■微細プラスチック、魚から 吸着の汚染、
■体内蓄積 海洋生態系に脅威
<調査のため捕獲されたカタクチイワシ。7割を超す個体から微細なプラスチックが見つかった=いずれも東京農工大提供>
大きさが5ミリ以下の「マイクロプラスチック」による海の汚染が懸念されている。5月に富山市で開かれた主要7カ国(G7)環境相会合でも「海洋生態系にとっての脅威」との認識で各国が一致した。魚など生物の体内への取り込みが報告されており、早急な対策が求められる。
米ジョージア大などの推計では、プラスチログイン前の続きックごみの海への流出量は世界で年間480万~1270万トン。太陽の熱や紫外線、波の力などで細かく砕ける。こうした「マイクロプラスチック」は長期間にわたって海の中を漂う。
東京農工大の研究チームは昨年8月、東京湾で食用魚のカタクチイワシを捕獲し、消化管の中身を調べた。64匹のうち49匹から、計150個のマイクロプラスチックが見つかった。大半はポリエチレンやポリプロピレンの破片で、大きさは0・1~1ミリのものが多かった。エサのプランクトンと一緒に体内に取り込まれたとみられる。
東京海洋大の内田圭一助教(海洋環境学)は「海の表層でプランクトンをこし取って食べる他の魚種でも、同様の現象が起きている可能性がある」と指摘する。
海外では、ハダカイワシ類などのほか、カキやヨーロッパイガイからもマイクロプラスチックが見つかり、海洋生態系への影響が懸念されている。東京農工大の高田秀重教授(環境化学)は「私たちに身近な東京湾でも魚に取り込まれていることが分かり、ショックを受けた」と話す。
マイクロプラスチックは小さくて回収が困難なうえ、有機塩素系の農薬やポリ塩化ビフェニール(PCB)など、海水に含まれる汚染物質を吸着する。海鳥や魚がエサと一緒にマイクロプラスチックを体内に取り込むと、吸着していた汚染物質が体内に移行・蓄積することが、国内外の研究で確認されている。
東京農工大の研究チームは、今回調査したカタクチイワシについて、もし人が食べてもプラスチックは体外に排泄(はいせつ)されるため、現時点では健康への悪影響はないとみている。ただ、海のプラスチックごみが今後さらに増えれば、汚染物質が人体に移行・蓄積する機会が増える恐れがあると指摘している。
■粒状プラ、業界が規制の動き
マイクロプラスチックには、もともと小さなサイズで製造された粒状のものも含まれる。その一つが「マイクロビーズ」だ。スクラブ洗顔料などに使われることがあり、海の汚染が指摘されている。
東京湾のカタクチイワシからは、直径0・1~0・5ミリ前後のものが11個回収された。九州大の磯辺篤彦教授(海洋物理学)らの昨年の調査では、伊勢湾や瀬戸内海などの海水からも見つかった。
米国では昨年、マイクロビーズを含む製品の流通を段階的に規制する法案が成立。欧州では化粧品の業界団体が自主的な使用中止に動き出した。国内でも今年3月、日本化粧品工業連合会(東京都港区)が、約1100社の会員企業に対し、使用中止に向けた対応を呼びかけた。
ただ、カタクチイワシから見つかったプラスチックのうちマイクロビーズの数は1割弱。約9割はプラスチック製品の破片だ。東京農工大の高田教授は「マイクロビーズの規制だけでは問題は解決しない。海に流れ込むプラスチックを全体的に減らす取り組みが必要だ」と話す。(山本智之)