その他の素材で包む

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■素材の組み合わせは、全体の感じを決める大切な条件である。安直な姿勢では心をうつような優れたものは出来ない。

 素材別の分類に「雑」というのは変なものだが、つまらどこに入れてよいか判定しにくいものまで含めて、その他もろもろという意味である。

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 よしずでくるんだ菓子(図上左)。のぼりあゆ〔図上右〕のいかにも夏らしくさわやかな容れものも同じよしずである。草の強じんな繊維を利用したものも伝統パッケージにはかなりあって、畳を作る藺草(いぐさ)を使ったのが福男(図下左)である。

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 はたおりむすめ〔図上右〕は、本物の久留米絣を使ったもので、布のパッケージにおいては他にあまら例がない。いか徳利(下図左)や真盛豆(しんせいまめ)(下図右)ように、パッケージそのものまで食べてしまおうという面白いのもある。

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 伝統パッケージにおいては金属製のものもあまら見られない。海苔やお茶の缶はそうだが特に取り上げたいほど優れて魅力のあるものが少ないようだ。まったく姿を現わさない素材は皮革である。すっかりまとめ終わってからよく考えてみねら、皮革を使ったものは一つもない。ヨーロッパには皮革製のパッケージが珍しくない。たとえば酒は皮袋に入れられたし、今でも極上のスコッチで贈らもの用の品には草の容器に入ったものがある。

 同じ酒を入れるのにも、日本だと古くは竹筒であったし、今では陶器である。もともとわが国には肉食の習慣がなく、特に四つ足の動物を処理することに対して、これを忌み嫌う特有の風習があったから皮革の利用が伝統パッケージの世界にないのは当然といえば当然の結果であろう。欧米人が動物的民族であるとすれば、日本人はまさに植物的民族だという一つのしるしであるかもしれない。

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 素材的には紙の分類に入れられるべきかもしれないが、内容上、明らかに他と異なっているところから書物のパッケージ〔上図〕をここに入れた。包むということを日本人がどのように受けとめているか、それを見るのに書物の包みかたは、きわめてよい手引きとなるガろう。帙(ちつ・書物の損傷を防ぐために包む覆い)という書物のねめのパッケージは日本独特のものではあるまいか。

 素材の組み合わせは、全体の感じを決める大切な条件である。せっかく優れたアイデアで、いい材料を使いながら、それを最後に結んでいるひもがビニールだったりして、がっかりさせられる例も少なくなかった。ビニールやプラスチック類がよくないというのではなくて、全体の調和をもっと考える必要があるということだ。和紙にかけられたビニールひもは、やはりぶちこわしだし、木の樽にビニール製のたがをはめたらするのを見ると残念に思わざるを得ない。結局、安直な姿勢では心をうつような優れたものは出来ない。それははっきりいえるだろう。

■雑のものの伝統パッケージ類

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