竹で包む

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■竹は私たち日本人にとって大層好ましい、さわやかな素材であるようだ。

 竹を割ったような…ということばがある。包みかくすことのない、さっぱりした性格の表現として妙である。竹は私たち日本人にとって大層好ましい、さわやかな素材であるようガ。何よりもあのまっすぐな感じ、それが魅力である。年が若くて美しいことのたとえに竹に油を塗ったようというのもある。

 竹は、ちょっとむつかしくいうとイネ科の多年生常緑木本で、おもにアジアに産する。九州から北海道まで日本中ほとんどどこにでも生えていて、身近な材料として竹の歴史は太古にまでさかのぼることが出来るらしい。水など(酒またしかりだが) の容器として竹は最も古いものである。その節を利用して筒を切るだけでよいのだから、これは天然のパッケージともいえるだろう。

 わが国にはおよそ十二属百五十種もの竹があって材料の豊富さという点で、竹は木に勝るとも劣らぬ存在である。広辞苑によると竹には「割裂性、弾力負担力、抗挫力、抗圧力をどがあり、これを利用して建築、器具製作、竿などに重用する」とある。

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 竹のさまざまな性質は、辞書などを見なくても伝統パッケージが教えてくれるところである。竹ひごに削って可愛らしいさらしあめをその先端につけたささらあめ(上図左)、やげん堀(上図右) に代表される筒としての活用法、一本の竹を真二つに割って、そのまま身と蓋とに使った鯉寿し(図下)など、比較的単純な竹の利用のほかに竹かごや、竹ざるなど、その使い方のバリエーションはとても全部は並べきれない。

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 竹かご、竹ざるは日本人が伝統的に得意とする手わざの典型である。竹の艶々した表皮を使ったものは上等のかごである。竹の肉を薄くそいでこれで編み上げねものはもっと普通の安いかごである。しなやかで自由に曲げられる素材だけに、竹かごに見る日本人の造型力は感嘆に値しょう。山の珍味という小さな舟形の変形ぎるなどは、どんな現代パッケージも及ばないシンプルな造型美を感じさせる。

 竹と同じくらい竹の皮もよく利用される。これはいってみれば天然の包装紙である。丈夫で破れにくいばかりでなく、汚れがつきにくく、簡単に洗ったり拭いたり出来る。今はすべて合成紙や塩化ビニールになってしまったが、かつては肉を包んで手渡すのは竹の皮と決まったものだった。新しい化学的素材の利用は結構なことだが、安直に竹の皮を真似た一見竹皮ふうの包みは、多くの人々に味気ない思いをさせているのではないか。

 昔は、この竹の皮で笠や草履などを作ったものである。笠のイメージは濱焼桜鯛(下図)のパッケージに今でも生き残っている。

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■竹を使った包みの伝統パッケージ類

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