梅の馬場の中途で左に折れると道は笑意軒に向かい,やがてその木戸に達する.以前は路地門の思い入れで御腰掛もあったといぅが,いまは失われている.桂離宮の3つの茶屋のうち,おそらくこれがもっとも新しくひらかれたものであろうか・この建物はとりわけ建物の建造とときを同じくしてひらかれたと思われる堀割越しに眺める姿が好ましく,むしろ近寄っての空間そのものよりも,外観の印象のほうが強いくらいである・細く端整な切石の列が水辺を直線的に限り,緑の斜面の上に田舎家風のシルエットが浮ぶその遠望が,庭園の隅部の押えとして格好の景を演出しているのである.

