遺伝子組換え植物の実用化

■本格的な商業栽培は米国で1996年に始まりました

 2014年の世界における遺伝子組換え農作物の栽培面債は、1996年の100倍以上に増加し、世界の耕地面積の10%以上までに広がっています。

世界に広がる遺伝子組換え農作物

 遺伝子組換え技術を使って品種改良された農作物の本格的な商業栽培は1996年に米国で始まりました。続いて、カナダやアルゼンチンそしてブラジルなどの主として南北アメリカ諸国を中心に広がり、2014年には世界約30ヶ国、約180万K㎡の耕地で栽培されました。この栽培面積は、日本の国土面積のおよそ5倍、世界の耕地面積の約13%に相当します。今のところ、広範囲に栽培されている植物ほ大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワ夕4種類に限られています。これら4種類の植物では、組換え技術を使った品種の割合が高く、大豆とワ夕は80%以上、トウモロコシやナタネも30%以上が遺伝子組換え品種となっています。大豆とナタネは主に植物油へ加工され、トウモロコシの多くは、家畜飼料をはじめ、デンプンその他の食品原料や最近では燃料としてのバイオエタノール生産の原料にも使われます。ワ夕は主に繊維を取るために栽培されますが、綿の実から作る綿実油は食品としても利用されます。これらの植物のほとんどが除草剤耐性、害虫抵抗性あるいはその両方の性質を持った品種です。

 このように遺伝子組換え植物は世界中で広く栽培されていますが、そのまま口に入れて食べる植物は多くありません。ただし、ハワイでは1998年からウイルス抵抗性の遺伝子組換えパパイヤの商業栽培が始まり、2014年には80%程度が遺伝子阻換え品種となっています。南北アメリカに限らず中国やインドでも遺伝子阻換えワ夕は広範囲に栽培されていますが、食用目的の植物の栽培には慎重になっているようです。ヨーロッパやアフリカでは国によって違いますが、スペインや南アフリカでは、阻換えトウモロコシの栽培を行っています。

▶トウモロコシについて

 トウモロコシは世界で年間7億トン程度生産され、その4割程度を米国が生産していまも多くの日本人はトウモロコシと言うと、そのまま食べるスイートコーン(スイート種)を思い浮かべるかもしれません。しかし、世界で栽培されている多くのトウモロコシは粒の固いデント種で、スイートコーンのようにそのまま食べるのには向きません(世界のスイートコーンの生産は1千万トンに届きません)。デント種は家畜飼料に多く使われますが、デンプン(コーンスターチ)、アルコール、甘味料(コーンシロップ、異性化糖)、スナック菓子など様々な食品用途にも加エされます。

 売られているトウモロコシの種子の多くはFl雑種(ハイブリッド)ですもFl雑種は両親のどちらよりも優れた性質(雑種強勢)を示し、収量も増加します。しかし、次の世代は性質がばらばらになり優れた性質は失われるので、生産者は多くの場合、毎年種子会社から種子を買います。

フレーバー・セーバー(最初に商業化された遺伝子組換え植物)

 1994年、米国カリフオルニア州にあったカルジーンというベンチャー企業が開発したフレーバー・セーバー(FLAVR SAVR)と名付けられたトマトが、世界で最初の遺伝子組換え農作物として店頭に並びました。トマトは熟すると果皮が柔らかくなり、傷みやすくなります。このトマトは果皮のペクチン成分を分解する酵素タンパク質の遺伝子の働きを抑えることで、軟化を防止日持ちを良くすることをねらって作られました。しかし、カルジーン社のトマトの生産や流通に関するノウハウが乏しかったことなどからビジネスとしては成功せずこ生産されなくなりました。