電力自由化

電力自由化で核燃事業苦境 競争、事業者に資金不安

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 経済産業省は、「核燃料サイクル事業」を支える仕組みを見直す検討を始めた。原発の使用済み核燃料を再利用するサイクル事業は、原発を持つ電力各社がお金を出しあって支えてきた。だが、電力小売りの自由化が進んで事業者間の競争が激しくなると、お金を出す余力がなくなるおそれがあるからだ。

■見直し検討

denki gaiyouzu

 経産省は16日の原子力小委員会で核燃料サイクルを取り上げる。事業の中核となる日本原燃が株式会社のままでいいのかどうかや、事業への国の関与を強めることの是非などについて話し合う見込みだ。

 核燃料サイクルは、原発からでる使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す「再処理」をし、再び燃料として使う事業だ。電力各社が個別に進めるより効率的なため、原発を抱える電力各社が共同事業として取り組んできた。

 例えば、再処理工場などを運営する日本原燃には、原発を持つ電力9社と日本原電などが出資。事業にかかるお金は政府や電力業界の試算で、18・8兆円と見込まれ、そのうち再処理事業は11兆円にのぼる。その費用も、電力各社がためてきた積立金でまかない、年3千億円弱が日本原燃に投入されている。日本原燃が再処理工場の建設などに使った約9千億円の借金も債務保証している。

 各社がこれだけの支援ができるのは、「地域独占」で守られ、かかった経費をすべて電気料金に上乗せできる「総括原価方式」という仕組みのおかげだった。しかし、2016年の電力小売りの全面自由化で地域独占はなくなり、競争が進めば、総括原価方式もなくなることになる。

 このため、電気事業連合会の八木誠会長は核燃料サイクルについて、「(全面自由化後も)民間事業者がやっていくには、(事業が続けられるという)予見可能性の確保が必要だ」として、政府(自民党政権)・国の関与の強化を訴え始めている。

■必要性疑問

 核燃料サイクル事業は失敗続きで、必要性そのものを疑問視する指摘も多い。

 1989年に発表された当初の計画では、再処理工場は97年には完成し、建設費も約7600億円のはずだった。ところが、想定以上に安全対策が必要になったり、再処理の試験運転でトラブルが相次いだりした結果、完成時期は21回も延期され、まだ完成していない。建設費も約2・2兆円と、当初の約3倍に膨れあがっているのが実情だ。燃やした以上のプルトニウムを生み出すという「増殖炉」の研究も、中核となる高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)が95年のナトリウム漏れ事故などで動かせず、ほとんど進んでいない。技術的な難しさから、欧米でも英国やドイツが開発をあきらめた。

 いまの核燃料サイクル事業は原発が50基動き、年1千トンの使用済み核燃料が出ることを想定している。しかし、東京電力福島第一原発の事故を受け、政府は原発比率を「可能な限り低減させる」方針を決めた。このため、使用済み核燃料の量は想定を大幅に下回る見込みで、直接処分をした方がはるかに安上がりだという声が強まる可能性もある。(大津智義、福間大介)