楽器の間・新御殿

14南西面全景 長6畳と袋棚 中書院前庭 折曲り入側縁 新御殿東南面ディテール 御寝の間の御剣棚 楽器の間内部・桐小紋襖 楽器の間・南東面全景 楽器の間・広縁 86 85 84 83 82 81 80 79 78

 新御殿と楽器の間の造営で,御殿はいま見るごとき体裁を整えたわけだが,これも今回の解体調査で寛文3年(1663)の後水尾上皇御幸を控えての建設と特定できたようである.楽器の間というのは同名の3畳の室を擁する,いわば中書院と新御殿の繋ぎの部分の総称だが,この一画の付加は巧妙な解決で,中書院と新御殿との床レベルの差を緩和し,さらにプライベイトな空間ともいえる新御殿部分を中書院までと切り離す役割を果たしている.

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  また庭から望めば,この部分の付加で平面の雁行がさらに強調され,この小さな単位が吹放たれていることで,外観に軽やかさが生れている.それに中書院と新御殿のふたつの大屋根が切り離されたことも,外観を軽快に見せるのに役立っていよう.このあたりの庭はもちろん建物と同時に計画されたもので,古書院前とは対照的にのびやかな広がりを見せており,いまは芝生だが,かつては鞠場や弓場などがあったという.

 新御殿の特徴は,その建造の時代を反映して古書院,中書院よりもずっと意匠が数寄の味わいを濃くしていることである.室内はまた雲母(きら)刷の桐紋の唐紙で統一してあるが,こちらは五三の桐でその文様もずっと小ぶりであり,そのぶん派手めに映る.とくにこの部分では,裏回りの諸室に黄土地に雲母刷の唐紙も用いられている.

701の間上段と桂棚 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75

 造作もまた多彩で,二の間の床の木瓜形の吹抜窓,一の間との境の月の字崩しの欄間,人側縁の勾欄,一の間上段の櫛形窓と,どこを見ても意匠的な色彩が強い造形である.とりわけそれが凝集するのは一の間西の上段で,この3畳に書院と有名な桂棚とを矩にめぐらした空間は,意匠としての美を目指しながら十分実用的で,建築化された家具装置の粋というべきであろう.同様な洗練された造付け家具は新御殿には各種見られ,一の間西の御寝の間にはもじぎぬの透し障子の入った三角形の御剣棚があり,その隣の御化粧の間には裏桂棚,御衣紋の間や長六畳の戸棚,御納戸の棚と,それぞれに趣好面白くできている.また市女笠の把手や折松葉,月の字の引手,水仙の釘隠しと,粋な金物が見えるのも,この部分なのである.新御j穀南西面.右手に中書院の狐格子の隅を楽器の間の桶葺き屋根が横切って見える.7777-1 76