタイルの強度を計り、タイル自体を構造として用い、要のようにばらばら、ペらペらてすけすけなモニュメントをつくった。

 縦糸として18mm∅のステンレスパイプを用い、横糸として60×120cm、厚さ14mmのタイル1052枚を用いたモニュメントは、タイルの角度を変化させることによって、光の角度によって、時刻によって、季節によって、まったく異なった存在として、イタリアの田園風景の中に出現する

マルセイユ現代美術センター/  FRAC  Marselle  

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 FRACは、既成の美術館を解体して、地域に開かれ、地域を活性化する文化施設を目的として1982年にフランス政府によって設立された。23の都市に処点がつくられ、フランス文化の新しいムーブメントの中心となっている。

 マルセイユでは、現代アートの若いアーティストが生活し、制作し、展示するための空間が求められ、「閉じたハコ=美術館」というイメージの解体にチャレンジした。乳白色のエナメルガラスのペらペらなパネルで建築全体が覆われ、ばらばらと離散的に配置されたパネルの隙間から、心地よい地中海の風が建物に吹き込んでくる。

 マルセイユの路地を立体化して、アパート、アトリエ、空中庭園などの複合機能をこの路地に貼りつけた。コルビュジェのマルセイユのユニテ・ダビタシオンの立体路地を参照しながらも、路地をぐるぐると螺旋状に上昇させることで、街の路地と建築の中の路地をシームレスにつないだ

エクサンプロバンス音楽院

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 南仏、エクサンプロノコンセルヴァトワール(音楽院)とコンサートホールとの複合都市のエッジ特有の多様な隣地環境に対して敏感に反応するファサード全体をアルミという同一素材で覆いな各立面ごとに、異なる折り方(folding)、光の取り入れ方、ヴューの取り方を調整した。

 デコボコをあたえるに際しては、アルミ枚の薄さ(4mm)、すなわちアルミのペらペらさを見せることを重要視した。アルミはそもそも工業的な硬質な素材であるが、それをペらペらとした、皮膚のように繊細な物質として取り扱うことで人の身体とアルミと間に、従来にはなかったような親密な関係をつくり出した。

 ペらペらと したアルミでつくられた光と陰のヒダは、エクサンプロバンスの生んだ印象派の巨人、、ポール・セザンヌの描いたサント=ヴィクトワール山の岩肌の、光と陰のヒダにも似ている。

 エクサンプロバンスの硬質で乾いた光が、サント=ヴィクトワールの石灰質の岩肌をべらべらとしたプリーツへと変換したように、ここではアルミという物質が、都市て用いられる時とは別の音色を発している。その音色は、同じくエクサンプロバンス出身の音楽家で、このホールの名前の由来もなっているダリウス・ミヨーの、乾いて、しかも多彩な音色とも似ている

800年後の方丈庵

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 「小さな建築=方丈」のすばらしさを提唱した『方丈記』の作者、鴨長明(1155−1216)の住まい(方丈庵)を、方丈庵の敷地であった下鴨神社の中に、現代的な方法で再構築した。「方丈庵」とはその名の通り、方丈(約3×3m)の小さく貧しい小屋で、日本の狭小住居の原型ともいわれる。自然を身近に感じるヒューマンスケールの日本住空間の原点でもある。

 鴨長明は乱世の時代のモバイルな住宅として、方丈庵をつくり、彼は実際に方丈庵を移築したとも伝えられている。われわれはロールにして1人でも運搬可能なETFE製シートを材料とすることで、1人で運べる現代の方丈庵に挑戦した。

 21枚のETFE製のペらペらなシートに、20×30mmの極小の断面寸法をもつスギの棒状の部材が接着され、その棒状の木材同士を強力磁石を用いて接合することで、膜にテンションを負担させ、棒にコンプレッションを負担させる、テンセグリティ構造の小屋を実現した。

シャンシヤー・上海

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 上海のフランス租界に1909に建てられ赤レンガの建築の中に、雲のような布てやさしい光に満ちた室内空間をっくった三軸織りと呼ばれる特殊な方法で製作したポリエステルの布を金属の型にはさみこんで立体成型することによって、ヴォリューム感があり、しかもペらペらと軽い布ができあがった。

 中国ではこのようなデコボコした形状の壁のことを、しばしば太湖の水中に眠る巨岩、太湖石にたとえる。われわれがつくったのは、現代のテクノロジーが可能にした、軽くて薄い太湖石である。

■ふわふわ

 布状のもの、膜状のものを扱う時、ぺらぺらでいく時と、ふわふわでいく時がありま丸エッジが切りっぱなして頼りなく、はためているような感じがべらべらで丸逆にふわふわは、布に空気の圧力がかっていて、押すと、やさしく押し壊してくれるような状態です。これもまた、生き物にとってはたまらなく気持ちがいいものです。

 生物が生物を抱きしめた時の、押し返される状態を思い出させてくれます。生物の皮膚も一種の布です。そこに液体や気体がつまっているので、抱くと、やさしく押し返されるわけです。内部に液体や気体を閉じ込めていなくても、テンションをかけることで、すなわち布を両側から引っ張ってやることで皮膚がピーンとなって、生物の皮膚のような心地よい弾性を獲得することもできます。

▶ティー・ハウス / Tee Haus

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 ドイツのフランクフルト応用芸術博物館の中につくられたテンポラリーな茶室。ニ垂膜の間にコンプレッサーを用いて空気を充填することによって、フワフワとした軽やかな空間が、庭園の中に出現する.膜材には、充填を繰り返しても劣化しない柔軟性が求められ、グラスファイバーを基材として用いないテナラと呼ばれる、やわらかで光を透過する膜材が選ばれた。

 二重の膜同士は、60cmピッチで配置された、ポリエステル製の紐によって緊結され、そのジョイントは膜の上にドットとしてあらわれる。このやわらかな建築に対し、さらにふわふわとした印象を与えている。

メム・メドゥズ

 北海遺・帯広市の南に位置する大樹町の約56,000坪の牧場を、サステイナブル建築の研究・教育・研修施設として再生させる計画。これは草原の中に毎年1棟ずつ建てられる実験住宅の第1号であった。

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 この二重膜の間に暖かい空気を対流させることによって、やわらかさとふわふわさを維持したままで、噴かな室内環境を獲得した。二重膜は光を透過するため、 室内にいてもやわらかな北国の光とともに生活することができる。

■参照

 住宅・建材産業に関する調査・研究及び、人材育成等の事業に対し助成・支援する公益財団法人トステム建材産業振興財団(所在地:東京都江東区、代表:理事長 潮田洋一郎、以下:トステム財団)は、次世代住宅の研究を共同で進める「環境技術研究機構」を設立し、その中心的な研究施設「メム メドウズ(Memu Medows)」(所在地:北海道広尾郡大樹町(たいきちょう)字芽(め)武(む)158-1)を開設しました。

 研究施設「メム メドウズ」は、大樹町にある約56,000坪の牧場跡地を活用した施設です。その土地の気候を生かし、寒冷地における研究なども行えるほか、研究者が長期間の実証実験などを行うことも想定し、宿泊施設やレクリエーション施設も備えた研究施設です。

 さらに、同機構の趣旨に共感いただけたことから、同施設全体の設計・改修は、日本を代表する建築家 隈研吾 氏により行われていますまた、同氏の“土地の持つ記憶をそのまま風情として残しながら改修し、資源も有効に活用する”というコンセプトの元、リニューアルを行い“土地の記憶”を残した施設になっています。築30年近い厩舎や、住宅、競走馬の運動施設などに断熱、耐震対策を施すとともに、内装を一新しています。
 研究施設「メム メドウズ」内のシンボル的な施設であり、第一号の“寒冷地実験住宅”「メーム(Même)」は、北海道古来の住宅をモチーフに、光を透過する白い膜材を二重構造(ダブルスキン構造)で壁と床を仕上げた隈研吾氏 設計、東京大学生産技術研究所 野城研究室 技術支援によるユニークな実験住宅です。ダブルスキン構造による高い断熱性や、地熱を利用した蓄熱式床暖房など、両者の先進のアイデアを取り入れ、デザイン性にも優れた「メーム」は、温熱環境の変化や、地震発生時のデータ計測など、長期的なデータ収集が可能な実験住宅でもあります。<以上、HPより要旨抜粋>

コクーン /  Cocoon

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 厚さ1mmのバルカナイズドペーパーを曲げ、捻(ひね)ることによって、5mのスパンを持つ、ヴオールト状の軽やかな構造体をつくり上げた。コットンパルプでつくられた原料となる紙を、塩化亜鉛溶液を用いて積層し、その後、塩化亜鉛溶液を除去することによって、パルカナイズドベーパーという、薄く、しかも強靭な素材がつくられる。

 その強くぺらぺらな素材に、プラスチックのクリップを用いて曲げと捻りを与えることで、強靭な「紙の洞窟」をつくり上げた。薄くペらペらな素材が、ストレスを与えられることによって変質していくプロセスは、繊細な繊維が、強度のある繭へと転換されるプロセスにも似ていた。