庭園の構成美

■3つの枯山水と中根金作の池泉庭園

▶︎退蔵院の由来

 臨済宗大本山妙心寺塔頭寺院である退蔵院は、室町初期(1404年)に創建された妙心寺屈指の古刹。境内には元信の庭陰陽の庭余香苑、そして通常非公開の方丈庭園と4つの庭園をもつ妙心寺最大の庭園寺院である。

▶︎元信の庭

 室町時代の画聖・狩野元信の作品で、絵画的な優美豊艶の趣を失わず、独特の風格を備えている枯山水庭園です。庭の背景には、椿、松、槇(まき)、もっこく、かなめもち 等、常緑樹を主に植え、一年中変わらない美しさ「不変の美」を求めた物と考えられます。臨済宗大本山妙心寺は、10万坪に46の寺院を構える広大な敷地であり迷路のような空間だ。そのなかで庭園で有名な寺院といえば退蔵院であり、たびたび書籍でも紹介される。

 狩野元信が画家としてもっと も円熟した70歳近くの頃の築庭と推測されています。自分の描いた絵をもう一度立体的に表現しなおしたもので、彼の最後の作品が造園であったことで珍しい 作品の一つと数えられています。昭和6年(1931年)には、国の名勝史跡庭園に指定されました。

▶︎陰陽の庭

 入り口すぐにある枯山水「陰陽の庭」は使う敷砂の色を変え、物事や人の心の二面性を伝えています。天気の良い日に訪れた陽の敷砂は白っぽいので明るく反射し、陰の敷砂は黒っぽいのと、樹木の陰が落ちてこそ陰陽の対比がすごくわかりやすい。

 それぞれの庭の前で、自分の陰の心、陽の心を合わせだして見つめて見る。とかく、ネガティブなことやマイナス思考が良くないとされがちですが、陰と陽2つの面があるから性質は成り立つのですし、ネガティブなものを無理に排除しなくてもよいと思われる。

▶︎余香苑

 この広大な庭園は造園家・中根金作氏の設計によるもので、昭和38(1963)年に着工し、3年の月日を費やして完成しました。余香苑(よこうえん)は伝統的な造園手法を基盤とした厳しさの中にも優雅さを含み、京都はもとより全国でも有数の昭和の名園と言えます。構造上目立たぬ苦心が随所に払われており、正面から庭園を見渡すと、奥行きが生まれ、庭園が広く見えることなどが例としてあげられます。一年を通して、紅しだれ桜や藤、サツキ、蓮、金木犀、楓などが彩ります。