2011 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う巨大津波は,東北および関東の太平洋沿岸域に死者・行方不明者が約2 万人に及ぶ甚大な被害をもたらした.また,この地震に伴う液状化や地盤沈下により東北および関東の広い地域でインフラなどへ大きな影響を与えた.さらに,高さ10 m を超える津波により,福島第一原発では重大な原子力事故が生じた.防災科学技術研究所では,今回の大震災から今後の沿岸災害の軽減のための知見を得るために,茨城県,福島県ならびに岩手県の沿岸域で被害状況の視察をした。
地震の規模はM9.0 で,これは日本で記録された最大の規模の地震である.東北地方太平洋沖地震とそれに引き続いて発生した津波による沿岸災害の調査報告である.今回の東北地方太平洋沖地震による津波で岩手県沿岸のほとんどすべての場所は壊滅的な被害を受けたが,その中でも陸前高田市は著しく被害が大きかった.今回の津波被害の様子を見ると,湾口防波堤が設置されていた釜石市や大船渡市などと比べると,湾口防波堤は津波による破壊力を減衰させ,被害を小さくする一定の効果はあったと考えられる.また,茨城県の沿岸域では,液状化と津波の両方の影響を受けた地域も見られた.